新人だからこそ「ここにいてほしい」と思わせる工夫
新人時代は誰だって不安だらけ。
現在はフリーランスのデザイナーとして活動していますが、以前は会社員のデザイナーとして新人だった時期がありました。あのころは何もわからず、スキルも経験もない状態で、「このまま埋もれてしまうんじゃないか」と不安ばかり感じていました。
世の中、いきなり新人が大活躍するシナリオはなかなかありません。特にクリエイティブな世界は実績や知識がものを言いますし、社内の流れやお客さんの好み、先輩が何を求めているかを知るまでに時間がかかります。これは当たり前といえば当たり前のことです。誰だって最初は手探りですから。
だけど、「新人だから無力」かというと、そうとも限らないと思うんです。まだ戦力としては未知数でも、「こいつ、いてくれると助かるな」と周囲に思わせられれば、居場所は自然と確保できます。では、どうやってそれを実現すればいいのか。僕なりに考えてみたいと思います。
雑用でも、やる価値はある
新人時代は、華やかな仕事ばかり回ってくるわけではありません。「これ、ちょっとコピー取っておいて」「倉庫の整理手伝ってくれない?」と、雑用を任されることだってあります。これが、少しばかり悔しい気持ちを引き起こすことも正直あるでしょう。「デザイナーとして入ったはずなのに、雑用ばかりで俺、何やってるんだ?」と思うこともあるかもしれません。
でも、こうした裏方仕事は、組織が回るうえで欠かせないピースです。何気ないコピー取りやファイル整理ひとつが、先輩や上司の作業効率を上げたり、チーム全体の業務進行をスムーズにしたりすることがあるんです。「あいつがいるおかげで無駄が減る」なんて存在になれたら、職場としては手放したくない人材になっていくものです。
「何か手伝えることありますか?」が魔法の言葉
先輩たちにとって、自分の仕事に集中したいとき、雑用まで手が回らないことはよくあります。そこで後輩から「何か手伝えることありますか?」と声をかけられたらどう思うでしょうか。たいていの人は「お、気が利くな」と思ってくれます。
もちろん、これをやりすぎると鬱陶しく思われるかもしれないので空気を読む必要はあります。でも、先輩や上司の行動をよく観察して、「ここで一言かければ助かるかもしれない」というタイミングを見計らって声をかけるのは有効です。
気の利いた立ち回りができれば、「この新人、ただの使い走りじゃない。仕事の流れを理解しようとしているな」と評価されやすくなります。
小さな改善提案で存在感を出す
雑用を通じて見えてくる効率化のポイントは意外と多いものです。たとえば、ファイル整理をする過程で「このフォルダ構成、もう少し整理したほうが探しやすいかも」と気づくかもしれない。コピーを取り続けるうちに「あの打ち合わせ資料、事前にデータで共有すれば手間が減るのでは?」とアイデアが浮かぶかもしれない。
こういう「改善提案」は、新人だからこそ思いつくことがあります。ベテランは慣れてしまって気づかない非効率を、新人の新鮮な目線が拾うことだってあるんです。もちろん、いきなり大規模な改革は難しいでしょう。でも「ここ、こうしたらちょっと良くなりそうです」くらいの提案を丁寧に伝えれば、「あいつはただ手を貸すだけじゃなく、考えて動いている」と思ってもらえます。
「いなくなったら困る人」になる方法
会社やチームで生き残るには、「他の誰でもいい」ではなく、「この人じゃなきゃダメ」とまではいかなくても、「あいつがいると助かるから、いなくなられると困る」という存在になることが一つの戦術だと思います。
最初から高度なスキルを求められても、それは難しい。だけど、雑用やサポートをきっかけに、周りを助ける動きを続けていけば、そのうち「こいつはうちに必要なメンバーだな」と自然に感じてもらえます。そうなれば、会社側としても簡単に手放したくない存在になりますよね。
どんな環境でも通用する基本姿勢
こういう姿勢は、クリエイティブ業界に限った話ではありません。どんな職場でも同じように通用するはずです。むしろ、専門性を発揮できるまでの間、目の前にある小さな仕事を面倒くさがらずに引き受けることは、長い目で見れば必ずプラスになります。
僕自身、フリーランスとして仕事をするようになり、クライアントとの関係でも似たようなことを感じます。大きな案件をドーンと決めるのは理想的ですが、最初は細かな修正対応や追加作業など地味なことの積み重ねで信頼を築く場合が多いです。「あの人に頼むと、スムーズに回るんだよね」と思ってもらえると、長い付き合いに発展しやすくなります。
新人時代には、それが「社内の雑用」という形で現れるだけのこと。結局、人が集まる組織の中で、自分の価値を高めるには相手を助ける動きをすることが一番手っ取り早いんだと思います。
自分の活躍の舞台は後からついてくる
もちろん、ずっと雑用だけで終わってしまうような会社であれば、それはそれで問題です。新人時代を乗り越え、成長していく段階で、あなた自身のスキルや個性が輝く仕事にもチャレンジさせてくれる環境かどうかは、見極める必要があります。
最初から全力で憧れのデザイン業務を任せてもらえるとは限りません。でも、コツコツと身近なところで役立ち、周囲から信頼を得ていれば、自然と「じゃあ次はあいつにもうちょっとクリエイティブな部分を任せてみようか」という話になっていくものです。
これは「自分を安売りしろ」ということではありません。むしろ、足元の小さな仕事を大事にすることで、チャンスの扉を開く合鍵を手に入れるイメージに近いです。相手にとって「必要な存在」になったと感じたとき、初めて自分のやりたい仕事へ舵を切る提案もしやすくなります。
周りを助けることが、回り回って自分の成長になる
新人がいきなり花形ポジションで輝くのは難しい。それは誰しも分かっていること。だからこそ、当座の居場所を確保するために、裏方で支える動きを意識するのは賢い戦略です。
周囲から「いなくなったら困るな」と思われるようになったころには、自分の中にも会社や業界についての理解が深まり、新しいスキルが身につき、人脈も広がっているはずです。そうなれば、次は自分のやりたいことや得意分野での活躍にチャレンジしやすくなります。
僕はフリーになってから、いろいろな現場を見てきましたが、「あの時期はただ必死に先輩のサポートをしていたな」と振り返る期間がある人のほうが、後々しぶとく成長しているケースが多い気がします。その経験は決して無駄になりません。
まとめ – 小さな貢献が未来を作る
新人や未経験者が、最初から大活躍するのはなかなか厳しい現実があります。でも、それで落胆する必要はありません。まずは目の前の小さな仕事に向き合い、周囲に「この人がいてくれて助かる」と思わせることができれば、自分の価値は自然に上がっていきます。
雑用と呼ばれる仕事でも、そこには組織を回すための大事な意味があるし、アンテナを張れば改善できるポイントも見つかる。そうやって「いなくなったら困る存在」になるころには、あなたの中にも自信やスキルが蓄積されているはずです。
焦らず、着実に足元を固めることで、やりたい仕事に近づくことができる。僕はそう信じています。
新卒や未経験者がいきなり活躍するのは確かに難しいですよね。 当座の居場所を確保する方法は色々あると思います。例えば、積極的に上司・先輩の雑用を手伝って全体の効率化に貢献するとか。アンテナ張って、気の利く人になれば「あいつに辞められたら嫌だな…」と必要メンバーに加えられる。
X (Twitter) – May 12, 2020