
すべてのデザインに全力を注ぐ必要はない?現実的な「デザインコスト」の考え方
僕はデザイナーとして、デザインが持つ力を信じています。一つのロゴ、ウェブサイトの使いやすさ、ちょっとしたバナーの色使い。それらがビジネスの印象を大きく変え、時には成長の原動力になることを知っています。
しかし、ビジネスの現場は常に理想通りに進むわけではありません。予算も時間も、無限にあるわけではないからです。
「すべてのデザインに、プロの手を入れ、完璧に仕上げるべきか?」
この問いに対して、僕はデザイナーでありながら「NO」と答えます。ビジネスの状況によっては、デザインにお金をかけない、あるいはAIや手頃な価格のサービスで済ませることも、正しい経営判断だと考えています。
デザインには「資産」になるものと「消費」されるものがある
ひとくちに「デザイン」と言っても、その役割は様々です。僕は、デザインを大きく二つの種類に分けて考えるようにしています。
一つは「資産になるデザイン」です。
企業のブランドイメージを形成し、長期的に価値を生み出し続けるデザインを指します。例えば、ロゴマーク、プロダクトの基本的なUI/UX、パッケージデザインなどがこれにあたります。一度作ったら長く使い続け、顧客の信頼や愛着を積み上げていくもの。まさにビジネスの「資産」です。
もう一つは「消費されるデザイン」です。
一時的な情報を伝えるために作られ、役割を終えたら流れていくデザインです。日々のSNS投稿画像、期間限定キャンペーンの告知バナー、社内向けの簡単な資料などが該当します。もちろん、これらも重要な役割を果たしますが、ブランドの根幹を揺るがすものではありません。
ビジネスにおいて重要なのは、この「資産」と「消費」を明確に区別することです。
資産になるデザインには、時間と予算をしっかり投資する必要があります。プロのデザイナーが深く関与し、コンセプトから細部までこだわり抜く価値があります。
一方、消費されるデザインに、資産になるデザインと同じだけの熱量とコストをかける必要があるでしょうか。僕は、必ずしもそうではないと考えています。
経営判断としてのデザイン
デザイナーという職業柄、どうしても細部にこだわり、100点満点の完璧なアウトプットを目指したくなるものです。その姿勢は大切ですが、ビジネス全体の視点から見ると、時にそれが足枷になることもあります。
予算や時間は有限です。
例えば、ある告知バナーを完璧に仕上げるために何日も費やした結果、告知のタイミングを逃してしまったらどうでしょうか。あるいは、一つのデザインに予算を使いすぎて、他の重要な施策を実行できなくなったら。それでは本末転倒です。
ビジネスにおいては、スピード感も非常に重要です。
特に、テストマーケティングの段階や、一時的な情報発信においては、100点のデザインを時間をかけて作るよりも、60点でもいいから素早く世に出す方が、結果的にビジネスを前進させることがあります。
すべてのデザインに対して完璧を求め、等しく予算と時間を割くことが、必ずしも最善の経営判断とは限りません。理想を追うことと、現実的なリソース配分の中で結果を出すこと。この二つは、冷静に分けて考える必要があります。
AIや格安サービスは「敵」ではない?どう使い分ける?
近年、デザイン生成AIの進化は目覚ましいですし、クラウドソーシングなどで手頃な価格でデザインを依頼することも容易になりました。
「デザイナーの仕事が奪われるのでは」という声も聞かれますが、僕はこれらのツールやサービスを、ビジネスを効率化するための強力な味方だと捉えています。
特に、先ほど挙げた「消費されるデザイン」においては、こうしたサービスを活用するメリットは大きいです。
- スピード感を重視したいSNS投稿
- 社内共有レベルの資料
- ブランドイメージへの影響が少ない一時的なバナー
こうしたものを、AIで素早く生成したり、格安サービスで手早く済ませたりすることは、決して「手抜き」とは言い切れません。むしろ、限られた予算を有効活用する「賢い選択」となることも多いでしょう。
デザイナーの視点から見れば、クオリティに満足できない部分もあるかもしれません。しかし、そのデザインの目的が「ブランド価値を高めること」ではなく、「情報を素早く伝えること」であるならば、その選択は合理的です。
大切なのは、プロのデザイナーが本領を発揮すべき領域と、ツールで効率化できる領域を、戦略的に使い分けることです。
投資すべきデザインをどう見極めるか
では、どこにお金をかけ、どこを効率化すればよいのでしょうか。
その判断基準は、「そのデザインがブランドの根幹に関わるかどうか」にあります。
顧客がサービスに触れ、「この会社は信頼できる」「この商品を買いたい」と感じる決定的なポイントはどこでしょうか。それが、あなたがデザインに投資すべき領域です。
- 企業の理念や世界観を表現するロゴやVI(ビジュアル・アイデンティティ)
- 顧客が直接操作し、サービスの使い心地を左右するウェブサイトやアプリのUI/UX
- 競合との差別化を図り、手に取る理由を作るパッケージ
これら「資産になるデザイン」は、ビジネスの競争力に直結します。ここにはしっかりと投資し、信頼できるパートナーと共に質の高いものを作り上げるべきです。中途半端なものでは、長期的に見てブランドを毀損するリスクさえあります。
逆に、ブランド体験の核から遠い部分であれば、コストを抑える判断も積極的に検討してよいでしょう。
デザインの力を、本当に必要な場所へ
僕たちデザイナーは、デザインの可能性を追求する一方で、ビジネスの現実もしっかりと理解しておく必要があります。デザインはあくまでビジネスの目標を達成するための手段の一つです。
全てのデザインを完璧にブラッシュアップしたい、という思いは僕にもあります。しかし、予算が無尽蔵にあるビジネスは存在しません。
デザインの力を信じているからこそ、その力をどこに集中させるべきかを冷静に見極めたい。
「資産になるデザイン」にはこだわり、時間とコストをかける。「消費されるデザイン」は、目的を見失わず、ツールも活用しながら効率的に進める。
このメリハリのある判断こそが、デザインの効果を最大化し、ビジネスを強く前に進められると僕は考えています。デザインへの投資に悩む経営者の方はもちろん、僕と同じようにデザインに関わる方々にとっても、リソースを賢く使うための一つの視点となれば嬉しいです。
デザインにお金をかける必要の無いビジネスもあるだろうし、そういう人がささっとAIのサポートや格安クラウドソーシングで済ませることは別に悪いことではなくて、ある意味正しい経営判断だと思う。
X (Twitter) – Mar 17, 2023
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