デザイナーの「地獄のデスワード」について
“デザイナーが発狂する「地獄のデスワード」”という記事を読んでみて、個人的に感じたことです。同業者ならともかく、全く畑違いの所であればデザインやデータに対して無知であることは、ある意味当然の事だと思います。内容について共感出来る部分が無くはないですが、嘲る感じにとれるものは正直どうなのかなと…。(だって、お客さんですよ??)
僕もこういった要求をいただく事はありますが、基本的にお客さんに悪意は無いんです。魔法のようにササッと作れると思っている方もいらっしゃいます。でも、そういった人を無知だと陰でネタにするのはいただけません。
その場できちんと説明すれば良いんです。1案作るより3案作る方が当然費用がかかります。
「ピザに追加でパスタを追加注文したら、パスタ代はいただかないといけません。ピザにトッピング追加するくらいなら、サービスでやりますよ。」
…と選択肢を設ければ、予算に余裕のあるお客さんはそれでも3案見たいとオーダーされるでしょうし、予算が無い場合は1案のタイトル色違い案程度のオーダーになるでしょう。
なので、こういう「あるある」に対しては、こちらから予防線を張って「Aという要求でしたら、これくらいの労力がかかりますので、追加費用が出ます」『同じ費用で出来ない?』「でしたら、Bという方法でいかがでしょうか?」と、お客さんが合点がいくように説明していけば良いと思います。
ルイヴィトンのような感じで!と言われて、「そんな要求で広告デザインが出来るか(笑)」と嘲るのではなく、バッグの色なのか、どこかの店舗のイメージなのか、それともLVのモノグラムなのか、お客さんが一体何を素敵だと思って、自身のデザインに反映してほしいのかを確認すれば良いんです。
ただ、「デザインはお任せします」について警戒すべきなのは同意です。
これはお互いが不幸になるワードだからです。
この言葉で依頼をいただいた時は、事前にお客さんにお伝えすることがあります。修正費が確実にかさむことと、納期の予測が困難になることです。”プロ=全てを任せたい” “自分はセンスが無いから…”というお気持ちは非常によく分かります。でも、そこからゴールに辿り着くのは至難の技です。
デザインについてお客さんに説明する時は、よく料理に例えます。”完全にお任せ”と”ある程度方向性がある”ことはかなり違います。
仮に僕が世界中の料理が作れるプロの料理人だとして、お客さんから「お任せで」と言われたとします。僕はその条件で、お客さんが満足する料理を出せる自信はありません。
ですが、「中華で!」と言われればグッと作る料理のコンセプトや調味料・調理器具が定まります。修正があったとしても中華の範囲なので、同じ調味用や具材で出来る可能性が高く、労力も少なく済みます。何よりお客さんの満足度が高い。「そうそう、これが食べたかったんだよ!」と。
人と人が接する以上、お互いに快・不快が発生するのは仕方無い部分もあります。僕もいつもニコニコで出来れば良いですが、そこまで出来た人間ではありません。でも、無知をネタにして面白がっていても、一向にお客さんの依頼方法が向上するわけでありませんし、お互いが気持ちよく仕事をする為には、こちらの知識を伝えることも大切なのでは。と思います。
お客さんには優しく。へりくだるわけでもなく、驕るわけでもなく、手を取り合わせないと良い仕事にならないと思います。