色彩や造形をより美しく見せるために、アートやデザインの世界では古くからいろいろな技法が創り出されてきました。塗装技術や印刷技法、染色技法なども時代の移り変わりとともに様々な変化を遂げてきましたが、昔ながらの技術が現代のデザインと出会うことで、新鮮さが生まれることも多くあります。今回は、そんな伝統技法を現代に昇華させたデザインの作品例をご紹介します。
「にじみ絵」を用いた印刷物のデザイン
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このデザインには、「にじみ絵」の技法が使われています。「にじみ絵」とは、濡れた紙に水で溶かした絵の具を乗せて描く方法で、絵の具の濃さや水分量によってにじむ範囲が変化し、自然に現れた模様によってとても美しい作品が生まれます。紙や布を折って色水につける「折り染め」という染色技法としても古くから用いられてきました。こちらのポスターや冊子でも、絵の具のにじみによってできた淡い色のグラデーションがなんとも言えない絶妙な色彩を生み出しています。そして、すっきりとまとまった文字と余白とのバランスも相成って、とてもスタイリッシュなデザインに仕上がっています。
アールデコ調の模様と「エッチング」風の印刷が素敵なインビテーションカード
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こちらは「エッチング」の技法を施した銅板のようなイメージの結婚式のインビテーションカードです。「エッチング」とは、腐食を意味する言葉です。銅板の表面を描画用の防食剤で覆い、ニードルで防食剤を削るように描画し、腐食液につけるとニードルで削った部分が腐食されて線の部分が凹み、模様になるという技法で、銅版画にも用いられています。このインビテーションカードも、箔押し印刷の部分がまるでエッチングを使って作られたような重厚感のあるデザインに仕上がっています。そしてもう一つの伝統的技法であるアールデコ調の模様が使われていることも特徴です。
「アールデコ」とは、1910年代から30年代にかけて、パリを中心に西欧で栄えた装飾様式です。単純で直線的な模様が特徴で、現代都市生活に馴染みやすく、多くの市民にも親しまれてきました。このカードでは、二つの伝統技術がうまく融合し、結婚式にぴったりのとても厳かな雰囲気を作り出しています。
「マーブリング」を用いたポスターデザイン
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こちらは「マーブリング」の技法を用いたデザインです。「マーブリング」とは、水よりも比重の軽い絵の具や墨汁を水面に垂らしつくられた模様を、紙などに染め取る技法のことです。墨流しとも呼ばれていて、15世紀ごろの中央アジアからトルコに伝わった技法です。模様が大理石(marble)に似ていることからマーブリングと呼ばれています。偶然にできる形や色の重なりを利用して、とても神秘的な模様が生まれます。こちらのポスターでは、ハートの形の中にマーブリングの技法が使われていて、よく見ると赤やピンク、黄色、藍色などたくさんの色が混ざり合っているのがわかり、可愛さの中にも複雑な奥深さも感じられるデザインになっています。ゴシック体のどっしりとした安定感のある文字と重ねることで、歪みのある模様が強調されて画面全体のインパクトが生まれています。
現代のデザインの中にも、古くから使われていた伝統的な技術が取り入れられ、より良いものに仕上がっています。古くから人々の生活に溶け込んできた塗装や染色、印刷の技法は、現代の人々にとってもどことなく安心感を感じられるものです。「古きをたずねて新しきを知る」というように、デザインの制作で新しいアイディアが浮かばないときや、ワンランク上のデザインを目指す場合、一度昔ながらの技術や様式にも目を向けてみると、新鮮なインスピレーションが生まれるかもしれませんね。
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