アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある「Salu」は、「クラブ&キッチン」と名のつく、一風変わったレストラン。アルゼンチン産の最高のワインを楽しみながら、シェフの手ほどきを受け、アルゼンチンに伝わる郷土料理を習うことができます。友人同士で来店しても、一人で来ても、いつの間にか料理とワインを通して交流が生まれ、共に作った料理を囲んで食事をするユニークなスペースです。
この店をオープンするにあたり、ロゴデザインをはじめとするブランディングを引き受けたのは、アルゼンチンのデザイン事務所 Bunker3022。コンセプトは「アルゼンチン料理」と「コミュニティスペース」。あなたなら、このレストランをどうブランディングしますか?※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Bunker3022! )
国旗や国章をベースにしたロゴデザイン
アルゼンチンの郷土料理を学ぶことのできる「Salu」のロゴデザインを考えたとき、アルゼンチンらしさを最大限に表現できるモチーフとして選ばれたのがアルゼンチンの国旗や国章です。
南米アルゼンチンの国旗のデザインをご存知でしょうか?南アメリカに位置する国々は、熱帯気候に属する地方が多く、一年を通して暑い国がほとんど。そうした背景からか、国旗も原色に近い赤や黄色、青や緑などはっきりくっきりとした色使いが多く、国旗自体にも熱気が感じるデザインがほとんどです。そんな中、異彩を放つのがアルゼンチンの国旗。
横に三分割された旗の上下は青空を思わすようなスカイブルー。真ん中は白で中心に山吹色の太陽が描かれています。なぜ、アルゼンチンの国旗だけがこんなに爽やかな色合いなのでしょうか。かつてはアルゼンチンの国旗も他の南米諸国同様、赤と金色のくっきりとしたデザインでした。独立をかけて戦った「五月革命」といわれるスペインとの戦争で、掲げていた自軍の赤と金色の旗。よく見ると、皮肉にも敵国スペインの旗も「血と金の旗」と呼ばれる同じカラーリングの旗でした。それを契機に独立後、アルゼンチンの国旗はスカイブルーとホワイトのボーダー柄に変化を遂げます。国旗の色は、五月革命の際、民兵隊が被っていた帽子につけていた帽章の色に由来するそうです。
ロゴのブランドカラー
ロゴデザインの背景になったのは、国旗に使われているスカイブルーとホワイトの2つの色。この2色をバックに、国旗の太陽に使われている山吹色に近い金色でロゴが描かれています。
店名「SALU」はシンプルで読みやすいサンセリフ体でくっきりと表記され、南米で生まれたとされるトウモロコシをアクセントに、それを囲むように紋章のような装飾がなされています。ロゴタイプの上には、五月の太陽をモチーフにした飾り、ロゴタイプの下側には、国章に登場する握り合う手が描かれています。国章では、握られた手が支えるのは、戦争の際に使われた槍に自由を象徴する帽子が被せられていますが、SALUのロゴデザインでは、ワイングラスが握られています。ワインを片手に語らう、店のロゴマークにぴったりのユニークなあしらいですね。
ロゴデザインをフレキシブルにアレンジしたツールデザイン
出来上がったロゴマークを中心に、ショップカードやマグカップ、エプロンやWebサイトなどさまざまな販促ツールがデザインされています。注目すべきは、そのどれもが同じロゴマークを使用しているにもかかわらず、その用途に応じて適切にアレンジされているということです。
例えば、マグカップの場合、カップの縁の色と合わせ濃紺でロゴマークがプリントされ、底面にも同じような装飾を使った粋なメッセージがプリントされています。ロゴマークを中心としたビジュアル・アイデンティの統一というと、判で押したように同じロゴをプリントすればよいと思いがちですが、用途によってはフレキシブルに対応し、デザインの足し算や引き算をするのが、クライアントやユーザーに喜ばれるデザインだと言えるのでないでしょうか。
まとめ
アルゼンチンらしさや、自国への愛を存分に生かしたデザインでしたね。国旗や紋章は、言わば国のロゴマークのようなもの。どの国でも言えることですが、「その国らしさ」をあらわすにはもっともダイレクトなモチーフと言えるでしょう。ただし、単に登場させるだけなら、誰にでもできること。誰もが知っているモチーフだからこそ、そのアレンジの仕方に真価が問われるのです。彼らが行ったSALUのデザインワークは、スタイリッシュでシンプル、そしてユニーク。多くの人々に愛され、また興味を引くデザインです。
design : Bunker3022 ( Argentina )
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