
学者・研究者が自己の研究成果を公開し、プレゼンテーションする場である「学会」。社会的にも大きな役割を担うこの場で注目を浴びること・人間関係を築くことは、業界内での地位向上と新たな出会いに繋がる非常に大きなチャンスがあります。
そこで大切になってくるのが「自身のアピール力」。学会発表では、ポスター掲示によるプレゼンテーションをよく見かけますが、これをいかに”簡潔に・わかりやすく・目立つように”作れるかが鍵になってきます。今回は、学会におけるポスター制作のコツ・ポイントをお伝えします。
1.ポスターの情報はシンプルかつわかりやすくを基本に

学会発表で用いられるポスターの役割として一番に挙げられるのが、自身の研究成果を見ている人に「分かりやすく」伝えること。成果をできるだけたくさんアピールしたいという気持ちから、一気に多くの情報を詰め込んだポスターを作ってしまう人もいますが、学会という場ではあえて情報量を制限して簡潔でインパクトのあるものを作ることに注力した方が良いでしょう。専門的で難しい言葉や知識を噛み砕いて分かりやすく解説することで、様々な人に興味を持ってもらえる可能性が高まります。
見る側は、膨大な数のポスターからテーマや主張を把握しようとしているため、興味を持ってもらえない場合は読み流されてしまうことも少なくありません。いずれにせよ、短時間で大まかな主張が伝わるかはとても重要。ポイントを絞って訴求するシンプルで見やすいポスターは、研究の目的や成果を最も効果的に伝えることができます。伝えたい成果がたくさんあるのに・・・なんて方も、ポスターを見て興味を持った人に対し、追ってプレゼンテーションの場で直接解説すれば全く問題ありません。ゆえに、ぎっしりと情報が詰まったポスターでは目に止まりづらく、チャンスを逃す可能性があるので、大前提として「シンプルでわかりやすく」を念頭に置いてポスターの構成を考えてみて下さいね。
学会ポスターのデザインは「1m離れて読めるか」と「30cmで精読できるか」の二段階で設計する
学会やカンファレンスのポスターは、一般の広告ポスターとは読まれ方が根本的に異なります。まず会場を歩く参加者が1〜2m離れた距離から「何の研究か」を判断し(遠景での認知)、興味を持った人がポスターの前に立って30cmの距離で詳細を読み込む(近景での精読)。この二段階の読まれ方を前提にデザインする必要があります。
遠景向けには、タイトルを最大フォントサイズ(目安として40pt以上)で上部に配置し、「この研究は○○について」が1m離れても読めるようにする。近景向けには、図表やグラフを十分なサイズで配置し、本文テキストは最低でも18pt以上を確保する。
「目線の高さに最重要情報を集中させる」原則も学会ポスターに当てはまります。ポスターの上部3分の1に「タイトル・著者名・要旨」、中央に「方法・結果(図表中心)」、下部に「考察・結論・参考文献」。この上中下の構成が、学会ポスターのレイアウトの基本形です。
2.写真・グラフなどビジュアル的な効果は十分に活用しよう

ポスターは相手へ視覚的に情報を伝える手段として、より分かりやすく伝えられるというメリットがあります。そのためには、専門的な内容を文字や文章のみで表現することは避け、写真・グラフ・イラスト・装飾などを利用して作成するのが最もよいでしょう。ビジュアル的な効果はパッと見ただけで具体的なイメージが湧きやすく、理解を深めることができる重要なアイテムです。
また、そういった装飾をする際は必ず「フラットデザイン」を意識すると良さそうです。近年のWEB・アプリ等のデザインにおける主流のコンセプトであるフラットデザインとは、かつて主流だったグラデーションやシャドウを駆使した立体的なものではなく、文字通り平面的でムダな装飾がなくシンプルで洗練されたデザインのことを指します。Googleのロゴなどがいい例ですが、時代の流れによって変化した現在の価値観で、意味もなくテクスチャなど効果を多用するのはかえって古臭くなってしまうということですね。
これはカンファレンス・学会ポスターにおいても同じことが言えます。過度な装飾はノイズになってしまう可能性があります。かえって重要な情報を見づらくしてしまう危険性をはらんでおり、「読むべき場所・主張は何か」を把握するための時間は極限まで減らす努力をすべきである、という意味でもあります。また、引っかかりなく誘導するという点では、目線の動きに合わせて上から下、左から右という流れを意識して作成することも読みやすさをアップさせる秘訣。そういった細かな部分に気を配ることで、無意識下レベルで自然と多くの人に興味を持ってもらうことができます。あえて簡潔に絞った情報をビジュアル的な面と合わせてアピールすることで、より訴える力が増します。
3.配色を使い分けてメリハリのあるポスターデザインを

学会発表用のポスターにおいて、「配色」は最重要とは言えなくとも、その役割を正確に理解することでより魅力的な効果を生み出せる可能性が高い工程です。まず大切なことは、ポスター全体のイメージカラーと、特に主張したい最重要な部分に使用するポイントカラーを決めること。この2色を主軸とし、他の色はなるべく入れないようにして作成することにより情報が整理され、紙面にメリハリを出すことができます。
また、色相ではなく明度―つまり色の濃度を変えて使い分けるだけでも、色数を増やさずに見やすくする効果が生まれ、色覚多様性にも配慮したポスターデザインとなります。他にも、「反対色」という片方の色を引き立たせる効果がある色を取り入れ、より見やすさを追求するのもアリ。全体的に地味な色合いのポスターが多い中で、上手に色を使って整理されたデザインは注目度一歩前へ押し出してくれることでしょう。
4.ポスターは誰の目にも届くサイズ感を心がけて

ポスターの大きさについては、会場の広さや掲示スペースを考慮して、遠くの人まで見えるサイズ感にすることも大切です。苦労してデザインしたポスターも、人に立ち止まって読んでもらえなければ意味がありません。あらかじめ与えられたスペースの確認をしてから、ポスターの構成を決めましょう。まず大きさについてですが、文字の大きさや作業量を考慮しても、やはりA3サイズ以上での作成をおすすめします。スペースと予算に余裕があれば、A0/B0サイズの1枚刷りがサイズ・インパクト・見やすさどれをとっても文句なしに最高です。広く使えるためデザイン・レイアウトの自由度が上がり、特に強調したいポイントなども十分にスペースを確保して目立たせることができます。
余談ですが、紙での持ち運びが大変な場合、より経費はかかりますが布印刷のポスター(タペストリー)もおすすめです。紙に比べてかさばらず収納も容易なので、持ち運びが便利で現在人気が高まっている方法です。配列に関しては基本的に縦に順番に沿って配列していきますが、横長のポスターや英語のポスターなどの場合は、横に配列することもあります。ポスターの枚数に限りがある場合、サイズだけでなく、情報に優先順位をつけた上で結論や重要なポイントが効果的に伝わるよう構成を工夫してみて下さい。読み手の思考を先読みするのは容易ではありませんが、常に見る側の視点を持って作成にあたることが成功の鍵です。
まとめ
学会発表は、多くの人が注目している非常に公共性・公益性の高い場所。それは、研究者の育成・サポートという大任のために存在しているという点と、科学技術の振興と発展のために存在しているという社会的な側面があるからです。そのため、学会ポスターは、研究者の情熱を伝えるためのアイテムであり、学会発表を成功させる非常に重要な役割を担っている文化の一つと言えるでしょう。
繰り返しになりますが、ポスターは発表内容を簡潔に分かりやすく伝え、さらに注目されるように作成する努力が不可欠です。制作する際、「自分が伝えたいことは何か」「今後どうしていきたいのか」―など、改めて考え紙面にまとめる作業の中で、研究者自身も理解をより深めるきっかけにもなります。ポスター作成を通し、今一度自身の指標や目標を定める時間とタイミングを作っていって下さいね。
カンファレンス・学会ポスターの制作 について
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