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社会に問題を投げかける注目すべきポスターたち

社会に問題を投げかける注目すべきポスターたち


社会に問題を投げかける注目すべきポスターたち

世の中に溢れる広告。チラシやポスター、CMなどさまざまですが、そのほとんどは特定のブランドや商品を売り込むために企画・デザインされたものです。消費者に認知させ、購入や利用に結びつけるため、多くの広告は好意的なイメージにとられるよう工夫されています。

そんな中で、時折、ハッと目を引きグッと考えさせられる広告に出会うことがあります。多くの人へ広告を媒介にしてメッセージを伝え、考えさせ、そしてアクションを促すための広告。そのような広告の筆頭といえる存在が、身近な問題を提起する公共広告です。

日本国内でもDVや児童虐待の抑止、臓器提供のドナー登録やがん検診の呼びかけ、SNSの危険性の認知など幅広い「社会問題」について考えさせられる広告が制作されています。ある意味、社会に警鐘を鳴らす役割を持つ公共広告は、いかに印象に残り考えさせることができるか、ということに焦点が置かれています。

こうした公共広告は日本だけではなく世界各地で制作されています。記憶に残すために感情を揺さぶるような広告は、時に予想できないよう展開を見せることもあります。企業が作るPRポスターとは異なる、メッセージ性の強い公共広告のポスターから「伝わるデザイン」のヒントを探してみましょう。

 

銃社会に警鐘を鳴らすポスターデザイン

「INNOCENT TARGET」と名付けられたシリーズポスター。どこにでもいそうなアメリカ人の写真に射撃練習に使うターゲットが重ねられた、強い危機感を感じさせるデザインです。

銃の数の多さ

銃社会への警鐘ポスター作例1 (via Pinterest)

この犬を抱く女性をモデルに使ったポスターには、左上に「アメリカには7億頭の犬がいる。そして27億丁の銃がある。」と記されています。珍しくもない日常に溢れたペットの頭数を上回る銃の数。データをもって突きつけられる、凄まじいアメリカの銃社会の実像が見えてきます。日常と隣り合わせの危険は、他人事ではないということを改めて考えさせられます。

 

ガンショップの身近さ

銃社会への警鐘ポスター作例2 (via Pinterest)

ピザの配達員の男性のポスターには、「アメリカのピザ屋は60,000軒、ガンショップは120,000軒」とあります。

 

幸せそうな写真とのギャップ

銃社会への警鐘ポスター作例3 (via Pinterest)

ウェディングドレスを着た女性のポスターには、「夫に銃殺された女性の数は、見知らぬ人に銃殺された数の二倍」と書かれています。背筋が凍るような統計と女性の幸せそうな姿の組み合わせが、より一層銃の恐ろしさを印象付けます。

 

銃による自殺について

銃社会への警鐘ポスター作例4 (via Pinterest)

後姿を写したポスターには「アメリカでは毎年19,000人以上の人が銃で自殺を図っている」とあります。顔が見えない後姿が、誰にでも起こりえる身近な恐怖であることを改めて物語っています。

 

地球温暖化にストップを唱えるポスターデザイン

地球温暖化問題に関するポスター作例 (via Pinterest)

ライトに照らされながら、電気のコードを必死に引っ張るペンギンの親子。愛らしさとユニークさに思わず目が向きますが、置かれている状況は非常にシビアなものです。

温室効果ガスの増加により温暖化が進む地球。北極や南極の氷が解けはじめ、地球の生態系にも深刻な影響が出始めています。その象徴となるのが両極に住むペンギンたち。メッセージにもあるように、電気の無駄遣いが不必要な資源の消費につながり、温暖化の原因の一つにもなっています。

ペンギンとしてはあり得ない行動に注目させ、大きな問題に気付かせる秀逸なポスターです。

 

差別について問うポスターデザイン

将来は肌の色では決まらない

差別について問うポスター作例 (via Pinterest)

新生児のベッドに寝かされた3人の赤ちゃん。

真ん中の黒人の赤ちゃんだけが、工事作業員のような制服を着ています。

ショルダーにあるコピーには、「肌の色で将来を決められるべきではない」とあります。生まれた瞬間から肌の色だけで差別して見られる、未だ残る人種差別の壁に一石を投じる啓蒙ポスターです。

 

ヘイトをなくそう

ベネトンのポスター広告作例 (via Pinterest)

差別とは少し違いますが、「UNHATE」をキャッチフレーズにデザインされたベネトンのポスターに登場したのは、オバマ前大統領と中国の胡 錦濤前主席。熱烈にキスを交わす合成写真のインパクトは凄まじいものがあります。人種・国籍、政治の枠を超えた憎しみのない世界を示唆するベネトンらしい企業広告です。

 

女性は〜べき という差別

性差別に関するポスター作例 (via Pinterest)

こちらのポスターは、性差別に疑問を呈するポスター。ヒジャブを被ったイスラム教徒の女性の口元にあらわれた検索ウィンドウには、「women need to 」に続く、蔑視的な検索ワードが続きます。「女性はコントロールが必要」「女性は閉じ込めておくべき」「女性は戒められるべき」・・・

そして、検索ウィンドウの外側に「women need to be seen as equal」という一行。

女性は平等に見られる必要がある。

必要なのは、どんな言葉でもなく平等な目線。まっすぐに見つめる女性の表情からもそれを見て取ることができます。

 

外見だけでは判断できない

見た目に関するポスター作例 (via Pinterest)

大写しにされた男性の写真が問いかける、「何に見える?」という簡潔なコピー。

選択肢は三つ。「俳優」「農家」「放牧民」。

どれが正解かは明かされませんが、最後に待ち受ける「MORE THAN MEETS THE EYE」というコピー。直訳すると「見た目以上のもの」となりますが、意を介して訳せば、「会ってみなくてはわからない」「見た目では判断できない」といった意味にとることができます。

どんな見た目であっても、外見だけでは何も判断することができないという事実が、まるでテストのように実例をもって試される実験的なポスターです。

このポスターには、さまざまな性別・年齢・国籍の人物でバリエーションが存在します。

 

交通安全を呼びかけるポスターデザイン

交通安全に感するポスター作例 (via Pinterest)

Tシャツの胸に書かれた誕生年と思しき数字「1988」。そこからハイフンの先にある数字がシートベルトで隠されています。

誕生年の横に書いてある数字は、普通に考えると没年です。シートベルトをすることで、没年は隠されていますが、ベルトを外してしまったら、自分の寿命が見えてしまいます。

シートベルトは命を守るベルト。

右下にある「BUCKLE UP. STAY ALIVE. 」=「ベルトをつける、生き続ける」というキャッチコピーがこのポスターに込められた意味のすべてを語っています。

 

喫煙の危険性を訴えるポスターデザイン

世界中で広がる禁煙ムード。身体に及ぼす深刻な影響をビジュアルで伝える、さまざまなポスターが作られています。

非喫煙者と喫煙者の未来?

喫煙の危険性を訴えるポスター作例1 (via Pinterest)

一つめは、十字架が並ぶ墓地にぽっかりと空いたスペース。「non smoking area」と書かれたその場所は、現実の禁煙スペースと、生きながらえる選択肢としての「禁煙」が重ねられ、シュールなメッセージを伝えています。

 

胎児へのリスクについて

受動喫煙の危険性を訴えるポスター作例2 (via Pinterest)

へその緒から胎児まで、煙で描かれたリアルなビジュアル。黒い背景に白く描かれた画像は、まるで妊婦健診の際に撮影される超音波画像のようです。妊婦であれば誰しも反応してしまいそうな画像に添えられた文章は、「あなたが喫煙している時、赤ちゃんも喫煙している」というメッセージ。さらに続けて、喫煙がもたらす胎児への危険性について冷静なメッセージが書かれています。

 

緊張が走る広告

喫煙の危険性を訴えるポスター作例 (via Pinterest)

タバコを挟んだ手が、銃を構えるシルエットに見えるという物騒なビジュアル。

加工を施し、銃に似せているとわかってはいても、タバコが人を死の淵へと追い詰める可能性があることを、思い起こさずにはいられない強いメッセージ性を孕んでいます。補足するコピーが何もなくても伝わる一目瞭然の危機感は、まさに、百聞は一見にしかずという言葉が当てはまります。

 

SNSが社会に与える影響を懸念するポスターデザイン

子供のSNS利用への警鐘

SNS社会の側面をうつしたポスター作例 (via Pinterest)

室内でぬいぐるみを持ち「いいね」サインで顔を隠す男性。妙なバランス感が余計にリアリティを感じさせます。顔の下にある吹き出しには「子どもたちは、誰が『いいね』しているか本当に知っている?」とあります。

顔の見えないSNS。どんな人物にもなりすますことができる特性を生かし、巧みに子どもたちに近づいて、犯罪のターゲットにするケースが年々増えています。

POPなインターフェイスの後ろに隠された、リアルな危険を警戒しなくてはならないという、犯罪抑止広告です。

 

SNSのある側面

SNS社会の側面をうつしたポスター作例2 (via Pinterest)

瀕死の子どもを腕に抱く母親。切迫した状況に周りから差し出される「いいね」のサイン。

飾り気のない打ちっ放しのタイピング文字で書かれた「『いいね』は助けにはならない」というメッセージ。

SNSで気軽にやりとりされる「いいね」のサイン。それ自体が悪いこと、というわけではありませんが、「いいね」をしただけでは解決しない問題が世界にはたくさんある、という現実を改めて知らしめる意見広告です。

 

暴力や拷問を抑止するデザイン広告

暴力や拷問を抑止する広告デザイン例 (via Pinterest)

バスや映画館の座席などにプリントされた、後ろ手を縛られた残虐な写真。縛られた痕が何重にも残り、長期にわたる監禁をイメージさせます。

この広告は、椅子だけでは未完成で、座席に人が座り、まるでその人が縛られ拘束されているように見せることで完成します。

腕の上に書かれているのは、「被害者はあなたや私のような人」というメッセージ。「監禁」や「虐待」というと自分とはかけ離れた出来事に感じますが、何かのきっかけで誰でも陥る可能性があるのが、今の世の中の恐ろしいところ。「人」を参加させ、問題を我がことに置き換える、非常にインパクトの強いデザイン広告です。

 

まとめ

世の中の問題をあらわにする公共広告や意見広告。忙しい毎日の中で足を止め、社会問題について考えてもらうには、相当のインパクトが必要です。奇想天外なビジュアルに心に刺さるようなキャッチコピー。時には、ポスターにするには躊躇われるような過激なものもありますが、それらの表現は選ばれるに値する理由を持っています。

一般的なポスター広告に、それほど過激な表現を求められるのは稀ですが、見てもらえない広告に意味はありません。人の記憶は感情が伴うと残りやすいと言われています。印象に残る、効果的なポスターを作るには、良い意味で予想を裏切るビジュアルと、心に残るコピーが必須。ただただ美しい、お洒落なポスターというだけではすぐに忘れられてしまうかもしれません。

 

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