
シミュレーションゲームが教えてくれた、計画と継続の大切さ ~「A列車で行こう」と僕の仕事論
皆さんは、子供の頃に夢中になったゲームはありますか? 僕にとって、それは「A列車で行こう」というシミュレーションゲームでした。当時はただただ楽しくて時間を忘れて遊んでいたのですが、大人になってデザインの仕事をするようになった今、あのゲームから学んだことが、実は今の自分の仕事観や物事の進め方に大きな影響を与えているなあと、ふと感じることがあります。
今回は、そんな「A列車で行こう」というゲームを通して僕が学んだ、「計画の大切さ」と「コツコツ続けることの面白さ」について、少し語ってみたいと思います。
「A列車で行こう」ってどんなゲーム?
「A列車で行こう」を知らない方のために簡単に説明すると、プレイヤーは鉄道会社の社長になって、線路を敷き、列車を走らせ、駅を作り、その周辺に資材を運び、子会社を建てて街を発展させていく…という経営シミュレーションゲームです。
ただ単に線路を引けばいいというわけではなく、どのルートで列車を走らせれば効率が良いか、どんなダイヤを組めば乗客が増えるか、どこにどんな施設を建てれば街が賑わうか、といったこと(=浪漫)を考えながら、長期的な視点で都市開発を進めていく必要があります。資金繰りも重要で、時には赤字路線を抱えたり、予期せぬトラブルに見舞われたりしながらも、会社を成長させていくのです。
計画なくして発展なし! ゲームが教えてくれた「先を見通す力」
このゲームにハマってまず痛感したのは、「計画ってめちゃくちゃ大事だな」ということです。
例えば、新しい街に線路を引く時。最初は「とりあえず駅を作って、あっちの街と繋いでみよう!」と行き当たりばったりで進めても、なかなか街は発展しません。それどころか、後々「ここを発展させたいのに線路が邪魔だ…」とか、「もっと乗客が見込めるルートがあったのに!」なんてことになりがちです。
どうすれば効率的に資材を運べるか、どうすれば乗客がスムーズに乗り換えられるか、将来的にこのエリアはどう発展させていきたいのか――。そんなことを考えながら、最初にしっかりと都市計画の青写真を描く。そして、その計画に基づいて一つひとつ線路を敷設し、駅を設置し、必要な施設を誘致していく。そうすることで初めて、街は活気づき、会社も潤っていくのです。
これって、デザインの仕事にも当てはまるなと感じます。
クライアントの要望をヒアリングし、ターゲットユーザーを分析し、プロジェクトの目的を明確にする。そして、それらを達成するための最適なデザインコンセプトを練り上げ、具体的な設計に落とし込んでいく。この初期段階の計画や設計がしっかりしていればいるほど、その後の制作プロセスはスムーズに進みますし、最終的なアウトプットのクオリティも格段に上がります。
もちろん、計画通りにいかないこともあります。ゲームでも現実の仕事でも。ただ、しっかりとした計画があれば、問題が起きた時にも「計画のどこに問題があったのか」「どう修正すれば軌道に戻せるのか」と冷静に分析し、対応することができます。計画は、いわば進むべき道を示す地図であり、羅針盤のようなもの。それがあるからこそ、安心して前に進めるのだと思います。
コツコツ地道が、いつか大きな実を結ぶ。シミュレーションゲームの醍醐味
もう一つ、「A列車で行こう」から学んだ大きなことは、「コツコツ地道に続けることの面白さと大切さ」です。
ゲーム序盤は資金も少なく、できることも限られています。新しい路線を一本引くのも、新しい車両を一台購入するのも、一大決心。赤字続きの路線を前に、頭を抱えることも日常茶飯事です。
でも、そこで諦めずに、例えばダイヤを工夫して乗客数を少しでも増やしたり、駅周辺を発展させることで収益を改善したり、といった地道な努力をコツコツと続けていく。すると、ある時点から少しずつ経営が上向き始め、やがては大きな利益を生み出す地域へと成長していくのです。
この「小さな積み重ねが、やがて大きな成果に繋がる」という感覚は、シミュレーションゲームの醍醐味の一つであり、僕にとっては大きな魅力でした。最初は寂れた田舎町だった場所が、自分の手で鉄道を引き、産業を誘致し、時間をかけて育てていくことで、いつしか高層ビルが立ち並ぶ大都市へと変貌を遂げる。その過程を見守るのは、本当にワクワクする体験です。
これもまた、デザインの仕事に通じる部分があると感じています。
デザインのスキルというのは、一朝一夕で身につくものではありません。毎日少しずつでも良いデザインに触れたり、新しいツールを試してみたり、自分の作品を客観的に見直して改善点を探したり。そういった地道なインプットとアウトプットの繰り返しがあってこそ、少しずつ表現の幅が広がり、より良いデザインを生み出せるようになっていくのだと思います。
時には「こんな地味な作業、何の意味があるんだろう…」と感じることもあるかもしれません。でも、そんな一見地味な作業の一つひとつが、実は最終的な大きな目標を達成するためには欠かせないピースだったりするのです。ゲームで赤字路線を必死に立て直した経験があるからこそ、そうした地道な努力の価値を、僕は肌で理解できているのかもしれません。
楽しみながら身についた、計画性と継続力
「A列車で行こう」に夢中になっていた当時は、それが将来の仕事に役立つなんて考えもしていませんでした。ただただ、自分の手で街を創り上げていくのが面白くて、時間を忘れて没頭していただけです。
でも、今こうして振り返ってみると、あのゲームを通して、楽しみながら「計画を立てることの大切さ」や「コツコツと地道に物事を進めることの意義」を自然と学んでいたように思います。そして、その経験は、間違いなく今のデザイナーとしての僕を支える力の一つになっていると確信しています。
もし皆さんも、子供の頃に何かに夢中になった経験があるなら、それが今の自分にどんな影響を与えているのか、少し立ち止まって考えてみるのも面白いかもしれません。意外なところに、今の自分を形作る大切なヒントが隠されているかもしれませんよ。
“A列車で行こう”にハマったのは確実にプラスになっていると思う。計画の大切さの理解や、コツコツ地道が苦じゃ無いのは、シミュレーションゲームで遊んだお陰です。
X (Twitter) – May 25, 2021