大企業では、多くの部署や拠点に多数の社員が在籍しているため、情報を正しく共有することが組織運営の重要な課題になります。その解決手段として社内報が果たす役割はとても大きいです。社内報は、経営層のメッセージを伝達するだけでなく、各現場や支店の取り組みを紹介したり、社員間のコミュニケーションを活性化させたりと、企業文化を育む大切なコミュニケーションツールとして機能します。
しかし、大企業だからこそ「社員の数が多い」「部署間の連携が複雑」「情報量が膨大」などの理由で、社内報をスムーズに企画・発行するのは簡単ではありません。そこで本記事では、「大企業の社内報作り成功のカギとは?」というテーマのもと、押さえておきたい5つのポイントを解説します。
1. 目的とコンセプトを明確にする
なぜ目的とコンセプトが重要なのか
大企業の社内報は、多様な役割を担います。経営トップからのメッセージを共有する、社員同士の事例を紹介して成功体験を広げる、組織のビジョンを浸透させるなど、その目的はさまざまです。ただし「なんでも載せればいい」という姿勢で情報を集めてしまうと、結局どの社員にとっても刺さらない内容になりがちです。
そこで、まずは目的を明確化し、社内報全体のコンセプトをしっかり定めることが大切です。「社員のモチベーション向上に寄与する」「企業の理念・ビジョンを実感として伝える」といった軸を持つことで、コンテンツを取捨選択する基準ができます。
コンセプトづくりのプロセス
コンセプトづくりでは、まずは社内アンケートやヒアリングを通じて、社員が何を求めているかを把握することが有効です。ポイントは、経営層だけではなく、現場視点や若手社員のニーズにも耳を傾けること。そこから「どういった情報提供が社員のためになるのか」「読みたくなる仕掛けは何か」などを明確にしていきます。デザイン事務所としては、コンセプトをビジュアルやレイアウトに落とし込む際、企業ブランドとの一貫性や視認性にも配慮し、全体デザインを統一することを心がけています。
2. 読者視点のデザイン・設計を徹底する
社員の目線に寄り添ったレイアウト
せっかくコンテンツが充実していても、視認性に問題があると肝心の情報が伝わりにくくなります。とくに大企業の社内報となると、各部署から集めた情報量が多くなるため、どうしても紙面(あるいはデジタルページ)がゴチャゴチャしがちです。そうならないためには、読み手の立場で「どんな構成ならスッと理解しやすいか」を徹底的に考えることが必要です。
たとえば、見出しやサブ見出し、アイキャッチ画像などをうまく活用しながら、記事の流れをガイドするようなレイアウトにすることがポイントです。文字や図解の大きさ、配色のコントラストも見やすさを左右します。読者がスムーズに目を動かせるデザインを意識することが大切です。
社内報におけるブランド・アイデンティティ
大企業の場合、コーポレートカラーやブランドガイドラインが既に存在していることが多くあります。それらに沿いつつも、社内報というメディア特有の「社員に寄り添う温かさ」を感じさせる演出が必要です。写真の選び方やイラストの活用、文字組の雰囲気など、ちょっとした工夫で随分と印象は変わります。
私たちがデザインを行う際も、ブランドガイドラインや企業のトーンを守りながら、読み手が「親しみ」を感じられる表現を探っていきます。ビジュアルだけでなく、トーン&マナーや文言の言い回しも含めて、全体のデザインを社内の“文化”として根付かせる視点が大切です。
3. 部署横断の連携と情報収集体制
情報が集まりやすい仕組みづくり
大企業の社内報は規模が大きく、各拠点・部署から膨大な情報が寄せられます。その反面、アンテナを張っていないと面白いネタや有益な取り組みを見逃してしまいがちです。そこで必要なのが、部署横断の連携や、情報を上げやすい仕組みを整備することです。
たとえば、月次や四半期ベースで開催される定例会議の際に「社内報で取り上げたい事例の紹介コーナー」を設けたり、イントラネット上に「社内報ネタ投稿フォーム」を用意しておいたりすると、部署間のコラボレーションがスムーズになります。多くの社員が「自分たちの活動を知ってほしい」と思っているものの、情報をどう出せばいいか分からないケースは少なくありません。そこをデザインしてあげるのが、編集チームや運営担当者の腕の見せどころです。
部署を超えたストーリーづくり
社内報をさらに盛り上げるには、部署を超えた“ストーリー”を意識するのも効果的です。ある部署の成功事例を別の部署が参考にして、次の成果につなげたエピソードなどがあれば、読んでいる社員にとって「自分もやってみよう」という前向きな気持ちを引き起こします。大企業ならではの多種多様な業務内容をうまく掛け合わせて、一つの物語に仕立てることで、企業全体の一体感を醸成することにもつながります。
4. タイムリーな情報発信
紙だけでなくデジタル媒体も活用
近年は、紙の社内報だけでなく、イントラネットや社内SNSなどデジタルメディアを活用してタイムリーな情報発信を行う企業が増えています。紙面で紹介するには印刷や配布の手間があるため、どうしてもリアルタイム性に欠けがちです。しかし、デジタルならプロジェクト進行中の最新情報などを素早く掲載でき、コメント欄や「いいね!」機能で社員同士の交流を育むことも可能です。
一方で、紙の社内報にはデジタルにはない特有の魅力があります。手に取ってじっくり読み込んだり、社内の共有スペースに置いておくことで“ふと手に取る”という偶発的なコミュニケーションが生まれやすいです。大企業のように多世代の社員が働く環境では、紙とデジタルの「ハイブリッド」が効果的といえます。
“更新する”仕掛けを作る
タイムリーな情報発信を続けるコツとして、「計画的な更新サイクルの設定」が挙げられます。たとえば四半期ごとの大型企画と、毎週アップされるミニコラムや現場レポートなどを組み合わせるイメージです。こうした“更新がある”仕組みが定着すると、社員が「また新しい情報が出てるかな?」と自然に足を運ぶようになります。
また、社内報の制作スケジュールを社内に共有し、「この時期までに原稿を出しておけば掲載される」という意識を浸透させておくことで、編集担当者も情報集めがスムーズになるメリットがあります。
5. 多様なコンテンツ企画で魅力を高める
社員参加型のコンテンツ
大企業では社員数が多いため、多種多様な個性やスキルを持った人材が集まっています。そうした社員一人ひとりが当事者意識を持って「自分ごと化」できるよう、参加型のコンテンツを充実させるのがおすすめです。
たとえば、写真投稿コンテストや仕事のアイデア募集、部署対抗のチャレンジ企画など、社員が主体的に参画できる仕掛けを設けると盛り上がりやすくなります。結果としてコミュニケーションの活性化につながり、会社全体の士気が高まる効果も期待できます。
プロフェッショナルに学ぶインタビュー
もう一つおすすめなのは、外部の専門家や、自社のエキスパート社員へのインタビュー企画です。大企業は外部とのつながりも強いことが多いため、講演やセミナー講師など著名な専門家に取材できる機会も豊富です。また、自社の中でも実績豊富なベテラン社員や「技術の匠」と呼ばれる存在を深掘りすることで、普段見えていなかった知見や考え方を社内全体に共有できます。
こうしたインタビュー記事は読み物としての面白さもあり、かつ社内のナレッジを蓄積していくうえでも大きな価値があります。写真や図表を交えて構成すれば、より臨場感のある記事に仕上がります。
おわりに
大企業の社内報は、情報の集約・整理や部署間連携など、手間や調整が多くなりがちな分、工夫の余地もたくさんあります。目的とコンセプトを明確にし、読者視点のデザインを徹底し、タイムリーな発信を心がけることで、より多くの社員に届き、企業文化を深める強力なメディアとなるでしょう。
また、複雑なプロセスをスムーズに進めるためには、最初の段階で制作体制をしっかり築くことが重要です。部署を超えた情報提供の仕組みや、定期的な更新サイクルなどを整えることで、“運営し続ける”という点もクリアしやすくなります。
最後に、私たちの視点から言えるのは、「デザインは企業らしさや内容の魅力を引き出すための手段である」ということです。社内報は会社の鏡のような存在。そこには社員一人ひとりの思いや会社のビジョンが詰まっています。伝えたい想いを、どうすればより正しく、魅力的に届けられるか。社内報の制作を通して、企業の未来を作り上げるお手伝いができれば嬉しいです。
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