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パーソナルブランディング時代〜社員の情報発信がもたらす影響


パーソナルブランディング

インターネットやSNSの普及により、個人の発信力がかつてないほど大きくなっています。とりわけ企業に属する社員が、個人としてSNSを活用するケースは年々増えています。これまでは企業アカウントを通した公式情報が主流でしたが、最近では「社員個人の発信が企業イメージに影響を与える」という現象が目立ち始めました。たとえば社員が自分の働き方や製品への想いを発信することで、企業内部のリアルな雰囲気が外部へ伝わりやすくなり、企業広報だけでは得られない親近感を生み出すこともあります。

一方で、SNS上での不適切な発言が原因で企業の評判を大きく損なうリスクもあるのが現実です。本人は何気なく投稿した内容であっても、ネット上では瞬時に拡散され、その情報が企業と直結して捉えられることが珍しくありません。こうした状況を踏まえると、今後の企業経営においては「社員のパーソナルブランディングをどう育むか」が大きなテーマになっていくと考えられます。本記事では、社員発信が企業イメージを左右する背景と、企業や社員が取るべきアプローチについて考えてみたいと思います。

 

パーソナルブランディングとは?

まず、「パーソナルブランディング」という言葉を整理しましょう。パーソナルブランディングとは、一言でいえば「個人が自分の価値や専門性を整理・発信し、自身のブランドイメージをつくっていくこと」です。SNSやブログ、イベント登壇などを通して、個人が自分の考えや実績を発信し、それが積み重なることで「この人は○○に詳しい」「○○の分野で活動している」という評価が周囲から得られるようになります。

このパーソナルブランディングは、特にSNS時代になってからますます重視されるようになりました。以前は会社の肩書きや名刺が“自分の看板”となることが多かったのですが、現在ではネット上の活動を通じた個人の知名度や好感度が、時には企業名よりも目につきやすい状況になりつつあります。転職市場やフリーランス界隈では、すでに「個人の発信力」がダイレクトに評価や仕事獲得につながるケースが多いですし、企業に所属する人もSNSでの影響力が大きければ、大きなアドバンテージを得られます。

また、社員個人が発信する内容やスタンスは、企業がメディアで伝える公式情報以上に“人間らしさ”や“等身大の想い”が感じられるため、読み手からの共感を得やすい特徴があります。そのため、多くの企業は近年、社員の自主的なSNS利用を“企業イメージ向上”の観点からも期待しているのです。

 

社員のSNS活用が与える企業へのメリット

企業広報

社員個人がSNSなどを通じて活発に情報発信を行うと、企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか。大きく分けて以下のような利点が考えられます。

企業の知名度向上とブランディング効果

社員が積極的に情報発信を行うことで、「この人がいる会社はどんなところだろう」と自然と企業に興味を持ってもらうきっかけになります。これが企業アカウントではなく個人アカウントであることで、より親しみやすく感じられる点が重要です。また専門領域に詳しい社員であれば、その分野に興味を持つ人を引き寄せる窓口となり、企業の知名度やブランドへのポジティブな印象を広げることにつながります。

採用面でのアピール

SNSで社員個人が発信する内容は、企業の公式パンフレットや採用ページとは異なり、生の声として求職者に届きます。実際に働いている人のリアルな価値観や職場の雰囲気を感じられるため、「この会社で働いてみたい」「このチームの一員になりたい」と思ってもらいやすいです。若い世代ほどSNSに慣れ親しんでおり、そういったプラットフォームから得られる情報を重視する傾向があります。

社員同士の結束とモチベーション向上

パーソナルブランディングを行っている社員同士がSNS上で互いの投稿をシェアし合ったり、コメントを送り合ったりすることで社内コミュニケーションが活性化する例もあります。オンライン上でのやりとりをきっかけにオフラインでも交流が増え、チームとしての連帯感が高まると、結果的に組織力の向上につながります。

 

リスクと課題は?

リスクと課題

企業にメリットをもたらす一方で、当然ながらリスクや課題も存在します。個人の発信力が強まるほど、企業としてコントロールしづらくなる可能性があるのも事実です。よく取り沙汰されるリスクには、次のようなものがあります。

不適切発言による企業イメージの低下

SNSは一度投稿すると、すぐにスクリーンショットや拡散によって多くの人の目に触れる可能性があります。誤った情報や差別的・暴力的な表現を含んだ投稿は、投稿主だけでなく、所属企業の信頼を損なう重大なリスクになりかねません。企業によっては「企業の公式見解と異なる」と迅速に表明する必要に迫られ、炎上対応に追われるケースもあります。

機密情報や個人情報の漏洩

社員が誤って機密情報や個人情報をSNSで明かしてしまうことで、企業に大きな損害をもたらす恐れがあります。特に情報管理に厳しい業界では、社員個人の自主的な発信が機密漏洩につながらないよう注意深いルール整備が必要です。

社員同士の温度差

パーソナルブランディングを積極的に行う社員と、SNS発信に消極的な社員との間で温度差が生まれる可能性があります。発信することで注目を集める社員に対し、「業務外で目立ちすぎでは?」などと不満や誤解が起きるケースもあります。社内における評価基準や、SNSでの活動をどこまで推奨するのかなど、組織としての方針を明確にしておく必要があるでしょう。

 

企業が取るべき対策と施策

では、こうしたメリットを最大化しつつ、リスクを最小限に抑えるために、企業や社員はどのような取り組みを行えばいいのでしょうか。

ガイドラインの整備と周知徹底

まずは、SNS利用や情報発信に関するガイドラインを社内で整備することが欠かせません。「どのような内容が投稿NGなのか」「機密情報の範囲はどこまでなのか」「万一炎上した場合の対処法」などを明文化しておくことで、社員は安心して情報発信に臨めます。ガイドラインは策定するだけでなく、社員が理解しやすいように定期的な研修やワークショップなどで事例を交えて説明すると効果的です。

社内コミュニケーションの促進

社員のパーソナルブランディングを企業として後押しするのであれば、組織内で「情報共有を活性化する仕組み」を整えることも大切です。たとえば社内SNSを導入して気軽に社内ニュースを共有したり、公式ブログへの寄稿を促したりすると、社員同士が自然と情報発信の機会を得るようになります。お互いがどんな内容を発信しているのかを把握しやすくなることで、思わぬトラブルの予防にもつながります。

パーソナルブランディング研修の導入

個人でのSNS発信が苦手な社員や、どういう方向性でアピールしていけばよいか分からない社員も少なくありません。そこで「自分の強みの見つけ方」「どのプラットフォームをどう使うか」「文章や写真の工夫」など、パーソナルブランディング全般に関する研修を行うことで、より多くの社員が適切な発信を行えるようになります。

ネガティブな声への適切な対処法

炎上やクレームが起きるのを過度に恐れるのではなく、「万一の事態に備えてどのように対処するか」をあらかじめ考えておくことも重要です。企業としての見解の発信や、社員個人へのフォロー体制を整えることで、被害拡大を防ぎつつ、長期的に社員の発信意欲を保つことができます。

 

まとめ – これからの時代に必要な視点

SNSやインターネットがあまねく浸透した現代において、「社員の個人的な発信」はもはや切り離せない存在となりました。企業がブランドイメージを高めるためには、広報部門だけでなく、社員一人ひとりが自分の言葉で企業の魅力や仕事への想いを語れるようになることが求められるかもしれません。もちろん、そこにはリスクが伴いますが、適切なガイドラインの整備や研修といったサポート体制があれば、企業にとって大きなプラス要素に変えることが可能です。

パーソナルブランディングの時代だからこそ、社員が自分らしく輝きながら企業の魅力を発信できる仕組みづくりが大切です。企業側が「自分たちのイメージをどうコントロールするか」ではなく、「社員との相乗効果でどのようにブランド価値を高めていくか」という視点を持つことが鍵になるでしょう。

今後もSNSをはじめとしたデジタルコミュニケーションの進化は続きます。社員の発信力と企業イメージを結びつけて考える機会を増やし、両者がウィンウィンの関係を築けるように整備を進めることが、これからの企業経営における重要課題と言えそうです。

 

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