どんなにできの良いポスターデザインであっても、直射日光に当たるところに飾っておけば、色あせるのは必至です。せっかくの鮮やかな発色も、時間の経過とともに効果がなくなってしまいます。主な原因は紫外線です。紫外線にはインキを退色させる作用があり、どんな印刷物であってもこれを防ぐことはかないません。
そのまま展示したりしておけば、見た目も悪くなり、商品イメージや企業イメージも悪くなるので、販促効果が下がるばかりでなく、悪い影響が出ること必至です。
したがって、人目につくところに掲示したいということがあっても、強い直射日光が当たる場所は避けるのが賢明です。万が一、どうしてもそこに掲示したいというのであれば、一枚のポスターを長い間使うのではなく、一定期間が経過したら、他のものと替えるくらいの細かな配慮をすることが大切です。
紫外線遮断ガラスや耐候性インキ
他にもいくつか対策があります。まずは、紫外線遮断ガラスです。窓に用いたり、それを使った額に納めるというものです。もう一つは、ポスターそのものに耐候性インキを使用するという方法です。耐候性インキが、紫外線の作用を緩和します。
ただし、いずれにしても緩和するということにとどまり、いわば寿命が長持ちするという効果の程度であって、絶対的ということはありません。その他にも、専用のニスなどもありますが、効果のほどは似たり寄ったりというところです。
さらなる対策として、紫外線カットフィルムの活用も考えられます。これは透明なフィルムで、窓ガラスなどに貼り付けることで紫外線の侵入を防ぐ役割を果たします。特に大きな窓や出入り口付近にポスターを展示する場合には、このフィルムが非常に効果的です。
最もシンプルな方法として、ポスターの展示場所を工夫することが考えられます。直射日光や強い照明の影響を受けやすい場所を避け、日陰や室内の適切な場所に掲示することで、退色のリスクを最小限に抑えることができます。特に、北向きの場所や建物の影になる場所は、紫外線の影響を受けにくいため、ポスターの展示に適しています。
基本的に印刷物の自然退色の根絶は難しい
残念ながらインクの退色を根絶することは難しく、直射日光をできるだけ避ける以外に良い方法はない…というのが結論になります。直射日光でなくても、インクは時ともに化学反応で退色する傾向があるので、このことにも注意が必要です。
もう一つ気を付けたいのは、反射光です。直射でなくても、地面や壁などからの光の反射があるところは、直射日光に次いだ悪い影響を与えますので、長期掲示ならそういう場所も避けるのが良いでしょう。
室内での展示の場合、照明の強さや種類にも注意が必要です。直接の日光を避けるだけでなく、強い照明のもとでの長時間の展示もインクの退色を早める可能性があります。照明を適切に調整することをおすすめします。
また、湿度も印刷物の退色や劣化に影響します。湿度が高すぎると、紙が湿気を吸収し、インクが滲む恐れがあります。逆に、湿度が低すぎると、紙が乾燥してしまい、印刷物が破れやすくなる可能性があります。適切な湿度を維持することで、印刷物の寿命を延ばすことができます。
まとめ
印刷物が長期間維持されるためには、直射日光を避けることが最も重要です。直射日光による色あせを防ぐためには、紫外線遮断ガラスを使った額縁に入れたり、耐候性インキを使用することができますが、これらの方法は完全な解決策ではありません。印刷物には寿命があるため、一定期間が経過したら、他のものと入れ替えることが重要です。
また、反射光や照明にも注意する必要があります。地面や壁などからの強い光の反射がある場所でも、直射日光に次ぐ悪影響をもたらすため、長期間掲示する場合は避けるべきです。
印刷物の自然な退色を完全に防ぐことはできませんが、上記の対策を行うことで、印刷物の寿命を延ばし、鮮やかな色合いを長く保つことができます。デザイナーとしては、クライアントにこのことを伝え、長期間印刷物が鮮明に表示されるようアドバイスすることが大切です。