Adobeがスマートフォン向けの本格的な画像編集アプリ「Photoshop」iPhone版をリリースしました。 これまでiPad版は存在していましたが、iPhoneで本格的なPhotoshop機能が使える公式アプリは初めてです。基本機能は無料で提供され、レイヤーやマスクといったプロ向けツールや生成AI機能も利用可能。
高度な機能を含むプレミアム版は月額サブスクリプションで提供され、既存のPhotoshopユーザーは追加料金なしで利用できます。スマホでいつでもどこでも本格的な画像編集が可能となったことで、クリエイターから大きな注目を集めています。
最新の機能追加・アップデート内容
今回のPhotoshop iPhone版は、PC版に匹敵する高度な編集機能をスマホで実現するべく「ゼロから再設計」された新アプリです。従来の簡易版「Photoshop Express」とは異なり、選択ツール、レイヤー、マスクなどPhotoshopのコア機能をそのまま搭載しています。
さらに近年話題のAdobe Fireflyによる生成AIツールも統合されており、「生成塗りつぶし（Generative Fill）」や「生成拡張（Generative Expand）」を使って画像に写っていない要素を補完・拡張することが可能です。これらの生成AI機能はPhotoshopの象徴的な新機能であり、モバイル上でもクラウド経由で利用できるようになっています。
また、ワンタップで被写体を自動選択できる「タップ選択（Tap Select）」機能や、不要な物体を瞬時に除去できるスポット修復ブラシなど、AIを活用した便利ツールも備わっています。PSD形式のサポートにも対応しており、スマホ上で無制限のレイヤーを含むPSDファイルの読み書きが可能です。高解像度の画像編集にも対応しており、画像の品質や解像度を損なうことなく保存・書き出しができる点も大きなアップデートです。
使いやすさと特徴
Photoshop iPhone版はスマートフォン向けに最適化された直感的で使いやすいインターフェースを採用しています。タッチ操作に合わせてボタン配置やメニュー構成が工夫されており、初めてPhotoshopを使うユーザーでも戸惑いにくい設計です。Adobeは本アプリの主なターゲットを「これからPhotoshopを使い始める新世代のクリエイター」と位置づけていますが、同時に従来からのPhotoshopユーザーにも配慮し、外出先でのファイル閲覧・簡易編集をスムーズに行えるようにしています。
注目すべき特徴の一つが他のAdobeアプリとの連携です。Photoshopで編集したクラウドPSDファイルを、Adobe ExpressやAdobe Frescoといったアプリで開いて続きを編集したり、逆にこれらのアプリで作成した素材をPhotoshop iPhone版で細部まで調整したりできます。さらにAdobe Lightroomとの連携も強化されており、Photoshop iPhone版からLightroomの写真に直接アクセスして高度なレタッチを行い、再びLightroomに戻すといったワークフローもシームレスに実現します。クラウドドキュメントを介してiPhone版・Web版・デスクトップ版のPhotoshop間で自動同期されるため、デバイスを問わず途切れのない編集作業が行えるのも使い勝手の大きな魅力です。
他の画像編集アプリとの違い
スマートフォン向けの画像編集アプリは他にも多数存在しますが、Photoshop iPhone版はプロ水準の編集能力で一線を画しています。例えば多くのモバイルアプリはフィルター適用や簡易な補正が中心ですが、本アプリではレイヤーを重ねた合成や精密なマスク処理までスマホ上で完結できます。PC版と同じ “コンテンツに応じた塗りつぶし” や “コピースタンプツール” などの高度な機能も利用可能で、これは他の無料アプリではなかなか真似できません。
また、Adobe Fontsの膨大なフォントライブラリ（2万種以上）にアクセスできる点も特徴です。デザインテキストを扱う際、一般的なアプリではスマホ内蔵の数種類のフォントしか使えない場合が多いですが、Photoshop iPhone版ではクラウドを通じて豊富なフォントを利用できます。
さらにAdobe Stockの無料素材数万点を直接アプリ内から検索・導入できるため、画像素材集めもスムーズです。これらのサービスとの統合はAdobe製品ならではの強みであり、単体の画像編集アプリにはない総合的なクリエイティブ環境を提供していると言えます。
利用料金とサブスクリプション情報
Photoshop iPhone版は基本機能を無料で利用できます。レイヤーやマスクといった必須機能に加え、先述のタップ選択やスポット修復ブラシ、さらにはGenerative Fill/Expandといった生成AI機能までも無料枠で提供されるのは驚きです。また、Adobe Stockの無料アセット利用や他のAdobeアプリとの連携といった機能も追加費用なしで利用可能です。
一方、高度なプレミアム機能を使いたい場合は有料の「Adobe Photoshop モバイル版 & Web版プラン」への加入が必要になります。このプランは月額1,300円（または年額11,000円）で提供され、iPhone版アプリ内で課金できます。加入すると、スマホ版ですべての機能が解放されるほか、Photoshop Web版へのアクセス権も得られます。
プレミアム版では、オブジェクト選択ツールや自動選択ツールによる精密な選択、削除ツールによる不要物の消去、高度な描画モードやカラー効果の操作、そして20,000種以上のフォント利用などが可能になります。また、PSD以外にTIFFやPNGなど多様なファイル形式の書き出し・保存オプションも追加され、より柔軟な出力が行えます。さらにテキストからの画像生成（Fireflyによる生成AIのテキストプロンプト機能）もプレミアム限定機能として利用できます。
なお、既存のPhotoshopユーザー（Creative Cloud契約者など）の場合、追加費用なしでこのモバイル版のプレミアム機能にアクセスできます。Adobeによれば、すでにPhotoshop単体プランやフォトプラン等に加入済みのAdobe IDでログインすれば、モバイル&Web版プランを新たに購入する必要はありません。 これは長年Photoshopを使ってきたプロユーザーにとって嬉しい配慮と言えるでしょう。
ユーザーの評判・評価
リリース直後から、ネット上ではPhotoshop iPhone版への驚きと歓迎の声が上がっています。「スマホでここまで本格的な編集ができるとは信じられない」といった驚嘆のコメントや、「移動中でも仕事の続きを進められて助かる」といった実用面を評価する意見が見られます。特に無料で使える範囲が広い点については「太っ腹な提供」として好意的に受け止められており、生成AIまでも無料開放した戦略が高く評価されています。
一方で、全機能を使うにはサブスク契約が必要な点については「やはり高度機能は有料か」という声もあり、ライトユーザーには月1300円のハードルを高く感じる向きもあるようです。ただしPhotoshopのブランド価値や提供される機能群を考えれば「妥当な価格」と見る専門家もおり、真に必要なユーザーは納得して購読するだろうという見方もあります。
また、一部のレビューでは「スマホの小画面では細かな作業が難しい」との指摘もありますが、その点はiPadやPC版との併用で補完できるため、大きな問題にはなっていないようです。
実際に試したユーザーからは、生成AI機能について「処理がクラウド上で行われるためインターネット接続が必要」との報告もありますが、これはデスクトップ版Photoshopでも同様であり想定内でしょう。総じて、「待望の本格Photoshopがスマホに来た」という喜びの声が多く、新しい編集体験に対する期待の高さがうかがえます。
今後の展望とAdobeの発表コメント
Adobeは今回の発表に合わせて、「次世代のクリエイターをいつでもどこでも支援したい」というビジョンを強調しました。デジタルメディア担当シニアバイスプレジデントのアシュリー・スティル氏は、
「プロのアーティストから初心者まで、誰もがこのアプリでPhotoshopの象徴的な編集機能を利用できるようになる。新しいモバイル&Web版アプリは、いつでもどこでも美しい作品を生み出せるようクリエイターの創造性を解き放つだろう」
と述べています。これはスマホ版Photoshopが新世代の創造力を引き出すツールになるとの自信の表れと言えます。
今後の展望として、Android版Photoshopの提供も予定されています。AdobeによるとAndroid版は2025年内にリリース予定で、既に先行ベータテストへの登録も受け付けています。これが実現すれば、主要スマートフォンOSの両方でPhotoshopが利用可能となり、より多くのユーザーが恩恵を受けられるでしょう。また、Photoshop Web版の機能強化も進められており、モバイル&Web版プラン加入者向けにレイヤー効果やクイック操作などが追加される予定です。
Adobeは引き続きAI技術の開発・統合にも力を注ぐ方針で、画像編集の効率化や新しい表現力の提供を図っています。業界では生成AIを巡る競争が激化していますが、Photoshopブランドに蓄積された信頼と最新技術Fireflyの融合は大きなアドバンテージです。ユーザーコミュニティからは今後のアップデートへの要望も寄せられており、「ブラシ機能のさらなる充実」「共同編集機能の実装」などが期待されています。Photoshop iPhone版の登場は、画像編集のスタイルを根本から変える一歩として注目されており、Adobe自身も「これは始まりに過ぎない」として今後の展開に意欲を示しています。
— 参照記事
- マイナビニュース – https://news.mynavi.jp/article/20250226-3136235/
- PC Watch – https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1665499.html
- ASCII.jp – https://ascii.jp/elem/000/004/253/4253843/
- GIGAZINE – https://gigazine.net/news/20250226-adobe-photoshop-for-iphone/
- Adobe公式ブログ – https://blog.adobe.com/jp/publish/2025/02/26/cc-all-new-photoshop-iphone-app-reimagines-image-editing-for-mobile-creators