15年にも渡って、ロゴデザインのトレンドを追い続けている海外のデザインWEBマガジン「LogoLounge」。このWEBサイトには数多くのロゴが世界中から投稿され(この1年で25,000以上のロゴが投稿されたそうです。)、スタッフはそのロゴたちの傾向を毎年独自に分析しています。
今回は、そんなLogoLungeから最新情報【2017年のロゴデザインのトレンド】を紹介します。いつも快く対応をしていただいているBill Gardner 氏とスタッフの皆様に感謝です。(Thank you Bill !! )※翻訳・編集・掲載許可をいただいています。
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2017年 ロゴトレンドの分析
ロゴトレンド1 【影で区切る】
例え実力のあるデザイナーたちにとっても、平面的なページ内に制限されたスペースで現実をグラフィックに変えるのは難しいことです。ここ数年間で、一つの要素が他の要素を通過する際に、影を作るデザイナーが増えました。一つの線がもう一つの線をくぐる直前に置かれた綺麗な線によって、レイヤーを融合させることなく視覚的にレイヤーを分けることができます。このテクニックをポートフォリオに使うことはデザイナーが成長した証でもありますが、ただの間隔だったところに影を使うのはより適切だと言えます。
この「影で区切る」ロゴデザインはグラデーションを使わなくとも可能です。フラットトーンとそれより1、2段階ほど暗い色さえあれば、ただのシンボリックな表現ではない立体的な表現ができるのです。フラットカラーと比べるとトーンの数が多いですが、さほど大きな問題ではないでしょう。このトレンドもまたいつかは消えゆく運命ですが、この新鮮なディメンションの表現法のおかげで少しは発展することができそうです。現状を打破することは第二の目を向けてもらうにはいつだって良い方法です。
ロゴトレンド2 【フェードする線】
これらのロゴデザインはまるで濃い霧の中から姿を現すかのようです。表すのか消えていくのかに関わらず、見る人はこれが変化しているとわかるはずです。不透明度が100から0に変わるにつれて、ロゴがゆっくりとページに沈んでいきます。黒やカラーの背景でも想像できるロゴですが、白の背景を利用しているのが新鮮です。背景の白は新たな始まりと初めての機会を表し、安心できる場所を提供してくれています。
このフェードするロゴマークは、欠けている場所を消費者が想像できるようにデザインされていて初めて機能します。5つの消えゆく円からできている Be! Five Branding(図右下) のロゴを見れば、たとえ円の4分の1しか見えていなくても1つの円を表すことができることがわかります。これに比べ文字は、消える部分があまり多いと認識できなくなります。円が使われているロゴはスクリーンの「ロード中…」のアニメーションを連想させますね。それがロゴから連想するものとしてふさわしいかどうかはわかりませんが。こういったロゴと出会うと、果たしてこれがより目立っていくのか消えて行ってしまうのかが気になります。
ロゴトレンド3 【ライジングカラー】
この3つ目のトレンドは、形よりテクニックを重視したものです。ロゴデザインのレイヤーを分けたり奥行きを与えたりするのがこのトレンドの特徴です。ロゴは通常平面的なので、奥行きや立体感を出す際にはリアリズムなのかシンボリズムなのかを決める必要があります。このトレンドはおそらくリアリズムに傾くと思いますが、影やハイライトが少ないことからちょうど真ん中くらいに落ち着くかもしれません。
ポイントは、ロゴマークの書き順に沿ってグラデーションを構成することで、平面や図形が交わる部分に色の濃さの差が生まれ立体的に表現できることです。平面的なロゴにおけるこのトレンドの可能性は豊富なので、様々なバリエーションがあります。ミネアポリスダウンタウン議会のロゴ(図右上) は、右下の濃い色から始まり坂を下るように一周回って、影や破線を使わずに下に潜り込む様子を表しています。
ロゴトレンド4 【シンプルさ】
ロゴの形はまるで勲章のようにシンプルさをまとったものばかりです。ロゴの構成要素が仲間はずれになることは許されません。これらの多くは一見60年代や70年代っぽく見えますが、より大人びたカラーパレットやビジュアルの使い方は近未来のロゴの象徴です。色はクリーンカラーが多いですが、幼稚っぽさを避けるために手を加えられていることがほとんどです。
形は他のものと合わさることで物語を伝えます。直角と弧の1つ2つだけでは足りないのなら、あなたはこのジャンルには向いていないかもしれません。おもちゃのLEGOのように3つや4つの要素の組み合わせから生まれるものは無限です。Love Cinema(図左下) のロゴを見てください。このハート、箱、2つの円という組み合わせは明確なシンボリズムを表していますが、これにたどり着くまでに何時間もかかったかもしれません。ただ見た目の美しさにこだわるクライアントには向いていないかもしれません。
ロゴトレンド5 【シンプルなオーバーレイ】
1つ前のカテゴリーの厳格な美的センスとシンプルな透明度を融合させれば、メッセージは明確です。純粋にシンプルな幾何学図形だけを使ったこれらのロゴは、やりすぎたデザインの見掛け倒しなルックスとは違い、装飾など必要ありません。このトレンドは2つの要素だけを使って、1+1=新鮮だということを表しています。MetLife(図左上)の2つの四分円はもちろんMの文字を表していますが、クライアントと企業が合わさる時の強さを表してもいるのです。
今やオーバーレイは様々な使い方とスタイルで、ロゴマークの標準的な要素として使われるようになりました。透明さのあるロゴが表す主なメッセージは企業や組織や方法のオープンな様子です。金融の分野では、投資の調査などが公に隠されず行われていることを消費者に伝えるために使われます。Pentagramのマスターカードのロゴ(図左下) は昔ながらの円グラフをスマートに改良し、2つの世界が交わる様子を赤と黄色の円が交わりオレンジになることで表しています。このトレンドに問題があるとしたら、2つのシンプルな幾何学図形だけでは構成要素に限界が来てしまうかもしれないことですが、これからこのトレンドがさらに進化していくことを祈りましょう。
ロゴトレンド6 【多中心】
球体の周りをまわる複数の縞は結局のところ同心円です。今年は円状のストライプがよく見られ、特に意図的に重なり合うものが多いです。水面に落ちる花びら、電波、WiFi、熱、輪廻のシンボル。それらが意味することがクライアントの目標と一致していれば、このロゴデザインを使っても良いかもしれません。このトレンドのポイントは要素が互いに相乗効果を生み出すことにあります。
68年のメキシコシティオリンピックのデザインを手がけたLance Wymanは、自分のデザインがこのように生まれ変わったのを見て誇らしく思っていることでしょう。このトレンドにはポジティブスペースとネガティブスペースが豊富に使われています。ここにある「多中心」のロゴには、同サイズの正円が使われているものが一つもありません。これはこのトレンドの必須事項ではありませんが、デザイナーたちは重なり合ったり途切れたりする弧で円を表現することに成功しているのです。
ロゴトレンド7 【・・・】
毎年、どんなデジタルシンボルが有名になったのかが分かるトレンドがあります。「などなど」を表す省略記号(・・・)がリバイバルしているのは、見ていてなんだか心地よいものです。メールの開封確認や相手がメッセージの入力中の時にでるマークとしてよく知られるこの三つの点は、更なる尊敬の意を表しています。現代社会では大人やティーンエイジャーたちがこのマークに振り回され、恋愛カウンセラーたちはこのマークで収入を得ています(それだけ人々がデジタル社会に依存しているということ)。
かつてこの記号は、一覧を最後まで書くのが面倒なライターが使う最高のショートカットでした。しかし2005年にブラックベリーによって省略記号が使われるようになり、その2年後にはアップルが後を追いました。その結果として、「何か言うことがある」という意味でロゴマークにも使われるようになったのです。皆があなたの言葉を期待して待っています。吹き出しによって点に居場所が生まれますが、今の認知度ならおそらく吹き出しがなくても十分成り立つでしょう。
ロゴトレンド8 【テキストボックス】
個人的に、良いロゴとは明確であり機能性が高いものだと思います。テキストのみで構成されたロゴが、グラフィックロゴと比べて複雑に見えることがよくあります。そのせいで、タイポグラフィを使ったロゴを作る際にはとても慎重にならなければならず、なかなか目立つことができません。それがただのテキストの塊ではなくロゴデザインとして認識されるにはどうしたらいいのでしょう?
発展し続けるデジタルデバイスとともにテキストをハイライトする際のボックスの認識度も高まってきました。文章にカーソルを合わせて、選択部分がハイライトされる様子を想像してください。これが、「ここが大事なところ」という意味を持つハイライトに人々が注目している理由なのです。
テキストを写真やグラフィックの上に浮かせるようなデザインは、実際に企業でハイライトが多く使われるBloombergやFast Company onlineのロゴでも見られます。今ではただの箱ではなく、より重要性をかねた存在となっています。これらのロゴデザインは、専門的な特徴やクライアントの言葉に快適に対応できる様子を表しています。フリーソフトウェアコミュニティのMozilla(図左上) のような名前も、このように装飾されます。テキストだけでも十分完成しているように見えるこのロゴマークですが、黒いボックスを足すだけでこんなにもスクリーン上での存在感が増します。
ロゴトレンド9 【陰陽】
時々、かつて人気だったモチーフが復活することがあります。しかし、そのモチーフが3500年前のものだったことはほぼありませんでした。この陰陽のシンボルの起源は3500年前にも遡り、西洋におけるマルチカルチャーについての議論によって目立つようになりました。明るい側の「陽」は前向きでアクティブな男性を表し、もう半分の暗い部分の「陰」は後ろ向きで受動的な女性を表しています。こんなに啓発的なシンボルなのに、少し女性嫌いな意味合いに聞こえますね。真逆だったり反発するものを一つのシンボルに使うことは、より大きな力を表すコンセプトとして古くからおこなわれてきました。
熱いものと冷たいもの、甘いものと酸っぱいもの、高いものと安いもの、思慮深さと積極性、もしくは自分のクライアントと対になるものを選んでください。それが、彼らにとって一番のアドバンテージになるかもしれません。グラフィックの観点から話すと、このロゴデザインの反映するものは心地よさ、独立性、そして解釈の自由です。円の中に納まるのも良いことですが、他の図形や反復を使って同じエッセンスを伝えられるか試すのも良いでしょう。単一のものに多様性を追加することは「陰陽」の歴史より昔から現在まで使われている方法です。
ロゴトレンド10 【パスタ】
VR(バーチャルリアリティー)の時代が始まり、限界を超えて誰もが驚く体験を生み出す人たちが生まれました。VR依存症の人たちは皆、地下室に閉じこもってオキュラスの中の女の子からキスマークを貰っています。デザイナーたちも、フラットな世界の物体をハイライトを使って立体的に仕上げることに、VRと同じくらい熱中しています。デザイナーたちはちょっとした3Dの要素が人々を惹きつけることを知っています。ここにあるロゴデザインは今にもスクリーンの表面から飛び出してきそうですね。
まるでアルデンテで茹でたパスタのようにしか見えなくても、しっかりと中身は詰まっているのです。きっと横向きにしても消えないのではないかと思うくらいに立体的に見えます。元の形だけでも十分ビジュアルメッセージを伝えられるかもしれませんが、立体的な要素を含ませることによって平面的なロゴたちが嫉妬するような個性を纏うことができるのです。
これらのロゴマークは、濃い影とハイライトそしてグラデーションによって、まるで人気のある犬用おもちゃのようにも見えます。「パスタ」を活用するためにはそれがクライアントの性格にしっかりと合っている必要があります。立体感のあるロゴの人気は上昇し続けていますので、このトレンドが進化する可能性は大いにあります。
ロゴトレンド11 【包まれた】
ロゴの居場所をあいまいにすることは誰かにヒソヒソ声で話すことに似ています。適切な声の大きさで話せば、大衆さえ黙り、耳を潜ませるのです。パズルやクイズにも似ているこれらのロゴデザインは、まるで誰かがストライプ柄のベッドシーツで製品を包んで隠しているかのようです。別の見方をすれば、埋もれたイメージは製品を生み出すプロセスの一部を意味しているとも考えられます。
ここにあるロゴのサンプルはどれも少しずつ異なるストライプですが、ストライプではない柄でも同じ効果を作ることができます、グリッドや格子縞、水面、木の幹の表面やその他、あなたが企業の努力を表すことができると思う柄を使うことができるのです。
ろ過を専門として扱うテクノロジー企業の Klarwin(図左上) は、自社の製品をろ過されるKの文字で表しています。Code Architecture(図左下) は地形学のようなグリッドが表すコミュニティから構造物が浮き出てくる様子を表しています。川等の底流はいつでも見た目より強く流れていますから、このトレンドが伝えるメッセージはそこにあるのかもしれません。
ロゴトレンド12 【マイクロライン】
このトレンドは、スマートなロゴデザインの全てのルールに反しています。「細すぎる線は縮小するときにうまく表示されない」ということは私たち誰もが知っています。ラインワークは印刷の悪夢を生み出します。食後30分は水泳をしてはいけないくらい当たり前のことです。このトレンドは、今私が言ったことの最低でも3分の2に反しているのです。
ワイヤーのようなデザインが人気だったことがこのトレンドの背景にあるのかもしれません。業界が「付加製造」と呼ぶ3Dモデリングやプリンターのような、メッシュ状の幾何学図形が物体を印刷するという概念に惹かれる人たちが増えているのです。このトレンドは、組み立てるかアニメーション化するかに関係なく物体のどんな曲線美も表すことができるベクター言語なのです。
このトレンドの驚くべきところは、平面の全てがハーフトーン効果だということです。線が交わるところは色が濃くなっています。線がある角度やカーブで曲がる時は、影として暗くなります。このジャンルが表現することの一つに、技術的なプロセスの正確さがあります。オープングリッドを使うことによってロゴが表面と融合し、ページやスクリーンとの統一感を生みます。拡大や縮小は大きな挑戦ですが、うまく作れば、ルールの一つや二つくらい破る価値は十分にあるかもしれません。
ロゴトレンド13 【二重】
過去のトレンドの「リンク(鎖)」と「単純さ」、そして「モノライン」が結婚すると、この「二重」のトレンドが出来上がります。もちろん、「二重」という名前はこれらのロゴがぴったり二つの物体や編み物を、一つの線で表していることに由来しています。もしくは、一つの物体が二つのセクションに分かれているとも言えます。イニシャルや略語はシンボリズムとしてのリソースが豊富なので、このトレンドが文字と使われることは珍しくありません。Pertiva(図左上) のロゴはこのトレンドの中でも非常にベーシックなタイプですが、他のロゴは内側や外側につながっていたり、間を編むようだったりねじれたりしています。
Bright House(図右下) のロゴは遠近法をうまく使って立体感を創り出しています。線や影が途切れたり、逆に全く途切れなかったりしていますが、繋がりが非常にうまく表されています。二つの要素やコンセプトを併せることで、単純だった言語が力や統一を表し、可能性を秘めるようになります。対等的なアイデアをつなげることも類似したアイデアをつなげることも可能です。また、モノラインが太さを増していることについてもお気づきでしょうか。平面的なロゴが進化しているのかもしれないですし、私たちの視力が低下しているのでデザイナーたちが線を太くしたのかもしれません。
ロゴトレンド14 【翼】
私が興味を持ったのは、このトレンドのきっかけとなったロゴデザインがはっきりとしないことです。バーやストライプが自然に進化したものかもしれません。綺麗に並んだ線の両端をつまんで上に持ち上げるのを想像してみてください。それらの線はまるで翼のような形を織りなし、羽の形を連想させるような対称性を生み出します。このエアリーな特質によって周りの空間がロゴを通じて輝くことができます。その重力に逆らうようなデザインはとても魅力的です。
張りつめたそれぞれの線は、手を離せばすぐに宙に舞ってしまうかのように飛び跳ねる準備をしています。Dell Young Leaders(左上) のロゴは炎のようにも見えますし、編み込まれた翼のようにも見えます。とてもシンボリズムに富んだトレンドロゴと言えます。アクティブな特質を持つこのトレンドは、組織の動きを表したり、多くのものが一つになって発動する様子を表しています。
ロゴトレンド15 【色分け】
一本の線は、鳥が止まるスペースの他にはあまり余裕がありません。モノラインが使われるロゴマークに色が多く見られるようになったのは、これが原因かもしれません。長続きするテクニックを応用し進化を促進させるために、デザイナーたちはまたも新たな方法を編み出しました。線を色で分けて切断することによって、新たなシンボリズムとより深い物語が生まれます。時には、単なる新たな装飾法に見える時もありますが。
グーグルが2015年に作ったGの文字のロゴは、4等分された文字のそれぞれの部分が企業色に分けられています。線はかなり太目ですが、これはおそらく最も影響力のあるモノラインロゴでしょう。ここにある鳥のロゴ(図左下) はイニシャルのEとMの文字のモノグラムになっており、Simione in Tutti Sensi(図右下) のロゴでは青い部分のおかげでイニシャルのSの文字が浮かび上がるようになっています。Mの文字(図右上) はこのトレンドにふさわしくないかもしれませんが、デザイナーが色分けを使っただけではなく線にハーフトーンを使っているのでご紹介させていただきました。
線の中で様々なビジュアルを賢く表現する以外に、色分けによって多様性・複数の要素が集まって目標を達成する様子を表すことができます。このトレンドをただの装飾として使うだけでは、見る人の「ひらめき」を誘発することはできないでしょう。
LogoLoungeより
「2017年は LogoLounge が、25万アクセスを突破し、265000個のロゴを持つサイトとなり、歴史の中でも記念すべき年となりました。私たちはそれぞれのデザインが世界中のデザイナーたちの何時間もの思考と苦難からできていることを知っていますから、このトレンド報告の作成において重要な手助けとなってくれたこれらのロゴたちに敬意を払うとともに、とても感謝しています。今まで、現在、そしてこれからのトレンド報告に貢献してくださったデザイナーの皆さんに今一度お礼申し上げます。」
参考 : LogoLounge ©2017 Logolounge Inc.
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