デザイン思考(デザインシンキング)という言葉は、デザインやそれに関わる業務を行なっている人であれば一度は耳にしたことがあると思います。しかし、なんとなく分かっているようではあるけれど、具体的に細かいことまでは…という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、AJ&Smartの動画「デザイン思考(デザインシンキング)とは?」を翻訳して紹介したいと思います。※翻訳・記事掲載は許諾を得ています。(Thank you, AJ&Smart !!)
以下翻訳内容です。
今回はデザイン思考(デザインシンキング)の概要について、それからなぜそれが2020年の今も重要なのかを説明したいと思う。
世界中のほとんどの革新的な企業が、何らかの形でデザイン思考を取り入れている。
だからあなたがデザイナーだろうと、プロダクトマネージャーだろうと、もしくはただ単にこの話題に興味がある一人だろうと、デザイン思考が一体何なのかを本当に理解することは超重要なことなんだ。
なぜなら、あなたがどこに行こうと、どこの会社で働こうと、もし商品を作ることになったら、もし革新的なテーマに関係する仕事をすることになったら、デザイン思考についての話題がそこら中で話されているのを聞くだろうからね。デザイン思考はそんなふうに現れるものなんだ。どこにでも存在する。そして、今までもずっとそこに存在していた、過去20年間ずっとね。それにまだまだ消えることはないだろう。
だから、今回はデザイン思考の簡単な概要を説明するよ。
よし、じゃあ最初の質問。
デザイン思考(デザインシンキング)とは?
本当に端的に言うと、“デザイン思考は哲学であり、問題をクリエイティブな方法で解決するために役立つツールのセット”なんだ。これをまず最初に理解する必要がある。
企業が何か新しいものを作ろうとするとき、企業が何か問題を解決しようとするとき、チームが何かとても難しい問題を解決しようとするとき、デザイン思考を取り入れて解決策を見つけることができる。問題解決のために取り入れられるプロセスはいくつもあるけど、デザイン思考はクリエイティブな問題解決方法の人間中心的な面に特化している。
デザイン思考は”クリエイティブな問題解決方法の全てを人間中心デザインのレンズを通して見てみる”ということなんだ。人間中心的なアプローチと言える。あなたは誰のためにデザインをするのか? クライアントのニーズは何か? 共感し、その答えを見つける。そうするとあなたが問題を解決するための糸口が見える、またはニーズに答えるための革新的なアイディアを生むことが出来るんだ。
ところが、デザイン思考が広まる前のその他の問題解決プロセスの多くは常にこんな風だったんだ、「そうだなぁ、僕たちの持ってる技術はこれだから、こういうものを作ろう」ってね。
一方でデザイン思考は、顧客目線で考えるんだ、人間的な考え方でね。
どんなデザイン思考のプロセスにも主となる5つのステップがある。ただ各ステップで行うエクササイズそのものや特別なプロセスの内容はものすごくフレキシブルなんだ。そして全ての企業・デザイナー、デザイン思考を取り入れている人たちはそれぞれ独自のやり方を持っている。でも、この5つのステップは常に同じなんだ。
デザイン思考のステップ1 – 共感する
最初のステップは、「共感」すること。
このステップでは、あなたが商品のデザインを提供する、または商品やサービスを提供する相手のことを理解することが基本となる。そしてこのステップでは、情報を集めることに多くの時間を費やすことになる。ユーザーにインタビューをしたり、ペルソナを設定したりして、今自分は誰のためにこれを作っているのか? そして彼らの抱えている問題は何か? を探り当てる。そしてそれらの人々が何をするか読み取るんだ。
あなたが、デザインや商品・サービスを提供する相手に共感するっていうことなんだ。
デザイン思考のステップ2 – 定義する
第2のステップは定義する、明確にする。
このステップでは、最初の共感するステップで学んだこと全てをまとめて明確にし、わかりやすく説明できるように噛み砕いて分類する。そして、ユーザーたちのニーズが何かという最終的な結論にたどり着く。彼らをインタビューする事で理解した全てのことを基にして、彼らのニーズは何か? 彼らの問題は何か? 彼らにとっての試練は何か? どのような種類のものか? どんなインサイト、潜在ニーズがあるのか? インタビューをすることやユーザーや顧客に共感することによって得た情報。そこから私たちは何を得るのか? 実際に何を情報として利用することができるのか?
「これが課題、これが一般的な問題、これが一般的な試練…」と判断し、私たちが述べることができる所見はこれだと判断すること。共感のセクションで学んだこと全てを踏まえて、それらをどのような見識を持って定義するか。それがこのステップの「定義する」ということなんだ。
デザイン思考のステップ3 – 観念化する
第3ステップは観念化する。
さて、次はこれまでの2つのステップで学んだこと全てを踏まえて、解決方法にたどり着き、アイディアを提案したり、ニーズにマッチする見込みのある商品やサービス、またはそれ以外にあなたが作りだす何かを提案するんだ。
デザイン思考プロセスの「共感」と「定義」のセクションで見つけ出したインサイトと解決方法をマッチさせるんだ。ここであなたがすることは、集まって、色々なアイディア出し合うこと。この作業はブレインストーミングのワークショップのような光景に見えることがよくある。
付箋がそこらじゅうに貼られていて、人が集まってアイディアを共有する。そして、一緒に一番良いアイディアを見出す。だから、このステップはこれまでのステップで学んだことにマッチするアイディアや考えを思いつくということが全てなんだ。
デザイン思考のステップ4 – プロトタイプ
思いついた全てのアイディアを踏まえて、それらを分類しよう。そして、「何かもう少し現実味のある形にしてみる価値があると思うもの」をいくつか選定する。そして、それらのアイディアをとてもシンプルでテスト可能なプロトタイプに作り変える。
プロトタイプはわかるよね。完全にはデザインされていない、完全にはコード化されていない、最終的な形にはまだなっていないものだ。でもそれは本質的なファサードであり、本質的な偽物であるんだ。それがデジタルな商品だとしても、物的な商品だとしても。実際のユーザーがテスト出来る何かを素早く作ってみるんだ。
デザイン思考のステップ5 – テスト
そして最後のステップはテスト。
このテストの段階では、第3ステップのアイディア基に第4ステップで作ったプロトタイプを使う。さあ、最終ステップでそのプロトタイプを現実にいる人々にテストしてみるんだ。
そして、その現実にいる人々とは…そう、わかるよね。共感の第1ステップで学んだことを基に選ばれた人たちだよ。その人たちに商品を使ってもらって、その感想をリアルタイムで集めていくんだ。そして、このサイクルに戻っていくんだ。テストから始まって、テストの結果を得たら、また定義の段階に戻る。
一度テストして終わりじゃないんだ。新しいインサイトがたくさん見つかるだろうからね。だからそのインサイトを収集して、また定義の段階に戻るんだよ。そして、その新しく学んだことを基にまた観念化のステップに進む。
そして新しいアイディア、さらにアップデートされたアイディアが生まれ、またプロトタイプに進む…そしてまたテストするんだ。
これが、核となるデザイン思考のサイクルなんだ。
そしてあなたがデザイン思考に関する何かについて調べた時に必ず目にするのがこの5つのステップなんだ。この一連のステップについて明確にしておきたいことがある。これらの5つのステップについて理解するべき重要なことがあるんだ。
この5つのステップは、デザイン思考のプロセスがどんなふうに作用するかの縮小地図のようなものなんだ。それぞれのステップの中で行なわれる細かいエクササイズや作業は定義されていないということ。だから、これが【デザイン思考】と【いわゆるデザインスプリントのようなもの】との大きな違いだと理解しておかないといけない。
デザイン思考は、来週、来月、来年に何をするのか?というようなざっくりとした見取り図のようなもの。でもその中に「このエクササイズをやらなければならない、このペルソナをやらなければいけない、これをやらなければならない」というようなルールはないんだ。一方でデザインスプリントのようなものは、やらなければいけないことのレシピなんだ。
少し話がそれたけど、みんなに分かって欲しかったんだ。だって、たくさんの人々がデザイン思考について誤解している部分があると感じているからね。デザイン思考はレシピじゃないんだ。これをしろ、あれをしろというものではない。最終的な「料理」をどんなものにしたいかによって、あなた自身が選んだ様々なエクササイズと組み合わさった考え方そのものや、哲学なんだ。わかるかな?
だからデザイン思考は本質的にとても自由自在なものなんだ。とてもフレキシブルだし、そのプロセスを進めていく人に内容のほとんどは託されている。ただそこが実際にとても難しい部分でもある。だから私たちは頻繁にデザイン哲学の勉強をすることを提案しているんだ。デザイン思考の哲学を学びつつ、デザイン思考のプロセスを行うためのレシピとしてデザインスプリントのようなものを活用する。
この説明が少しでもあなたがデザイン思考に対して持っていた神秘性を取り除いてくれたら嬉しいな。一番のポイントで、まず最初に理解して欲しかったのは、デザイン思考とは何かということの広い意味での哲学なんだ。
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参照リンク : What Is Design Thinking? An Overview (2020) – AJ&Smart (CC BY 3.0)
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