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フリーランス

フリーランス。なんて魅力的な響きなんでしょう。

満員電車に揺られることもなく、好きな場所で、好きな時間に、好きな仕事をする。SNSを覗けば、そんな理想的な働き方を実現している人たちがたくさんいて、憧れの気持ちは膨らむばかり。特に、今の環境に少しでも不満や疑問を感じているなら、「早くここから抜け出して、自分の力で生きていきたい」と考えるのは、ごく自然なことだと思います。

僕自身も、そうでした。いつか自分の名前で仕事がしたい、その思いは常に心のどこかにありました。

でも、もしあなたが今、独立への焦りを感じているなら、少しだけ立ち止まってこの記事を読んでみてください。フリーランスになることを否定するつもりは全くありません。むしろ、素晴らしい選択肢の一つだと思っています。

ただ、キャリアには「流れ」のようなものがあって、一度進むと後戻りが難しい道もある。今日はそんな、「会社員経験」という一見遠回りに見える道が、未来の自分にとってどれだけ価値のある「仕込み」になるか、という話をさせてください。

 

「会社員 → フリーランス」は、実は“片道切符”かもしれない

よく、「フリーランスは大変だけど、ダメだったらまた会社員に戻ればいい」なんて声を聞きます。でも、現実はそう単純ではないかもしれません。

もちろん、不可能ではありません。でも、「会社員からフリーランスになる」のに比べて、「フリーランスから会社員になる」のは、想像以上にハードルが高い。これは、僕の周りを見ていても感じることです。なぜでしょうか。

一番の理由は、会社員として求められるスキルと、フリーランスとして求められるスキルが、根本的に異なるからです。

フリーランスは、特定の専門スキルを深く掘り下げて、その道のプロフェッショナルとして価値を提供します。いわば、武器を極限まで研ぎ澄ます職人です。一方、会社員は専門スキルももちろん必要ですが、それ以上に「組織の中で成果を出す力」が求められます。

部署の目標を理解し、チームメンバーと協力し、時には他部署と交渉する。そういった、いわば「経営者としての視点」の土台になるようなスキルセットです。一度フリーランスとして自分のスタイルを確立した人が、再び組織の論理や文化に適応するのは、簡単なことではないかもしれません。

キャリアの選択は、後戻りできない不可逆的な要素を含んでいます。だからこそ、「いつでもなれる」という言葉を鵜呑みにせず、今いる場所でしか得られないものを、意識的に手に入れておく。その視点が、とても大切だと僕は思います。

 

会社は、ビジネスの「全体像」を学べる最高の場所

会社員とビジネス

会社員として働くことでしか得られないものとは、一体何でしょうか。会社には、お金を払ってでも手に入れたい貴重な経験が沢山あります。

一人では動かせない「大きなプロジェクト」

フリーランスの仕事は、基本的に自分の実力とキャパシティの範囲内に収まります。しかし会社では、自分一人では到底動かせないような、大きな予算や多くの人が関わるプロジェクトに参加する機会があります。

僕も下っ端だった頃、訳も分からず巨大なプロジェクトの末端を担っていました。当時は目の前の作業で精一杯でしたが、今振り返ると、あの経験は本当に貴重でした。

予算はどうやって組まれ、スケジュールは誰がどう管理し、様々な立場の人がどうやって意思疎通を図っていくのか。一つのサービスが世に出るまでの、生々しいプロセス。その全体像を肌で感じられたことは、独立して自分で仕事の全体を管理するようになった今、とてつもなく役立っています。

冒険に出る前に、詳細な「地図」を手に入れるようなものです。地図があれば、自分が今どこにいて、どこへ向かうべきかを見失わずに済みます。

部署や会社を超える「コミュニケーション」という名の冒険

会社には、自分とは全く異なるミッションを持った人たちがたくさんいます。営業、企画、エンジニア、経理…。フリーランスになれば、基本的には自分と似た職種の人や、クライアントとの関わりが中心になります。

でも、会社員時代は、そうした「異文化」の人たちと、嫌でも協力しなければなりません。これが、実はすごい財産になります。

「どうしてこのデザインの意図が伝わらないんだ!」と腹を立てるのではなく、「営業の人は、クライアントのこの言葉を一番気にしているんだな」「エンジニアの人は、この部分の実装に懸念があるのか」と、相手の立場を想像する力。様々な意見を調整し、プロジェクトを前に進めるための落としどころを見つける力。

こうした泥臭いコミュニケーションの経験は、クライアントの真の課題を読み解いたり、より大きなチームで仕事を進めたりする際に、必ずあなたの武器になります。

自分では気づけない視点をくれる「厳しい指導」

理不尽なだけの叱責は論外です。でも、フリーランスになると、自分の仕事に対して本気でフィードバックをくれる人は、驚くほど少なくなります。クライアントは、成果物に対して「OK」か「NG」かを判断するだけ。よほど親しい関係でない限り、成長のために厳しいことを言ってくれる人はいません。

会社員時代、特に若いうちは、先輩や上司から厳しい指導を受けることもあるでしょう。時にはへこむし、反発したくなるかもしれません。

でも、そのフィードバックは、「あなたの基準」ではなく「プロとしての基準」を教えてくれる、またとない機会です。自分では100点だと思っていた仕事の、どこに穴があったのか。もっと良くするためには、どんな視点が必要だったのか。そうした客観的な指摘は、お金を払ってでも受ける価値のある、無形の資産です。

 

焦らず、攻めの準備を。

ここまで読んで、「じゃあ、いつ独立するのが正解なんだ」と思ったかもしれません。

もちろん、明確な答えはありません。ただ、一つの目安として僕が思うのは、「今の環境で、もう学ぶことはないな」と心から思えた時、そして「会社の看板がなくても、自分個人に価値を感じて仕事を頼んでもらえる」という確信が持てた時ではないでしょうか。

フリーランスへの憧れは、素晴らしい原動力です。その火を消す必要は全くありません。

でも、少しだけ視点を変えてみてください。今の会社員経験は、独立を諦めるための「守り」の時間ではありません。将来、あなたがフリーランスとして、より高く、より遠くへジャンプするための「攻めの準備期間」です。

今の場所でしか見られない景色を、今の場所でしか手に入らない武器を、一つでも多く手に入れておく。未来の自分を助ける賢い戦略だと思いませんか。

 

会社員は非可逆的なところがあるので、先に経験しておいた方が良いかなと思います。会社員→フリーはいつでもなれますが、フリー→会社員はそうもいかない。

X (Twitter) – Jul 28, 2023,

この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

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トミナガハルキ

グラフィックデザイナー/AMIX 代表。独学でデザインを学び、パッケージメーカー→美容系ベンチャー→家庭用品メーカーでのデザイン・広報運営を経て独立。現在は小さな事務所を拠点にASOBOAD等のサービスを運営し、ロゴ・パッケージ・広告物を中心に制作しています。著書『#ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン』は各カテゴリでベストセラーを獲得。2020年Adobe Creative Residency選出。ブログでは、10年以上の実務から学んだことや働き方のヒントを等身大の視点で発信しています。