近年、商品を受け取った瞬間をSNSやYouTubeでシェアする「アンボクシング(開封体験)」が注目を集めています。開封のプロセスを見せることで、商品そのものだけでなくブランドイメージを強く訴求できるからです。デジタル上での購買がますます増えるなか、消費者と直接対面しなくても、箱を開ける行為を通して「ブランドの世界観」に引き込むことが可能となりました。
では、いったいどんな仕掛けを用意すれば「開封体験」が楽しく、記憶に残るものになるのでしょうか。ポイントは、パッケージに“物語”を埋め込むこと。この記事では、開封体験を通じてファンを作るために、パッケージにストーリーを持たせる具体的な方法を詳しく解説します。
ストーリーを与えることの意義
まず大前提として、なぜパッケージにストーリー性が求められているのでしょうか。その理由の一つは、ストーリーのある体験は「心に残りやすい」からです。単なる箱と中身という構図ではなく、「なぜこういうデザインなのか」「どういう想いでこの商品を届けているのか」という背景が加わることで、利用者は自然とブランドに対して愛着や好感を抱くようになります。
さらに、SNS時代の今、消費者は自分の得た感動や驚きを積極的に共有します。そこで魅力的な“物語”が潜んでいれば、投稿者のフォロワーや視聴者が「面白い!」「素敵!」と共感し、ブランドの認知度や信頼度が広がりやすくなるのです。
実践的なストーリー演出
1. 「はじまり」を象徴するメッセージ
外箱を開けた瞬間、フタの内側や封を止めるシールの裏側など、意外な場所に短いメッセージを忍ばせてみてください。「ここから新しい体験が始まります」とか「あなたの毎日を特別にするために作りました」など、ほんの数行でも構いません。想いが伝わる文章があると、それだけで「大切に扱われているんだな」と感じられ、アンボクシングに対する期待値が高まります。
2. 段階的な演出を仕込む
一度にすべてが見えてしまうと意外性が薄れてしまいます。たとえば「外箱→薄紙→内箱→商品」のように幾層にも重ねる方法はよく知られていますが、その過程をストーリーとして楽しませるのがポイントです。箱や薄紙をめくるごとに異なるキーワードやイラスト、メッセージを配置すると、ページをめくる感覚で“物語”を追体験できます。
3. パーソナライズの要素
自分だけが受け取れる特別感があると、人は一層感動します。たとえば宛名ラベルや同梱のカードに購入者の名前を書くだけでも、親近感がぐっと増すでしょう。大量生産・大量消費の時代だからこそ、一人ひとりに向き合う姿勢を見せることで、一度の購入をきっかけにリピーターやファンになってもらう可能性が高まります。
五感を刺激する開封体験
視覚だけでなく、聴覚・触覚・嗅覚をくすぐることで、より印象的なストーリーを演出できます。箱を開封するときにふわっと香りが立ち上がるよう工夫したり、素材の手触りにこだわったり、さらには小さなサプライズサウンドを組み込む企業も登場しています。
五感のうち複数を同時に刺激されると、人は強い感情を抱きやすくなります。開封後も「またあの香りや感覚を味わいたい」と思わせることで、商品リピートやクチコミにつながりやすくなるのです。
エシカルでサステナブルな演出
パッケージにストーリーを込めたいとき、つい豪華な素材や大量の詰め物を使いたくなるかもしれません。しかし近年は環境意識の高まりもあって、エコロジーの視点が欠かせません。
たとえばリサイクル素材を用いたり、箱を捨てずに再利用できる仕掛けを作ったりすることで、ブランドの社会的責任を示すとともに、「長く使いたい」と思えるストーリーを添えられます。開封後も部屋のインテリアとして活用できるデザインや、封を切った後もフォトフレームとして残せる仕掛けなど、環境に優しく、かつ消費者の暮らしを彩るアイデアを取り入れてみてください。
他社事例との比較で見えてくる学び
成功しているブランドのアンボクシング映像を見ると、共通して「商品の魅力を最大限に引き立てる演出」がなされていることに気づきます。たとえばアップルはシンプル・高品質を重んじるブランドイメージをパッケージ全体からも感じられますし、一部のコスメブランドは「開封のたびに香りや色味がワンポイント違う」などの遊び心で楽しませています。
一方で、ブランドイメージとミスマッチな演出は逆効果になることも。高級感を重視するブランドがポップすぎるデザインを用いたり、逆にカジュアルブランドが重厚すぎる包装を施したりすると、ユーザーは「なんだか違うな」と違和感を抱くかもしれません。自社の方向性や世界観をしっかりと踏まえたうえでストーリーを構築することが重要です。
今から始められる具体策
- ブランドコンセプトを再確認する
自社の商品・ブランドは何を大切にしているのか、どんな人にどんな価値を届けたいのかを改めて整理しましょう。 - ストーリーボードを描く
商品が届き、箱を開け始める瞬間から商品を手に取るまでの一連の流れをあえて“物語”として描いてみると、どの段階で何を見せたいかが明確になります。 - 簡易プロトタイプを作って体験してみる
紙や箱を用意し、実際にラフなモデルを作って開けてみましょう。自分や周囲の人の反応を確認すると、思わぬ改善点が見つかります。 - フィードバックを積極的に収集
初期段階で消費者やモニターの意見を集めるのはもちろん、リリース後もSNSなどで感想を探り、継続的にパッケージをブラッシュアップしましょう。
まとめ – 商品を越えた“特別な思い出”を作る
アンボクシング(開封体験)でファンを作るためには、単純に目立つデザインをするだけでは不十分です。大切なのは「ブランドのストーリー」「価値観」「想い」を、開封プロセス全体に散りばめること。消費者が商品を受け取って箱を開けた瞬間から「あ、こういう世界観なんだ」「自分が大切にされている感じがする」と思えれば、その体験自体が“商品を越えた特別な思い出”になります。
こうした特別な体験がSNSや口コミによって拡散されると、商品そのものに対する興味だけでなく、ブランドそのものへの好感や信頼を高める効果が期待できます。パッケージデザインは一見すると「付属」や「梱包用」として軽視されがちですが、実はブランドファンを育てる最初の接点。細部にこだわり、ストーリーを紡ぐことこそが、これからの時代に必要な戦略といえるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございます。共感する点・面白いと感じる点等がありましたら、【いいね!】【シェア】いただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介は大歓迎です!(掲載情報や画像等のコンテンツは、当サイトまたは画像制作者等の第三者が権利を所有しています。転載はご遠慮ください。)
サイトへのお問い合わせ・依頼 / パッケージデザインについて