インターネット環境が普及した今の時代でも、必要とされる紙媒体の販促ツール。中でも、自社製品を紹介する商品カタログは、見たい時にいつでも取り出して見ることができ、他社製品との比較や打ち合わせ時の資料として使いやすいことから、今も変わらずビジネスの現場で重宝されています。
仕様は、情報量の多さにより二つ折り4ページ程度のものから、数十ページ、時には数百ページのものまで幅広く、デザインスタイルも、テキスト中心のものや写真やイラストがふんだんに使われるものなど様々です。
チラシやポスター、リーフレットやカード類などに比べ、情報量も制作規模も大きくなる商品パンフレットは、制作側のみならず発注者の方にとっても大きなプロジェクトです。扱う情報が膨大過ぎて「何から手を付けていいかわからない」となりやすい商品カタログの制作ステップを、思い通りのカタログに仕上げるために有効なポイントを押さえながら解説いたします。
制作会社との打ち合わせ前に進めておきたい4つのこと
1. 社内でのコンセンサスの取りまとめ
発注側のお客さまの中には「何から始めたらいいかわからないし、とりあえずデザイナーと打ち合わせをしてみよう」と考えられる方もいるかもしれません。
しかし、発注者側の中でも「ぼんやり」とした内容を、情報に乏しい外部の人間が聞いて形にすることは難しく、そこで方向性や掲載内容の舵取りを間違えてしまったら、後々、発注側の社内で上司や決裁者の方からNGが出ることも珍しくありません。制作がある程度進んだ状態で全面変更など大きな修正が入る場合は、追加料金が発生する場合がありますし、何よりそこまでかけてきた時間や労力がすべて無駄になってしまいます。そのようなことを避けるためにも、社内での方向性の統一は、はじめの大きな一歩です。
2. 誰に何を伝えるためのカタログなのか?
最初に考えるべきことは、読み手のターゲット設定と、何を伝えるためのカタログであるかという目的をクリアにすることです。ターゲットと目的をはっきりさせないまま進んでいくと、「読みづらい」「わかりづらい」「何を伝えたいのかわからない」不親切なカタログになってしまう可能性が大いにあります。
例えば、ターゲットは取引先のお客さまと一口に言っても、その取引先が同じ業界に属しているかそうでないかによって構成内容は大きく変わります。取扱商品が機械や部品など、その業界に精通していなければ理解できない専門的分野のもので、業界外の顧客がターゲットの場合は、専門用語を並べたところで顧客にとっては理解できない資料になってしまいます。反対に、同じ業界で同様の知識を共有できる顧客ならば、より専門的な情報に特化したカタログを制作した方が製品の特性を訴えることができるでしょう。
目的についても、そのカタログを通して達成したいゴールを設定しておかないと、ただの情報の羅列になり、結果に結びつかない販促ツールになってしまいます。
自分の中では判然としていることであっても、周囲や社内での確認をした上で制作サイドと共有しておくことで、軸がぶれないカタログづくりにつながります。
3. 掲載したい内容をリストアップする
ターゲットと目的がはっきりしたら、次は、カタログに掲載したい内容をリストアップしていきましょう。どのような製品カテゴリーがあって、カテゴリー内には何種類くらいの製品があるのか。それらの目次となるようなインデックスページや、ブランド紹介、企業紹介や開発ストーリーは必要か?・・・などなど、思いついたまま書き出していくだけでも文字になることで具体性を帯び、ぼんやりしていたカタログのイメージがクリアになっていきます。
ここで並行してやっておきたいのが、競合他社のカタログの研究です。デザインや構成、製品の紹介項目など、同業他社がどのようなカタログを制作しているのか、事前に知っておくことは大きなアドバンテージです。
顧客が他社のカタログと比べて見た時に、自社のカタログをどのように見せたいか、競合にはない自社の強みをどのように表現するかなど、「違い」を見つけるのと同時に、他社のカタログの良いところは吸収し自社流にアレンジして採用するなど、競合他社のカタログは、非常にリアルで役に立つ参考資料になります。
中でも、他社のカタログを見ながら考えたいのは、カタログ全体の流れです。製品をどのような順序で紹介すると読みやすいのか、見たい製品を見つけるには、どのような仕掛けが必要なのか。独自性も大切ですが、カタログには規模・業種によってパターンが存在します。そのパターンを理解し、自社カタログに取り入れながら最適な形を考えていきましょう。
4. ページ割を考える
掲載内容のリストアップでおおよその「量」がわかり、競合他社のカタログ研究で「流れ」が把握できたら、大まかなレイアウトを考えていきましょう。手書きでもWordやPowerPointなどのOfficeツールを使ったものでもOKです。デザインは気にせず、掲載したい項目のボリュームと順序を、ページを模したマスの中に書き入れていきます。その中で、「ここはこういった見せ方にしたい」など希望があれば手書きのイラストやイメージできる参考資料の添付、もしくは文字で書き入れて具体的にしていきましょう。
「それって制作会社の仕事じゃないの?」と思われるかもしれません。ただ、こうした発注側の意図が明確になった原稿があることで、より深く内容を理解し、初回の打ち合わせでもスムーズに、より具体性を伴った有意義なコミュニケーションになることは確実です。
カタログのデザインコンセプトの設定
社内で原稿の準備ができたら、いよいよ制作スタートです。カタログの見栄えを決定づけるデザインは、ターゲットと目的を考慮した上で、制作会社におまかせしても構いませんし、希望がある場合は、社内で意見を取りまとめてキーワードや参考資料になる画像などを用意し、制作会社と打ち合わせしましょう。
ここでも、並んで比較されるであろう競合他社のカタログを参考にし、並んだ時に見劣りしないか、違いを出すにはどうしたらよいか、反対に、こんな良いところはうちも取り入れてみようなど、第三者的目線に立って判断するのがポイントです。
予算と制作スケジュールを把握する
ここまでくるとサイズやページ数などの仕様が確定してきます。制作と印刷料の最終的な予算を決定し、納期に合わせた制作スケジュールを制作会社と共有しておきましょう。
制作スケジュールは制作会社の方から目安として提示することがほとんどですが、校正の期間に決定権のある上司が不在であったり、出張や外勤と重なるなど十分な時間が取れない場合は、前もって制作会社と打ち合わせし、納期に間に合うようお互いのスケジュールを擦り合わせしておくと安心して進行することができます。
まとめ
はじめは漠然としていたカタログ制作も、順を追って要素を明確にしていくことで無理なく思い描いたものを作ることができます。ターゲットと目的を最初に設定し、方向性と情報を社内外で共有することが軸のぶれない紙面づくりのポイントです。
https://www.youtube.com/watch?v=YgUvPiXopZc
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