この記事は海外のデザイン会社「Landor」の記事を翻訳しています。※記事掲載はクリエイティブディレクター : Jason Littleさんの許諾を得ています。
ブランド アイデンティティ プログラムの背景には何が起こっているのでしょう?それを知るために、メルボルン リブランディング プロジェクトのクリエイティブディレクター、Jason Little氏に尋ねました。
街にはなぜロゴが必要なのか
Jason Little (以下JL):世界中で行われている、人々の「時間」と「注目」を集める為の競争には、もちろん街も加わっています。私たちは常に場所に対しての先入観を持っており、それらは限られた経験やどこかで聞いたことがある話に由来してしまうことがほとんどです。ブランドアイデンティティの役割は、それらの憶測を正す手助けになることです。
街にとってのアイデンティティは、前向きで特別な関係を人々と作る手助けとなります。質の高いロゴ、マーク、シンボル(呼び名はなんでもいいのです)は、人々の精神への素晴らしいショートカットになります。これらの作品は、街に一番よくスポットライトが当たるような、感情やアイデアを引き起こす視覚的なきっかけを作ってくれます。世界の想像力を掻き立て、人々に誇りと居場所を与え、観光と投資によって景気回復にもつながります。
観光地のブランディングは製品や企業のブランディングとどう違いますか?
JL : 製品をブランディングするときは、箱の中身に注目し、特定の消費者、利益、販売品をターゲットできるようにします。巨大な多国籍企業のアイデンティティとなれば物事はもっと複雑になりますが、考え方や成功につながるコンセプト、企業モデルなどは似ています。
観光地のブランディングは、常に変化し続けるオープンシステムでなければならず、特定の方向付けをしたり居場所を確定したりする人間がいない状態でなければなりません。それでも、特別な物語、癖、約束、におい、夢など、メンバー共通の要素を見つけることはできます。これらの要素が持続可能で、特別で、魅力的なものだと認められれば、シンボルやシグナルや価値にすることができます。
観光地ブランディングにおける主な課題:
・街や国の最も強みとなる部分について正しい見方を見つけること。
・政治的、文化的、教育的な問題についての意識を広めること。
・世界中のオーディエンスのニーズを把握すること。
・この先何年にもわたって驚きとインスピレーションを与え、その観光地を区別できるような大きなアイデアを見つけること。
メルボルンの新しいロゴはどうやって思いついたのですか?これは何を表しているのですか?
JL : メルボルンは革新的な街ですから、視覚的に表すには前向きなアプローチが必要でした。クライアントとチームは街の多面的な特徴を表したいと考えていました。
・以前の街のロゴと、様々なメルボルンの施設のロゴ
控えめで真剣な部分から活気的で情熱的な部分まで、街の様々な表情を表すことが課題でした。メルボルンという街の洗練さを見せつけ、メルボルンの人々の情熱を見つけ、団結していてフレキシブルで未来的なイメージで街を埋めなければなりませんでした。
コアとなるアイデアはロゴ制作の作業のずっと前に生まれていて、それからは戦略とデザインを行ったり来たりしていました。街の企業を活気づけるにはロゴをどうやって使えばいいだろうか?管理機関の考え方に影響することはできるだろうか?ロゴは行動を誘発できるだろうか?
また、新しいロゴには政治的な問題の克服、ブランドの費用対効果の向上に加え、管理機関を団結させ、イニシアチブ、プログラム、サービス、行事、活動をまとめることも必要でした。
メルボルンの多様性は最高のコンセプトとなりました。色、形、面、構造を使ってこの特徴を表しました。もしこれが成功すれば、増え変わり続ける人々とともにメルボルンは変化し、成長し、進化し、未来のチャンスとつながることができると私たちは気づきました。
メルボルンのリブランディングプロジェクトにはロゴの他にどのような要素がありましたか?
JL : 戦略には様々なことが含まれていました。
1.デスクリサーチ、ステークホルダー【利害関係者】(内部と外部)へのインタビュー、ワークショップ、監査(コミュニケーション、行動、ブランドアーキテクチャ、競争相手)
2.核となるブランドアイデアを明確にすること――どういう意味をもつのか、何のためなのか、それをどう行うのか、どのような未来のビジョンを持っているのか。この前向きなアイデアをもとに、戦略的で統合的なブランディングプログラムを展開しました。
3.アイデンティティのデザインと作成は核となるアイデアを基に行われました。ロゴデザインに加え、それがコミュニケーション、文学、広告、スポンサー、ブランド提携パートナー、3D環境、標識において描写されるべき全ての要素が含まれました。
4.最終段階では、新しいアイデンティティの公開を手助けできるようなわかりやすいガイドラインとアートワークを展開し、導入しました。フレキシブルなロゴシステム、カラーパレット、タイポグラフィ、イメージ(写真とイラスト)、口調、デザイン原理、テンプレート、アプリケーションが含まれました。
メルボルンのアイデンティティシステムにはある程度のフレキシビリティを与え、イニシアチブや創造的な捉え方ができるような余裕を持たせました。このブランドシステムは典型的なアイデンティティデザインへの考え方に抵抗し、変化と順応というアイデアを受け入れています。
このプロジェクトの最も楽しかった部分は何ですか?
JL : このプロセスの段階一つ一つがとてもユニークで、たくさんのことを学びました。しかし、私たちがこのプロジェクトで様々な壁を乗り越えることができたのは素晴らしいパートナーシップとクライアントとの力強い協力のおかげでした。最後には皆が正しい策へとたどり着けたのだと確信していました。
最も楽しかった部分は、私たちが行った思考、ディスカッション、行動の一つ一つが完璧に融合し、ステークホルダーたちが自分たちのアイデンティティ作りのインスピレーションを得たのがわかったことです。世間の人々もそう思ってくれることを願っています。
By Jason Little
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