デザインの中で、ブランドのロゴや製品のキャプションなどの文字の存在はとても重要な役割を占めます。文字の置き方や、太さ、表現の仕方次第でイメージを大きく変えることができるからです。今回は文字にフォーカスして、文字遊びが活きたパッケージデザインを集めてみました。
ここで注目したいのは、パッケージデザインにおいて文字が単なる情報伝達ツールとしてとどまらず、ブランドの世界観や物語を伝える要素として機能している点です。視認性や可読性といった基本的な条件を満たすことは大前提ですが、それ以上に文字の配置やフォントが与える感覚的なインパクトが、アイテムやブランド全体の印象を大きく左右します。たとえば、太さや角度、あるいは文字同士の余白の取り方ひとつで「遊び心」や「洗練さ」「楽しさ」といったニュアンスを表現できることがあります。
近年ではSNSでの拡散力が高まったこともあり、写真映えやメッセージ性のあるパッケージが消費者の関心を集めやすくなっています。そのため、インパクトのある文字デザインが「誰かにシェアしたい」「写真に撮って残したい」と思わせる効果をもたらし、結果的にブランドの認知度を高めることにもつながるでしょう。文字が主役となったパッケージは、一度目にするだけで印象に残るため、ターゲットの記憶に刻まれやすいのです。このように文字遊びは、単なる装飾や要素の一部ではなく、商品とブランドを結びつけるストーリーを紡ぐ重要なカギとなっています。
浮遊感のあるレイアウトが特徴的なパッケージデザイン

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シンプルでスタイリッシュな化粧品のパッケージデザインです。化学的な要素を省き、植物性の素材を使用したお肌に優しいイメージをベースにしているそうです。全体をホワイトとブラックですっきりと仕上げています。同じラインのスキンケア製品が並ぶと文字が落ちているような浮いているような感覚があって面白いバランスに。
浮遊感を与えるレイアウトは、文字自体を“オブジェ”のように扱うテクニックとも言えます。視覚的には上下左右の空間を意識的に外すことで、まるで文字が空間の中でゆったりと漂っているかのような印象を作り出すのです。一方で、ベースとなる配色や全体のトーンを抑えることで、余分な要素に邪魔されず、文字の印象が際立ちます。
さらに、植物性素材を使った優しいイメージと白と黒のモノトーンの組み合わせは、一見シンプルでありながら奥深いコントラストを生み、見る側にスタイリッシュな世界観を感じさせます。消費者に「肌にも地球にも優しく、なおかつ洗練されたブランド」というメッセージが、文字の配置と色彩の統一感を通して伝わるわけです。
「#」マークが印象的なパッケージデザイン

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「#」マークが印象的なブランドのパッケージデザイン。パッケージの中心に#をドンと大きく使用し、視覚的にも含まれる意味合いも考えさせられる楽しいデザインになっています。記号の形がシンプルなので、どの媒体に展開してもイメージを損ねずスタイリッシュに仕上がります。
「#」はSNS上でハッシュタグとして使われる記号としても定着していますが、そもそも記号としての形が非常にシンプルで汎用性が高いのが魅力。パッケージのど真ん中に配置すれば、アイコニックなモチーフとしてブランドの象徴にもなり得ます。加えて、ハッシュタグの“話題を集める”イメージが自然と想起されるため、SNSで拡散されやすいデザインとなるのも現代的です。
視覚的に目を引き、かつ文化的・社会的な文脈で意味を持たせられる文字や記号を取り入れるのは、ブランディングとしても非常に有効なアプローチです。あえて余白をうまく使い、記号のみを大きく配置することでインパクトを与えながら、他の要素はシンプルに仕上げるというバランス感覚は、ブランド全体の個性と方向性を強く打ち出しているといえます。
シンプルで分かりやすいスキンケア製品のパッケージデザイン

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パッケージに大胆に大きくレイアウトされた数字が反対を向いています。ブランドや説明文はすっきりと小さくまとめて、数字による視覚的な差別化をうまく使っていますよね。スキンケアは使う順番が大事なので、消費者に向けて「視覚的な分かりやすさ」、その中でも「おしゃれ感を無くさない」という二つのポイントをクリアしているデザインだと感じます。
スキンケア製品はシリーズやラインごとに複数の工程があることが多く、どのアイテムをどの段階で使えばいいかをわかりやすく示すことは、ユーザーにとって非常に重要です。しかし単純に数字を入れるだけでは味気なくなりがちで、ブランド独自の世界観や差別化を図るのが難しい場面もあるでしょう。ここでは数字を大胆に配置すると同時に、反対に向けるといった“意外性”を持たせることで、消費者の印象に強く残るデザインへと昇華させています。
また、ブランド名や説明文を最小限にまとめることで、数字にフォーカスさせると同時に、洗練されたムードを損なわない工夫が秀逸です。わかりやすいだけでなく、おしゃれなパッケージを求める現代の消費者に対して「これはセンスの良いブランドだ」と思わせる効果も狙えるため、機能性とデザイン性の両立が見事に実現されているといえるでしょう。
NYのカフェスタンドのブランディングデザイン

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ピンクのブランドカラーに赤でアクセントを加えたカフェスタンドのブランディングアイテム。ショップカードやマッチ、看板やメニューなどに展開しています。四隅にCAFEの文字を散らし、余白が楽しいデザインに仕上がっています。細かすぎて見えそうで見えないメニュー表に描かれた点のデザインは、よく見るとなんと文字が書いてありました。細かいところまでこだわりがあって見応えがあります。
カフェスタンドのように実店舗でのビジュアルコミュニケーションが重要な場では、ブランドカラーやロゴタイプのほか、店内サインやメニュー表も含めたトータルの世界観づくりが求められます。特にニューヨークのような都会では、消費者は日々多くの看板や広告を目にするため、いかに「足を止めてもらえるか」が大きな課題です。そこで、ピンクと赤のような印象的な配色で目を引きつつ、四隅に散りばめた文字や細かいパターンの遊びを入れることで、「思わず手に取って見たくなる」仕掛けを生み出しています。
さらに、「よく見ると文字が書いてある」という発見のプロセスが、消費者に楽しさとブランドへの愛着を感じさせるポイントになっています。来店客が「ここにはどんなこだわりが隠されているんだろう?」と興味を持ってくれると、リピートや口コミにもつながりやすくなるわけです。デザインがもたらすワクワク感やストーリー性を、店舗全体で包括的に提供することで、ブランド体験としての価値を高めている好例といえるでしょう。
まとめ
さりげなくレイアウトされているようなデザインでもフォントの色味や太さ、配置に意味が含まれているのが面白いですよね。今回は、文字遊びが活きたパッケージデザインをご紹介しました。
文字を使ったデザインは、単に見た目のおしゃれさを演出するだけでなく、ブランドのメッセージや製品の特徴をユーザーに訴求するうえで非常に効果的です。また、パッケージ自体がSNSで拡散される時代だからこそ、インパクトある文字使いがブランドの顔となり得るのです。
一方で、文字は間違った使い方をすると必要以上に主張しすぎたり、視認性を損なってユーザーに混乱を与えたりすることもあります。だからこそ、細部に至るまでのバランスや意味づけ、色彩のコントラストなどを考慮する必要があります。今回取り上げた事例のように、文字そのものを遊び心あるデザイン要素として取り入れ、全体のストーリーと連動させることで、より印象的かつ記憶に残るパッケージへと仕上げることができるのです。
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