「この配色、誰にとってもちゃんと見えているだろうか?」
── そう自問したことがあるすべての人に向けて、画像から色覚の見え方をシミュレーションできる無料ツールを公開しました。
デザイン事務所AMIXが公開した「色覚多様性シミュレーター」は、アップロードした画像が色覚特性の異なる人にはどう見えるのかを視覚的に確認できるツールです。特別なソフトは不要、ブラウザで動作し、誰でも無料でご利用いただけます。
色覚の“違い”を知ることが、アクセシビリティの第一歩
色覚多様性(Color Vision Diversity)は、決して“特殊な事情”ではありません。日本では男性の約5%、女性の0.2%が何らかの色覚の個性を持つと言われています。これは、身近なチームや顧客の中にも「色の見え方が違う人」がいるということを意味します。
このツールが目指しているのは、「違い」を知ることで、配慮ある表現を自然に取り入れられるようになること。色覚タイプごとの見え方を、実際の画像を使って体験できるこのシミュレーターは、そのきっかけとして最適です。
画像をアップするだけ。色覚タイプ別に見え方を再現。
対応している色覚タイプは以下の5種類です:
- C型(一般色覚):多くの人が持つ3色型の色覚
- P型(1型2色覚/赤の感知が弱い)
- D型(2型2色覚/緑の感知が弱い)
- T型(3型2色覚/青の感知が弱い)
- A型(全色覚異常/モノクロに近い見え方)
「赤と緑の違いがわかりづらい」「青と紫の区別がつかない」など、それぞれの色覚に特有の特徴が反映された画像が並びます。
操作はシンプルで、画像をアップロードするだけ。ワンクリックで各色覚タイプのシミュレーションが即時に表示されます。「全て表示」ボタンでは、一度に5つの比較画像を並べて確認できます。
デザインに携わるすべての人へ ─ こんな場面で活用できます
このツールは、Webデザインに限らず、色が関わるあらゆるアウトプットの確認に役立ちます。
- プレゼン資料や図表の配色確認
- アプリUIやサイトのボタン、アイコンチェック
- 印刷物(パンフレット・チラシ)のレビュー
- 地図・グラフ・チャートなどの色分け検証
たとえば、グラフで「赤」「緑」を使ってカテゴリーを分けている資料が、P型色覚の人には同じような色に見えてしまうことがあります。このツールを使えば、それを視覚的に「実感」できます。
専門的な色変換処理を、誰でも手軽に使える形に
このシミュレーターでは、最新の色覚研究論文に基づいた色変換アルゴリズムを採用しています。
- P型・D型(赤・緑の変換):Viénot et al. (1999) による行列演算
- T型(青・黄色の変換):Machado et al. (2009) のモデルを参照
- A型(全色覚):Rec.709による輝度値を用いたグレースケール化
これらの処理はHTML5のCanvas API上でリアルタイムに行われており、アップロードした画像をクライアントサイド(ローカル)で変換するため、個人情報保護の観点でも安心して使用できます。
また、画像のサイズが大きい場合は自動的にリサイズ処理を行い、ブラウザ上で快適に表示されるよう工夫されています。
使いやすさにもこだわったUIデザイン
ツール全体のUIも、アクセシビリティと直感的な操作性を重視して設計されています。
- ドラッグ&ドロップ対応の画像アップロード
- フィルターボタンで切り替えながら見比べ可能
- モバイルにも最適化されたレスポンシブ対応
これにより、専門知識のない方でも迷わず使うことができ、教育現場や企業のチームミーティング、制作レビューなどでも活用しやすくなっています。
色だけに頼らないデザインのヒントも掲載
ツール内では、色覚多様性に配慮したデザインのポイントについても解説しています。
- 色以外の要素(形・線・アイコン)を併用する
- コントラスト比を十分に確保する
- 色の組み合わせに注意(赤×緑、青×紫など)
- 重要情報には必ずテキスト補足を入れる
こうしたノウハウとシミュレーション結果を併せて確認することで、「見えていない人がいるかもしれない」ではなく、「誰にでも伝わる」を前提にしたデザインが可能になります。
無料・商用利用OK。ライセンスやプライバシーにも配慮
このツールは完全無料で提供されており、教育・研究・商用目的でも制限なくご利用いただけます。
また、アップロードされた画像はサーバーには一切送信されません(ブラウザ上でのみ処理)。
多様性に寄り添うデザインを、誰でも実現できる時代へ
デザインは「届ける」ための手段であり、「届く」かどうかは受け取り手によって決まります。
見えていない人がいることに気づけるか。見えづらい理由を理解できるか。
それが、伝わるデザインの第一歩です。
この「色覚多様性シミュレーター」は、そうした気づきの入り口として開発されました。どんな現場でも、どんな職種の方でも。ぜひ一度、あなたのつくった「色」を、このツールで体験してみてください。
- 本ツールは教育・啓発およびデザイン参考用であり、色覚異常の診断や医学的判断に使用することはできません。色覚に関する正確な診断は、必ず眼科専門医にご相談ください。
- 本シミュレーターで使用している色変換アルゴリズムや係数は、特定の研究に基づいたものですが、シミュレーションの精度や完全性を保証するものではありません。
- 本ツールの利用によって生じたいかなる損害や不利益(画像処理のエラーを含む)についても、開発者は責任を負いかねますのでご了承ください。