一見すると若者の起業が盛んに見えるアメリカでも、起業への姿勢が消極的になりつつあるそうです。実際には起業したいが、難しいと感じてしまっている。そこには日本の事情にも近いものが感じられます。今回は、vlogbrothersの動画「なぜビジネスを始めないのか?」を翻訳して紹介いたします。※以下翻訳内容です。
起業について – 若者へのアンケート
今回ツイッターで、起業することについてどう思ってるのか、フォロワーのみんなに投票してもらったんだ。
回答があった18歳以上の人のうちで、15%の人はすでに起業していて、55%の人は起業を考えたことがあった。それに対して起業に全く興味がなかったのはたった11%だった。
このことから現状若者の間で起業への積極的な姿勢があるように思うけど、一方で僕たちアメリカ人、特に若い世代の起業率は急激に落ち込んでいるんだ。
簡単に思いつくのは、この原因を若者自身の中に見いだすことだ。
単に興味がなかったり、あるいは普通の仕事で安定したいと思ったり、失敗が怖かったりするよね。
実際に「社会的不安や先行きの不透明さ」「失敗への恐怖」は僕の行ったアンケート調査でも大きな数値となって現れていた
「ノミの心臓」と言われるような怖がりの人には起業は向いていない。
起業をするということはリスクを取って未知の領域に飛び込んで行かないといけないということだからね。イヤなこともしないといけないし、人を雇用したり解雇したりもしないといけない。ビジネスオーナーになるとイヤなことがたくさんある。
いいことばかりじゃない。自分のビジネスを所有するってそういうことなんだよね。みんなそんなことわかってると思う。
でもこれは明らかに、人それぞれの事情があってそれぞれの選択をしているんだよね、というだけの話じゃないんだ。
教育費と医療費の高さ
学校が学生の獲得競争をした結果、アメリカの教育費はものすごく高くなってしまった。そしてそれに付随して学生の負債も増して、そのために人々はより安全な道を選ぶようになっていった。失敗への恐怖もそのために増していったのかもしれないね。
全く同じように、アメリカの健康ケアの費用(医療費)も高額になって、それによって人々はより安全な道を選ぶようになった。
社会的な構造
起業をしない一番の理由は何かと聞かれたとき、半数の人が「個人的な理由」だと答え、もう半分が「社会の構造的な理由のため」だと答えた。その最大のものの一つが、「資本へのアクセス」だ。
近年、お金に関する事柄はなんかよくわからないくらい変なことになってしまってる。ベンチャー資本家からの投資金はますます増えている。
彼らはいわゆる超富裕層、つまり、投資したお金が十倍になって返ってくることを期待するような人たちで、大きな成長が見込めることから、大抵テクノロジーに投資している。
小さな市場を狙った比較的安全なルートを取ると目されるようなビジネスは、そういう資本家には相手にされないし、「世の中に新しい価値をもたらそうとする人を助ける」という、本来すべきことに、銀行もどんどん消極的になっているような節もある。
地域銀行(community banks)が銀行の業界全体に占める規模は今やたったの13%だけど、今でも小規模事業(small business)のローンの総額のうち43%を占めている。(つまり、メガバンクや資本家は小規模事業にお金をあまり出したがらない)
起業のシステムが複雑になっていくに従って、お金のある人たちはそのお金を投資に回したほうが簡単で時間も有効に使えると思うかもしれない。自分自身で運営している小さなビジネスよりも、盤石の地位を築いた大企業にお金を投入した方がいい、ということだね。
お金持ちであるほど、これは当てはまる。お金はお金のある人の方により集まっていく。
大金持ちからすれば、自分で小規模なビジネスを始めるっていうことは、大量のエネルギーを注ぐのに対して割に合わない不合理な投資、ということにもなるだろう。
そして株式市場(stock market)に吸い上げられた大量のお金は大企業に繁栄か死かの二択を迫り、それによってそんな巨大な猛獣たち(ベヒーモス “Behemoths”。ここでは大企業の比喩)はアマゾンやネットフリックスがやってきたように、古い市場だけでなく新しい市場までも支配するようになる。
一方で、中産階級の資産は以前と比べて減少してしまっている。なんとか新しいことを始めたいと本気で思う人も、そのための資金がどうにもならないということもあるかもしれない。
実は起業したいという背景
若者が起業に消極的に見える理由について僕が話すことにした最後の理由は、「実際は起業したいんじゃないかな」と思うからだ。
今は副業、1099(アメリカで独立自営業として雇用契約をしている場合に使用する税務書類)の時代だ。通常の仕事にポッドキャスト(Podcast)、エッツィ(Etsy)、ポストメイツ(Postmates)などを組み合わせて仕事をしたりする。そんな副業を営む人たちは基本的に個人事業主ということになる。
この方法がいいと思うなら、今はかつてないほどの起業の時代だ。
でも、競争力を備えたサプライチェーン(Supply chains)は全てグローバルで、雇用にまつわる規制や法人税が重くのしかかるような状況で、そこから誰かを雇用するステージに行くまでの道のりはどうすればいい?そこに打開策があるのかすらわからないし、あるとしても、あまり魅力的なものではないかもしれない。
これはそんなに単純な話じゃなくて、僕よりはるかに賢い人が僕よりもはるかに優れた研究をしている。
でも、僕は「より少数の人」ではなく「より多くの人」に、自分のビジネスを始めることや、他の人に仕事を与えること、チームをまとめることの喜びを知ってもらいたいし、それ以前には存在しなかった新しい価値を生み出して欲しいと思ってるんだ。
参照リンク : Why You Haven’t Started a Business – vlogbrothers (CC BY 3.0)
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