この記事では、ステップ毎に顧客へのグラフィックデザインやブランディングプロジェクト、それらを含めたロゴデザインプロセスを紹介します。デザインプロジェクトは範囲・スタイル、業界によって異なりますが、プロセス自体はかなり一貫している傾向があります。
簡単に言うと、
・質問とリサーチ
・コンセプトの作成と開発
・クライアントのニーズを理解すること
これからが重要になります。今回は一つづつプロセスを追っていきましょう。
第1章 : グラフィックデザインプロセスの前準備
1.0 – クリエイティブに関する簡易計画書の作成
プロのロゴデザインプロジェクトの最初のステップは、クリエイティブに関する簡易計画書を作成することです。
クライアント自身とクライアントのニーズを理解するために色々な質問をします。ビジネスの内容、どんな業界なのか、そしてどんな問題を抱えているのかなどを理解していきます。
このプロセスの目的は、デザイナーがプロジェクトの事を理解しやすくなる事です。クライアントの事を理解していればいるほど、初期のデザインコンセプトを通じてより良いコミュニケーションができるようになります。
1.1 – クリエイティブに関する簡易計画書ってどんなもの?
クライアントとデザイナーがコミュニケーションする中で、【デザインやブランディングで何をすべきか】を記した書類です。
Inkbot Design社(記事著者)の場合、約20の質問のセットになっています。完全に回答するのには約1時間程度かかります。 しっかりと細かく回答してくれれば、コンセプトを通じてより良いコミュニケーションをとれるようになります。そのため、クライアントにはじっくり取り組んでもらう事を勧めています。
1.2 – クライアントにどんな質問をするべきか
ロゴとブランドについてのアンケートは、以下のように分けられます。
・クライアントのビジネスについて
御社はどんなビジネスをしていますか?(どんな製品を扱っていますか?)
御社は顧客のどんな問題を解決していますか?
御社のバックグラウンド、製品、サービスは競合他社とどう違いますか?
・クライアントの顧客について
御社の理想的な顧客について説明してください。
御社が顧客に伝えたい主なメッセージは何ですか?
・プロジェクトについて
御社が既にブランド(及びロゴ)を持っているなら、今それは何故機能していないのでしょうか?
刺激を受けるブランドやロゴを3つ教えてください。また、そのブランドやロゴのどういう所が一番好きですか?
5つの形容詞または単語を使って、御社のブランドの理想像を説明してください。
2.0 – リサーチと発見
アンケートの回答が完成したら、それに基づいてしっかりとしたブランディングの基盤作りを行います。
2.1 – クライアントを深く知る
クライアントが全く新しいビジネスモデルのベンチャー企業でもない限り、既存の似た事業を調べ、ブランディングの現在のポジションを明確にします。
最初の段階では話題にならなかったビジネスの側面が見つかるかもしれません。重要なポイントは深く知る事で、さらにクライアントの課題を理解する事です。
クライアントは自身のブランドが「何故」苦戦しているのか分からない場合が多いですが、現在の立ち位置を把握できれば、デザインプロセスで意味のある答えが得られるかもしれません。
2.2 – 業界を深く知る
クライアントが関わる業界のニッチについて学ぶことも重要です。競業他社の動向もチェックします。
競業他社の状況が良くなければ、その原因を理解することで、クライアントのブランディングが良くない方向へ進む事を避ける事ができます。
2.3 – プライマリーリサーチ
既存情報ではなく、独自のデータ収集を通じて課題を深く掘り下げます。当然、このリサーチには多くの労力がかかる為、低価格のロゴデザインパッケージでは、プライマリーリサーチをスキップする傾向があります。
2.4 – セカンダリーリサーチ
既存ブランドに関連する書類やステーショナリーWEBサイトなど(ブランド・コラテラル)を調べ、ブランドアイデンティティをより深く掘り下げます。
第2章 : ロゴデザイン作成のプロセス
3.0 – ロゴスケッチとブレインストーミング
素晴らしいロゴデザインはスケッチから始まります。ナプキンの落書きや丁寧にペンで描かれたイラストなど、全てのプロジェクトは紙の上から始まります。クライアントを交えて、大まかなロゴに関するブレインストーミングを行いながら、スケッチ・落書きをすることもあります。
3.1 – ムードボードと参考画像
雰囲気をまとめたムードボードやロゴデザインに関する画像は、クライアントにお願いして送ってもらう事があります。
テーマや色を言葉だけで説明するのは難しい場合があるので、可能であれば視覚的なインスピレーションを集めて送ってもらうのが良いでしょう。
3.2 – ロゴのラフスケッチ
メモ帳にささっとスケッチする段階で、魅力的なイメージや形があるかもしれません。方眼紙やドット方眼紙で、元のデザインをもう一度描けば、より洗練させる事ができます。
3.3 – グリッドでロゴを洗練させる
ロゴデザインは、グリッドを用いる事でバランスを整えたり、美しく整列させる事ができるかもしれません。ロゴマークとロゴタイプが併記される場合などであれば、有機的なロゴデザインであってもグリッドの存在は助けになります。
4.0 – コンセプトを固めていく
ラフ段階のロゴデザインをアプリケーションに移行する事でより洗練化させます。
スクリーン上で見る事で新しい視点が与えられ、スケッチ段階で見落とされていたコンセプトも観察する事ができるようになります。
4.1 – スケッチブックから、デジタル版のロゴ制作に移行する
ラフのロゴをスキャンするか、Adobe Illustratorで再制作します。
デジタル版にする事で、修正や調整、デザイン作業を素早く行えるようになります。
4.2 – ロゴの色を一旦除外して考える
ロゴデザインに色を適用する前に、モノトーンで考える必要があります。
白黒の場合にロゴがどう見えるのか?を心配しなかったばかりに、よくないロゴデザインに仕上がった事例を見かける事もあります。
「ファックス」は既にメディアとして消滅しかけていますが、優れたロゴデザインは、どんなフォーマットでも、どんな出力形式でも見栄えが良くないといけません。
4.3 – ロゴタイプ(文字部分)の作成
ロゴデザインの大まかなアイデアが得られたところで、会社名のロゴタイプについても考え始めます。
モダンなサンセリフ書体や伝統的なセリフ書体など、一般的な概念はありますが、フォントライブラリを参照する事が大切です。イメージに近いフォントをベースにして、カスタマイズする事もできます。
ちなみに特注フォントを一から作る場合は、ブランドに独自の価値を生み出すために有利に働く事がありますが、コストが増大してしまいます。
4.4 – ロゴマークとロゴタイプを組み合わせてみる
ブランドにマッチした書体を選定したら、作成したロゴマークをどう組み合わせるのが良いかチェックします。
また、選定した配色の中から、最も魅力的なものをロゴデザインに適用します。
検討できるように、いくつかの比較デザインを作成しておくのが良いでしょう。
5.0 – ロゴデザインの洗練 & プレゼンテーション
ここまでで構築した強固なロゴデザインのコンセプトを、プレゼンテーション資料にまとめます。
ユニフォームやカーラッピングにロゴを適用した場合など様々な背景、様々な縮尺で、ロゴがどのように見えるかを示します。「現実の世界」でロゴがどのように見えるのかを、視覚化するのに役立ちます。
5.1 – さらなる配色を探る
コンセプトの視覚化を助けるために、この段階でカラーバリエーションをクライアントに提示します。
色はとても主観的な要素で、色相の変化は別世界を作り出します。
カラーバリエーションで、いくつかの簡易的な代替案を示す事ができます。
5.2 – 将来を見据えた適応性を考慮する
将来ロゴが問題となってしまったり、数年度に時代遅れに見えてしまわないか、ロゴが将来どのようになっているかを考えましょう。ロゴデザインは時代を超越したものであるべきです。
5.3 – ロゴを使ったデジタルモックアップを作成する
例えば、クライアントがシャツにロゴをプリントして使用するとしたら、それが実際に日常でどのように見えるかを示します。デジタルモックアップは、ロゴが審美的にどうかというよりも、アイデアそのものを見るのに役立ちます。
デジタルモックアップのイメージはクライアントを感動させる事ができるので、しばらく時間を費やして作成します。
5.4 – クライアントへのロゴデザインプレゼンテーション
初回のロゴデザインのプレゼンテーションはPDFにエクスポートしたものを提出します。画面上で表示したり、印刷したりできます。
プロジェクトの範囲に応じて、5〜10ページ以上のPDF資料になります。
6.0 – デザインのフィードバック&相談
ロゴの第一印象は大切なものですが、ロゴの検証には少なくとも数日から1週間は費やすようにクライアントにアドバイスしています。ロゴを印刷したものを家やオフィスにランダムに貼り付けて、ブランドに遭遇した時のようにロゴに目を向けてもらいます。
信頼できる友人や家族、ブランドを理解する従業員からもフィードバックを得てもらいます。
意見が混在していても構いません。全てが改善できる方向性のヒントです。
その後、ミーティングやメールのやり取りで、フィードバック内容を提供してもらいます。
場合によっては、クライアントからもっと詳細なフィードバックを抽出するために、もっと質問を重ねる場合もあります。
6.1 – クライアントとロゴのコンセプトについて話し合う
フィードバックした内容を判断するために、時間をかけてクライアントとコンセプトについて話し合います。
クライアントのコンセプトが完璧であると分かった場合は議論に全く時間はかかりませんが、明確にする必要がある不確定な要素や疑問がある場合は数時間になるでしょう。
これもプロのグラフィックデザインの工程の一部です。
6.2 – 選択に関するアドバイスとガイダンスの提供
通常、最初のコンセプトをクライアントに提示する場では、当初から「最も強力な」アイデアを念頭に置いた上で、アイデアの固有の特性を話し合いの中でクライアントに提示する事が多いです。
6.3 – クライアントのブランドの発展像について話し合う
ブランディングは全体的に見て、審美的な面を開発する方が簡単です。
配色や書体など「外観」は変更できますが、ロゴの背景になる意義や意味を変更するのは遥かに困難です。
7.0 – コンセプトの発展
クライアントからのフィードバックと打ち合わせに基づいて、洗濯したコンセプトの発展と調整を検討します。
配色を少し変更したり、様々なレイアウトを見てみたり、検討要素としていくつかの代替世帯を提示する場合があります。
この段階まで来ると、1〜2回程度の検証で済みます。
8.0 – 完成したロゴを用いたデザインプレゼンテーション
一つのコンセプトが完全に具体化されたので、より焦点を絞ったアプローチが必要です。
第3章 : ブランディングのプロセス
9.0 – ブランド•コラテラルの展開
ロゴデザインが決定しても、クラアントにこれがゴールではないことを伝えます。
ロゴを用いたさらなるブランディングのプロセスへと展開します。前述のように、ブランド・コラテラルの典型的な例は企業のステーショナリーです。レターヘッドや名刺、マーケティング資料まで、全てロゴを用いて作成できます。
9.1 – ロゴデザインに基づいて、ブランドのステーショナリーなどのアイテムを作成する
クライアントの所在地によって、ステーショナリーなどのアイテムは規格寸法を考慮することが大切です。例えばイギリスとアメリカではレターヘッドのサイズは大きく異なります。
9.2 – ソーシャルメディアへのブランディングの拡大
ソーシャルメディアのデザインを作成することで、クライアントがソーシャルメディアを意識しているかどうか確認します。
プロフィール画像からバナーやヘッダーまで、新しいブランドアイデンティティを世界に強く発信するために、全てが完璧に見えるようにデザインします。
9.3 – その他ブランドに応じたアイテムの提供 (カーラッピングや看板など)
このグラフィックデザインのプロセスは、個別の企業のニーズに合わせて作成します。例えば全ての企業が外部に看板を必要としているわけではありません。
クライアントがジムを経営しているなら、ユニフォームでブランドを印象付ける必要があるかもしれません。また、自動車販売をしているなら、カーラッピングは効果的かもしれません。
10.0 – ロゴと各種デザインの納品とサポート
標準的な納品ファイルは、.ai (必要に応じて将来的に編集できるように)、.eps/.pdf (印刷用)、.jpeg(表示用)、および.png(WEB用の背景透過画像)で構成されてます。
.aiなどのベクター形式は、品質を損なうことなく拡大縮小できるため、自在な出力が可能です。
10.1 – 納品ファイルを書き出して整理する
プロジェクトの最終ファイルは、使用される場所が明確になるように構成しましょう。
パンフレットやチラシなどのレイアウトに関わるデザインが含まれている場合は、必要に応じてInDesignの形式も納品します。
10.2 – ブランドガイドライン文書の作成
ブランドガイドラインは、ブランドが世の中にどのように提示されるべきかの「指針」です。
WEB開発者に渡せば、WEBサイトで使用される適切なカラー値、およびコンテンツで使用されるフォントを素早く確認できます。
印刷でも同様に、Pantoneカラー値などを通じて、ドキュメントの印刷精度を確保することができます。
10.3 – Dropboxなどにバックアップをアーカイブする
ZIPファイルを恒久的にアーカイブし、デザインの処理を間違えた場合などにクライアントがバックアップを取ることができるようにします。
10.4 – クライアントが全ての納品ファイルの意味を理解し、ロゴの使用方法を説明していることを確認する
プロのロゴデザインプロセスに関するメモ
一つとして同じプロジェクトはありません。それはブランディング企業の楽しい部分の一つです。
クライアントの予算によっては、全てのステップを通過しない場合もあります。
例えば、ベンチャー企業が予算の多くの割合をブランディングに当てるのは賢明ではないかもしれません。市場調査を事前に行なっているのであれば、そのステップを飛ばして次の段階に進むことができます。
勿論プロのデザイナーに依頼することをお勧めしますが、自分でブランドアイデンティティを作成したいのであれば、上記のステップにならいつつ、テンプレートから作成することもできるでしょう。
Original Article : Professional Logo Design Process — 10 Steps for Branding Clients – Inkbot Design
※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。( Thank you, Inkbot Design! )
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