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メゾチントについて:印刷史のなるほど雑学05

メゾチントとは?仕組み・特徴・歴史(銅版画 / 凹版)をわかりやすく解説


メゾチントについて:印刷史のなるほど雑学05

メゾチントとは?

銅版画の一種であるメゾチントは階調表現にすぐれています。銅板の表面に傷をつけてインクを詰め込み、それを紙に転写します。くぼんだ部分のインクが印刷されるので凹版(おうはん)印刷に分類されます。17世紀にオランダで発明されたメゾチントは、明暗の調子を豊かに表現できるため、絵画を複製する手段として活用されていました。

 

「目立て」で黒い面を作ることから始める制作工程

銅板の表面に細かな傷をつけると「ささくれ(burr)」が生じます。このささくれのおかげで版面につけたインクがふき取られずに残りります。紙に刷ると傷つけた部分のインクが転写されるという仕組みです。

メゾチントのロッカー

メゾチントでは、最初に「目立て」をおこないます。ロッカー(rocker)と呼ばれる細かな金属の刃を持つヘラ状道具を揺らしながら全面をささくれ立たせます。一方向での目立てを終えると、さらにタテ・ヨコ・斜めなどいくつかの角度で繰り返してまんべんなく目立てします。この状態で版面にインクをつけて紙に転写するとまっ黒い面が印刷されます。

ロッカーはベルソー(berceau)とも呼ばれますが、これはフランス語で「ゆりかご」という意味もあります。ロッカー以外にルーレット(roulette)という歯車のコマのついた器具なども使われます。

目立ての「ささくれ」は「まくれ」といわれることもあります。ちなみに、金属や樹脂などを加工したときに発生する不要な突起を「バリ」といいますが、これは英語の「burr」(バー)が由来です。プラモデルやフィギュアの「バリ取り」ということばを聞いたことがあるかもしれません。

 

ささくれを削ったりつぶしたりして描画する

目立てをした状態では全面が真っ黒に印刷されます。ささくれを削ったりつぶしたりすると、その部分にはインクがとどまらないため、紙が白く残ります。つまりメゾチントは、インクをつけたくない部分のささくれをコントロールすることで描画する方法です。

ささくれのコントロールには、主にスクレーパー(scraper)とバニッシャー(burnisher)という道具が使われます。スクレーパーは、ささくれを削り取るときに使い、バニッシャーは、ささくれをつぶしてならすときに使います。どちらも使うための特別な技術は必要ありません。鉛筆など一般的な筆記用具と同じような感覚で描けます。

表現したいイメージをスクレーパーやバニッシャーで版面に直接描いていくことから、メゾチントは直刻法に分類されます。

 

メゾチントは微妙な階調表現が可能

メゾチント作例

・Early mezzotint by Wallerant Vaillant

メゾチント(mezzotint)はイタリア語の「mezzo(中間)」と「tinto(トーン)」に由来し、英語の「halftone(ハーフトーン)」にあたることばです。自在な階調表現が簡単におこなえることからこの名前になりました。

スクレーパーで目立てを完全に削り取れば、白と黒のコントラストがはっきりつきますが、ささくれを少し残すように削った部分には少量のインクが残ります。浅く削ればインクは濃くなり、深く削れば薄くなります。バニッシャーでささくれをならすときにもつぶし具合を調整できます。

特に、深い暗部を豊かに表現できることから、フランス語ではメゾチントをマニエール・ノワール(manière noire)、つまり「黒の技法」と呼びます。

 

17世紀中ごろにオランダで生まれ英国で発達

メゾチントの作例

・初めてのメゾチント作品 by Ludwig von Siegen, 1642.

アマチュア版画家だったドイツ人士官 ルートヴィッヒ・フォン・ジーゲン(Ludwig von Siegen)が17世紀がオランダでメゾチント技法を考案しました。ジーゲンが1642年に初めて制作したメゾチント作品は「light to dark(明から暗)」方式で制作されています。これはのちに一般的になった目立てから始める「dark to light(暗から明)」方式の逆です。目立てをせずに暗くしたい部分を描画していくやり方でした。

メゾチントはすぐれた技法としてすぐに広まります。特にプリンス・ルーパートが持ち込んだ英国では肖像画や風景画の技法として発展しました。絵画作品の複製や書物の挿絵にも使われました。19世紀初頭に写真が発明されるまで、写実的な表現手法として盛んに利用されました。18世紀にはドイツ人版画家クリストフ・ル・ブロン(Jacob Christoph Le Blon)によって3色刷りと4色刷りによるカラーメゾチントも考案されています。このときの4色刷りは現代のCMYK方式に似たRYBK方式でした。

20世紀にメゾチントを復興させた長谷川潔と浜口陽三

リトグラフや写真製版の登場によって表舞台から一時姿を消したメゾチントですが、20世紀初頭にフランスに渡った長谷川潔が復活させました。これによって創作版画のひとつの技法として再認識されるようになります。

また、浜口陽三は1955年ごろからカラーメゾチントという技法を開発したことで世界に知られています。赤・黄・青・黒(RYBK)の4色を重ね塗りすることで独特の色彩表現を可能にしました。


【参考資料】
Mezzotint – Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Mezzotint)
Mezzotint | printmaking | Britannica(https://www.britannica.com/technology/mezzotint)
The Printed Image in the West: Mezzotint | Essay | The Metropolitan Museum of Art | Heilbrunn Timeline of Art History(https://www.metmuseum.org/toah/hd/mztn/hd_mztn.htm)
武蔵野美術大学 造形ファイル、メゾチント – めぞちんと(http://zokeifile.musabi.ac.jp/メゾチント/)
女子美術大学 版画研究室、銅版画、メゾチント(http://www.joshibi.net/hanga/curriculum/intaglio/mezzotint.html)

 

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この記事について

執筆: ASOBOAD編集部

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