インターネットが普及しIT環境の整備が進んだことで、ここ数年、あらゆるマーケットが急激な広がりを見せました。ネットが普及する以前は、足を運べる実店舗で商品を見比べながら買い物をするのが一般的でしたが、ネットでなんでも手に入るようになった今、消費者にとっての商品選択は、海原から魚を釣り上げるに等しいほど幅広いものとなりました。
そんな中で、消費者はなにを基準に商品やサービスを選んでいるのでしょうか。少しでも安いもの、広告でよく見かけるもの、知人に勧められたもの・・・。選択するにはそれぞれの理由がありますが、中には「スマホならやっぱりiphone」「シューズはNIKE」というように、細かなことを他と比較せず「信用」や「イメージ」でものを選ぶ場合も多いでしょう。
こうした商品やサービス、企業などの「信用」や「イメージ」という目に見えない価値を顕在化し、認知促進していく戦略を「ブランディング」と呼びます。
そもそも「ブランド」とは、家畜の牛や醸造したウイスキーの酒樽などを、他社製品と区別をつけるために焼き印を押した「burned」という言葉が由来であるといわれています。
自社のサービスや商品を競合と意図して差別化を図り、相応しいイメージをユーザーに向け発信し固定化していく。ブランディングは、他商品では代替できない唯一の価値を印象付けていく戦略です。ブランディングはどのようなステップで進み、どのような効果を生むのでしょうか。
目に見えない価値に「カタチ」を与えるブランディングデザイン
スターバックスコーヒーやコカ・コーラ、iphoneやNIKE。世界的にヒットしたブランドを頭に思い描く時、なにが浮かんできますか?
商品そのものの使用感や企業に対するイメージ、印象的なキャンペーン、CMで見たキャッチコピーやBGM、色やロゴマーク・・・。そのすべてが「ブランディング」によって創出されたイメージです。中でも、ブランドを象徴するのが「ロゴマーク」や「ブランドカラー」といった視覚的なもの。
視覚から受け取るイメージは言語や性別・年齢といった壁を越え、誰にでも等しく、速く、強く印象に残ります。
ブランディングは、ブランドの個性や姿勢を含め企業活動全体で行っていくものですが、その中でも、ブランドがもつ個性や主張、コンセプトなどの目に見えないものを体現しカタチにするのがデザインの役割。デザインは送り手の意志を可視化し、一貫性をもってブランドのスタイルを確立することで、ユーザーにビジュアルを伴ったブランドの姿を認識させます。
《ブランディングにおいてデザインで表現されるものの一例》
ロゴマーク / ブランドカラー / プロダクト / パッケージデザイン / ホームページ / SNS / ポスター / チラシ / パンフレット / 会社案内 / 名刺 / 封筒 / 看板 / テレビCM / ノベルティグッズ・・・
ブランディングがもたらす効果とは
ブランディング戦略は、大がかりな分だけ、その「効果」を実感するのに時間が掛かります。しかし、根付けばその効果は長く、恒久的な信用とポジションを得ることができます。
●差別化
ユーザーが「ロゴ」や「カラー」などでブランドを識別することで、他社の製品・サービスと区分され、選択される確率が上がる。
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●固定客の獲得
ブランドの認知が進むと「試してみたい」という欲求が高まり、ユーザーの裾野が広がる。満足度が高ければブランドの信用につながり、固定客(=ファン)が増える。
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●広告宣伝費の削減
信用を獲得したブランドは多くの固定客を得るので、売り上げを伸ばすための広告を出す必要がなくなる。
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●安定した経営
ブランディングで安定した基盤を築くと、ユーザーから価値を認められるため、他社と価格で競争する必要がなくなる。ブランド自体に信頼が生まれると、例え同じような商品であっても、そのブランドが提供するということに価値が見いだされ、競合商品より多少価格が高くても販売することができる。
ブランドを視覚化する6つのステップ
ロゴマークやカラーなど目に見えるものさえできればブランディングは成立しそうに感じますが、そこまでに至るプロセスがもっとも重要なポイントです。
1.調査
ブランドがマーケットの中でどのような位置にいるか、ユーザーからどのような評価を受けているか、競合との差異などをあらゆる方向からアプローチし客観的に評価します。
消費者へのアンケート調査やモニター調査など、できるだけ具体性を持った調査方法で実施し、競合他社のサービスや商品と比較してみましょう。
2.分析
調査結果を元に、ブランドを内と外の両面から細かく分析していきます。
分析にはさまざまな方法がありますが、有名なものに、ブランドを客観視するための4つの視点の頭文字をつなげ、「SWOT分析」と呼ばれる方法があります。
S・・・Strengths=強み 競合と比較し、強く優れている点
W・・・Weaknesses=弱み 競合と比較し、後れている点や劣っている点
O・・・Opportunities=機会 市場の予想される動向の中でビジネスチャンスに成り得るプラスの外的要素
T・・・Threats=脅威 ブランドを取り巻く環境の中で今後悪影響を及ぼす可能性のあるマイナスの要素
これらのポイントごとに、思いつく限りの要素を抽出していきます。
分析が進んだら、ブランドを形作る要素を細かく分け、ブランドの価値を構造化していきます。社会性や機能といった外部との繋がりとなる価値と、ブランドの世界観やキャラクター、使命などブランドが内包する本来の価値を明確にしていきます。
3.ターゲティング
分析結果を元に、どのような層をターゲットにブランディングしていくか、メインの客層になると思われる人物像を具体的に設定します。
例えば、「30代前半の働く女性」という設定も、「トレンドに敏感な社交性の高い女性」と「健康に気遣うスローな暮らしを大切にするマイペースな女性」では、求める商品も好むデザインスタイルにも大きな違いがあります。
4.コンセプト
ブランドの環境分析とターゲットとなる人物像が絞れたら、ブランドアイデンティティを決定づけるコンセプトを立てます。コンセプトとは、ブランドの本質的価値や使命、企業姿勢などを端的にあらわすキャッチフレーズのようなもの。誰にでもわかりやすく、他のブランドと決して重なることのない、オリジナリティあふれる一言が理想です。
5.ブランドイメージを可視化する
さまざまな手法で集約されたブランドのイメージ。コンセプトという一つの結果にたどり着いてから、さらにビジュアルアイデンティティを設定するために、コンセプトから考え得るデザイン的なキーワードを出していきます。
抽象的なワードで構わないので、思いつく限り書き出し、コンセプトの周りに付箋紙などで貼り付けていきましょう。「言葉」を視覚化することで、イメージの変換がスムーズに運びます。ワードが出尽したら、デザインのキーとなる言葉をいくつかチョイスしておきます。
6.キーワードをデザインに変換する
デザインのヒントとなるキーワードから、イメージが合致する写真やカラーなどの素材を集めてイメージボードを作成します。イメージボードを参考にしながら、標的とするターゲット像を加味し、好まれるデザインスタイルであるかを確認しながら、シンボルマークやロゴタイプ、イメージカラーなど、ビジュアルの核となるデザインを作成していきます。
ブランディングデザインの運用方法
数多のステップをクリアし、ようやく形となりはじめたブランディングデザイン。ロゴマークやブランドカラーがビジュアルアイデンティティのベースとなり、さまざまなメディアに登場していきますが、ここで気をつけなければならないのは、視覚的な統一感を持たせること。
ロゴやカラー、デザインパーツなどの使い方には一定のルールを設け、「スタイルガイド」を作っておくことが望ましいでしょう。
ロゴの色指定や使い方、フォントの指定やスタイルのバリエーションなど、レギュレーションを明確にし、社内・社外に関わらず同一のルールの下でビジュアルをコントロールすることで、信頼感のあるプロフェッショナルな姿勢を誇示することができます。
また、ブランディングデザインは、視覚的なものだけにとどまりません。
Webサイトのコンテンツや、SNSを介してのコミュニケーション、イベントやキャンペーン、プロダクトのリリースなどユーザーと接触するすべてのソースがブランディングデザインの一環です。
ブランドアイデンティティに則り、コンテンツの質やコミュニケーションの姿勢、すべての可視化されたブランドのパーツは一貫性のあるイメージである必要があります。
ブランディングデザインが確立し認知が進んだあとも、定点観測を行い、ブランドのイメージが時代の流れにマッチしているか、ユーザーのマインドから離れていっていないかをチェックしていくことをおすすめします。
どんどんスピード感を増していく現代、デザインのトレンドもめまぐるしく変化し続けています。
これからの時代、強固なブランドアイデンティティを保持しながらも、時の流れを許容できる柔軟性をもつ企業が、より一層求められるのではないでしょうか。
まとめ
ブランディングは、目には見えない「価値」だからこそ「カタチ」が必要。
送り手が掲げるイメージをどれだけ真っ直ぐに伝えられるか、また、好意的に届けることができるのかが、ブランディングを成功させるポイントです。
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