
「The quick brown fox jumps over the lazy dog」って、何の呪文?
フォントを選ぶとき、よく見かける英語の文章があります。「The quick brown fox jumps over the lazy dog」と表示されていて、なんだか不思議な響きだなあと感じたことはありませんか。僕も最初は「なんで、“キツネ”と“怠け者の犬”が出てくるんだ…?」と首をかしげたものです。実はこの文章、アルファベットをすべて含む特殊なフレーズだったりします。今回は、その理由や背景、そしてフォント選びの裏話などを、ゆるっとお話ししてみたいと思います。
フォント選びでよく見る“あのフレーズ”の正体
フォントをプレビューするとき、英語の文章サンプルが表示されることがありますよね。たとえばAdobe Fontsでは、初期設定で「The quick brown fox jumps over the lazy dog」と表示されます。「どこかで聞いたことがある気もするけど、いまいちピンとこないな……」という方も多いかもしれません。
実はこれ、アルファベット26文字をすべて使った文章なんです。こういった文章のことを「パングラム(pangram)」と言います。ほかにも「Sphinx of black quartz, judge my vow」など、英語圏にはいくつかの定番パングラムがありますが、そのなかでも「The quick brown fox…」がとりわけ有名です。
なぜアルファベットをすべて含む文章が使われるのか
英語のフォントをチェックするときには、AからZまでの文字がそれぞれどんな形で表示されるのかを一目で確認したいですよね。もちろん「ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ」と並べて表示してもいいのですが、それだとどうしても単調で、読んでいてちょっと味気ない感じがします。
そこで考えだされたのが、一つの自然な文章の中に26文字すべてを詰め込む方法でした。パングラムを使えば、フォントプレビューを読み物っぽい形で表示できますし、実際に単語としての組み合わせや行間をイメージしながら確認できます。デザイン上、自然な文章になっていると文字のバランスや雰囲気がつかみやすいので、とても便利なんですよ。
Adobe Fontsでも「The quick brown fox」なワケ
Adobe Fontsでよく使われる「The quick brown fox jumps over the lazy dog」は、実に歴史のあるパングラムです。昔から英語のタイポグラフィに関わる人たちの間で定番中の定番として使われてきました。
Adobe Fontsには世界中のデザイナーやクリエイターがアクセスして使うという特性がありますよね。標準的で認知度の高いパングラムを採用することで、ユーザーが初めてサービスを触ったときでも、「あ、これなら見たことある!」とすぐに慣れ親しむことができます。取っつきやすいという意味でも、このフレーズがピッタリなのではないでしょうか。
日本語フォントのプレビューはどうしてる?
英語の場合はアルファベット26文字で足りるのですが、日本語となると話が変わってきます。ひらがな・カタカナ・漢字と文字種類がとにかく多いですから、英語みたいに「全部の文字が入った短い文章」を用意するのは至難のわざです。また、実務的にはすべての漢字を網羅することはほぼ不可能です。
だからこそ、日本語フォントを選ぶときには、プレビュー画面で自分が使いたい文章を入力して確認してみるのがいちばん手っ取り早いです。とはいえ、さまざまな文章を入れて試すのは面倒なことも多いです。そこでよく使うフレーズ集やテキストサンプルを自分で用意しておくと、サクサク比較ができて便利ですよ。
まとめ – 知っておくとちょっと楽しくなる豆知識
フォントプレビューでおなじみの「The quick brown fox jumps over the lazy dog」には、こういった背景がありました。英語のアルファベットをすべて使うためのパングラムで、古くからさまざまな書体デザインやタイポグラフィの世界で重宝されてきた表現なんですね。いまではAdobe Fontsなどのサービスで当たり前のように目にしますが、こうしてその由来を知ると、ちょっとした雑学として楽しくなりませんか?
フォントは人それぞれの好みや使い方によって選び方も変わると思いますが、「なんとなく読みやすい」や「雰囲気が好き」といった直感的な判断だけでなく、歴史あるフレーズを通じて文字の形や持つ意味を深く味わうのも面白いものです。次にAdobe Fontsで新しい書体を探すとき、このキツネと犬のフレーズを思い出してみてください。
Adobe Fontsを選ぶときの”The quick brown fox jumps over the lazy dog”ってどういう意味…?と思っていたら、アルファベット26字を全て使った文章なんですね。
X (Twitter) – Jun 2, 2020