読みやすさや視認性、視線誘導などさまざまな点で重要となってくるのが余白。余白を広くするか狭くするかで、当然ながら全体のイメージはかなり変わります。今回は、余白の取り方が印象的なグラフィックデザインをご紹介していきます。
余白は、しばしば「ネガティブスペース」と呼ばれることもあり、デザインの要素を際立たせたり、情報の整理を助けたりするうえで非常に大切な要素です。文字や図形、写真などが画面いっぱいに配置されていると、華やかな一方で視線が散漫になりやすいというデメリットもあります。一方で余白を大きく取ったデザインは、シンプルで落ち着いた印象を与えながら、見せたい部分に視線を集中させる効果があります。どのくらい余白を取るかは、その作品のコンセプトや伝えたい内容によっても異なるため、クリエイターの意図を明確にしてから取り組むことが重要です。
写真の動きを生かす優れた余白

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日常の風景を切り取ったようなナチュラルな写真を背景に、太めの力強いタイポグラフィーが映えます。右側を大きく開けつつ背景の人物を画面から少し外れるようにすることで、人物の動きが際立ちますね。こういったシンプルなデザインこそ、余白の取り方によって印象を大きく変えることができます。
写真の持つストーリー性を余白が後押しする好例ともいえるでしょう。視覚要素が少なめのところへ視線が流れるため、自然と人物の動きに視点が集まり、「いままさに動き出した瞬間」を強調することができます。実際、プロのフォトグラファーやデザイナーの間では、要素の配置だけでなく「余白の配置」にも非常に気を配っています。余白に生まれる空間が、デザインのリズムや動きに奥行きを与えるのです。こうした視線誘導はチラシやポスター、ウェブデザインでも共通して活用できるテクニックとなります。
グラフィックの余白で空を表現

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見辛いようにも感じられる背景の白と黄色は、縦長でスッキリとしながらも可愛らしさを感じるフォントが際立つように考えられた配色なのでしょう。上部分の余白が、空の静けさや広さを静かに表現しているように感じられます。
デザインの一部として「空」を連想させるアプローチは、見る人に余裕や開放感を与えます。特に上部の余白は、空間に「呼吸」や「余白」がある状態を暗示し、視覚的な広がりを与えてくれます。人間は文字やグラフィックが画面を埋め尽くしていると圧迫感を覚えがちですが、余白を上部に残すことで視点の逃げ場をつくり、全体を軽やかに見せることが可能です。これはパンフレットやポスターなどの印刷物だけでなく、ウェブやアプリのデザインなどでも同様に応用できる考え方です。
余裕を感じる余白使い

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2019年の流行色であるLiving Coralが目を引きます。アルファベットから線が伸びている様は、たくさんの風船のようにも見えますね。線が多く賑やかな印象になりそうなデザインですが、上部分の余白を大きく取ることでスッキリと余裕を感じさせるデザインになっています。また、下から上へ放射状に描かれていることで、余白の広がりをさらに強調している部分もポイント。
放射状の線は動きやエネルギーを表現しやすいですが、一歩間違えると情報が詰め込みすぎになり、視線が落ち着く場所がなくなるリスクもあります。そこで上部にしっかりと余白を確保することで、デザインを整理し、要素が多くとも「雑然としない」印象をつくり上げられています。また、このように一方の領域を大胆に空けることで、色や線の存在感がより一層引き立つため、タイトルやアイキャッチとなるテキストが強く目に入ってきます。デザイン全体のバランスを考えるとき、メリハリとしての余白をどこに配置するかは、完成度を左右する大きなポイントになるのです。
逆に余白を減らした賑やかなデザイン

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外側の余白はほぼ皆無で、賑やかな印象のデザイン。ここまで余白がないとごちゃっとしそうですが、不思議と統一感があります。同じものを大きさや向きを変えて配置しているので、違うモチーフを配置するものより統一感が生まれやすいのでしょうか。
余白が少ないデザインでも、モチーフや色数を統一し、配置に一定のルールを持たせることで「不思議なまとまり感」を演出することができます。さらに、要素を大胆に重ねたり、規則的なリズムで配置するなど、デザイナーの狙いが明確に見えると、余白のなさが逆にエネルギッシュな印象を生みます。音楽の世界でも「間」が重要とよく言われますが、グラフィックデザインでも同じです。余白を取るか取らないかといった選択だけでなく、「どう見せたいのか」「どう感じさせたいのか」を意識しながら、要素を取捨選択する力が問われるのです。
まとめ
一口に余白といっても、さまざまな取り方があります。全体の印象をかなり左右するため難しい部分もありますが、使いこなせるようにしていきましょう。
余白の扱いを極めるためには、まずはデザインの目的をはっきりと定義し、それに合わせてスペースの確保や視線誘導を意識することが大切です。ビジネスやブランディングの場面では、余白から感じられる「洗練」「高級感」「快適さ」などの印象が、ユーザーや顧客の心理に直接働きかけることもしばしばあります。逆に、勢いを表現したい場合や若々しさ、ポップさを前面に出したい場合には、要素を大胆に詰め込んで活気あふれるビジュアルを狙うなど、余白がもたらす効果を逆手にとるアプローチも面白いでしょう。
最終的には「引き算」と「足し算」のバランスを見極めながら、デザインの意図をより確実に伝えるための工夫を重ねてみてください。そうすることで、より魅力的なものへと仕上がっていくはずです。
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