Skip links
食品関連の広告デザインについて

見えない「おいしさ」をどう見せる?食品広告デザインに学ぶ、断面のアイデア


食品関連の広告デザインについて

レストランで隣の席に運ばれてきた料理から、ふわりと良い香りがして、思わず自分のメニューを注文したくなる。そんな経験はありませんか?

食べ物の魅力は、味や香り、食感といった五感で感じる部分にあります。しかし、広告デザインの世界では、その魅力をたった一枚の静止画や短い映像で、視覚情報だけで伝えなければなりません。これは、私たちデザイナーにとって、非常にクリエイティブで、同時にとても難しい挑戦です。

特に、加工された食品やドリンクは、原材料の姿をとどめていません。ケチャップがどんなトマトから作られたのか、ジュースにどれだけ果物の恵みが詰まっているのか。その「おいしさの本質」や「素材へのこだわり」は、パッケージの外からは見えません。

この記事では、そんな「見えない価値」を可視化する、一つの秀逸なアイデアに焦点を当てます。それは「断面を見せる」という表現手法です。

一見シンプルながら、この手法は消費者の心に強く訴えかける力を持っています。なぜ私たちは「断面」に惹きつけられるのでしょうか?この記事では、世界中のクリエイティブな食品広告を例に、そのデザインの裏側にある意図を紐解き、アイデアの核心に迫ります。

広告デザインの作成料金について

 

なぜ「断面」のビジュアルは人の心を動かすのか?

カット断面

そもそも、なぜ「断面を見せる」という手法が食品広告においてこれほど効果的なのでしょうか。そこには、いくつかの心理的なフックと、デザイン的な狙いが隠されています。

情報の可視化による「信頼」の獲得

普段は見ることのできない製品の内部をあえて見せることは、「何も隠していることはありません」という作り手の誠実なメッセージになります。素材そのものを見せることで、製品の品質に対する自信を雄弁に物語り、消費者はそこに「信頼」を感じ取るのです。

意外性による「興味」の喚起

果物や野菜の断面は見慣れていますが、ケチャップのボトルやジュースの缶がスライスされているビジュアルは、日常ではありえません。この「ありえない光景」は、見る人に強いインパクトと意外性を与え、広告への注意を引きつけます。SNSで思わずシェアしたくなるような「おもしろさ」も、この意外性から生まれます。

シズル感の最大化

「シズル感」とは、食欲をそそる瑞々しさやジューシーさのこと。断面を見せることで、果物から滴る果汁、野菜のハリのある繊維、ぎっしり詰まった具材といったディテールを鮮明に描写できます。この生々しいまでの表現が、見る人の想像力を掻き立て、「おいしそう!」という直感的な感情を呼び覚ますのです。

これらの要素が複合的に作用することで、「断面」のビジュアルは単なるアイデアに留まらず、ブランドのメッセージを伝え、消費者の心を動かす強力なコミュニケーションツールとなるのです。

それでは、具体的な広告事例を見ながら、この「断面のアイデア」がどのように活かされているのかを、さらに深く分析していきましょう。(※紹介する広告デザインは当サイトの制作事例ではありません)

 

【事例1】素材への自信をケチャップボトルで表現したハインツ

広告デザイン作例を見る (via Pinterest)

トマトの輪切りが積み重なり、ハインツのケチャップボトルの形を成しているこの広告。シンプルながら、非常に計算されたビジュアルです。この広告が伝えたいメッセージは、コピー(タグライン)に集約されています。

“No one grows ketchup like Heinz.”
(誰もハインツのようにケチャップを育てられない)

ここで使われている “grow”(育てる)という動詞が、この広告の秀逸さを物語っています。通常、ケチャップは “make”(作る)ものですが、あえて “grow” という言葉を選ぶことで、「私たちのケチャップは、まるで畑でトマトを育てるように、愛情と手間をかけて作られている」というブランドの哲学を表現しているのです。

そして、その哲学を裏付けるのが、トマトの断面だけで作られたボトルのビジュアルです。着色料や余計な添加物を一切使わず、素材そのものでできているという「純粋性」と「品質への自信」が、この一枚の絵から痛いほど伝わってきます。

1869年創業のハインツは、こうした優れたマーケティングで知られています。有名なのは、瓶を逆さにしてもなかなかケチャップが落ちてこないことを逆手にとり、「他社製品よりも濃厚である」とアピールした比較CMです。消費者の小さな不満を、品質の証へと転換させた見事な戦略でした。この広告もまた、ハインツのブランドストーリーを力強く補強する、歴史に残るクリエイティブの一つと言えるでしょう。

 

【事例2】缶の断面から果実がほとばしるBai社の炭酸飲料

広告デザイン作例を見る (via Pinterest)

次に紹介するのは、米国の飲料メーカーBai社が展開する低カロリー炭酸飲料の広告です。缶を大胆にスライスすると、中から現れるのは液体ではなく、ぎっしりと詰まった果物の断面。ほとばしる果汁の飛沫や、リアルな果肉の破片が、強烈なシズル感を生み出しています。

この広告の狙いは、ハインツの例と同様に「自然な素材」を訴求することです。健康志向の高まりを背景に、多くの消費者は人工甘味料や添加物を避ける傾向にあります。この広告は、そんな消費者のインサイト(深層心理)を的確に捉え、「私たちのドリンクは、果物そのもののおいしさが詰まっていますよ」というメッセージを、理屈ではなく感覚で伝えています。

デザイン的に注目したいのは、ライティング(照明)の巧みさです。缶や果物の表面に当たった光がハイライトとなり、立体感と瑞々しさを強調しています。また、背景をシンプルにすることで、主役である缶と果物の存在感を最大限に引き出している点も、計算された構成と言えるでしょう。この一枚のビジュアルで、「低カロリーなのに、おいしくて満足感がある」という製品の価値を見事に表現しています。

 

【事例3】黒板アートが映えるフレッシュジュースの広告

広告デザイン作例を見る (via Pinterest)

こちらは、黒板を背景に、3種類のフレッシュジュースが並んだ広告です。それぞれのカップの断面からは、ジュースの原材料であるお茶の葉、野菜、ベリーが顔をのぞかせています。

このデザインがユニークなのは、黒板にチョークで描いたようなイラストやタイポグラフィを組み合わせている点です。この手書きの質感が、オーガニックでナチュラルな雰囲気を醸し出し、製品の持つ「手作り感」や「こだわり」を演出しています。

クールでスタイリッシュな黒の背景と、温かみのあるチョークアート。そして、鮮やかなジュースと原材料の断面。これらの要素が絶妙なバランスでレイアウトされることで、「健康的でおしゃれなライフスタイル」を提案する、カフェのメニューボードのような魅力的な世界観が作られています。ただ製品を並べるだけでなく、背景やあしらいを工夫することで、ブランドが持つ雰囲気を伝える好例です。

 

【事例4】素材の組み合わせをアートに昇華したイベント広告

広告デザイン作例を見る (via Pinterest)

毎年開催されるブランチイベントの広告。これは、これまでの作例とは少し異なるアプローチで「断面」を捉えています。料理そのものではなく、使われる食材を美しく配置し、タイポグラフィと融合させることで、まるで一枚のアート作品のようなビジュアルに仕上げています。

半分にカットされたアボカド、スライスされたパン、新鮮な卵や野菜。これらの食材が、幾何学的なパターンを描くようにリズミカルに配置されています。このデザインは、単に「おいしそう」と感じさせるだけでなく、「洗練された食体験」への期待感を高めます。

爽やかで健康的な色使いと、ミニマルで整理されたレイアウトは、食に対する意識が高いターゲット層に響くデザインです。「ここで提供される料理は、素材の一つ一つにこだわり、丁寧に作られているに違いない」——そんな作り手の美学や哲学までもが伝わってくるようです。

 

【事例5】素材がそのまま寿司になる、大胆なビジュアルアイデア

広告デザイン作例を見る (via Pinterest)

最後に紹介するのは、アボカド、エビ、ハマチを大胆にも真っ二つに切断し、その断面がそのまま巻き寿司になっているという、非常にインパクトの強いビジュアルです。おそらく、英国を拠点とする日本食レストランチェーン「YO! Sushi」にインスパイアされた習作(スタディ)と考えられます。

このアイデアの根底にあるのは、「私たちの寿司は、ネタが命。素材そのもののおいしさを味わってほしい」という強いメッセージです。シャリや海苔といった他の要素を削ぎ落とし、ネタの断面を寿司に見立てることで、「新鮮さ」と「素材への絶対的な自信」をこれ以上ないほどシンプルに表現しています。

アイデアとしては非常にパワフルですが、もし私たちがこのデザインをさらに良くするとしたら、もう少しシズル感を加えるかもしれません。例えば、ハマチの身に光沢感を足して脂の乗りを表現したり、エビのプリプリとした質感を強調したりすることで、より一層食欲を刺激するビジュアルに昇華できるでしょう。

 

まとめ – アイデアは「新しい視点」から生まれる

アボカド断面

これまで見てきたように、「断面を見せる」という一つのアイデアも、表現方法によって全く異なるメッセージを伝えることができます。

  • ハインツやBai社のように、製品の「純粋性」や「自然由来」を訴える。
  • フレッシュジュースの広告のように、手作り感やオーガニックな「世界観」を演出する。
  • ブランチイベントの広告のように、食材をアートとして捉え、「体験価値」への期待感を高める。

これらの広告に共通しているのは、「普段は見えないものを見せる」という視点の転換です。私たちは普段、ケチャップのボトルの中身や、缶ジュースの原材料に思いを馳せることはありません。その当たり前を壊し、「もし、この中身が見えたら?」という新しい視点を提供することで、人々の心を掴むクリエイティブが生まれるのです。

これは、食品広告に限った話ではありません。製品の内部構造を見せることで技術力をアピールしたり、サービスの提供プロセスを可視化することで信頼性を伝えたりと、この「断面のアイデア」は様々な分野に応用できるはずです。

デザインの仕事は、単に見た目を美しく整えることではありません。クライアントが持つ製品やサービスへの「こだわり」や「哲学」という見えない価値を、生活者にも伝わる「言葉」や「絵」に翻訳していくことです。「断面」という切り口は、そのための強力な武器の一つなのです。

次にあなたが何かをデザインするとき、あるいは街で広告を見かけたとき、「その表面の奥には、どんな価値が隠されているだろう?」と考えてみてください。きっと、新しいアイデアの扉が開くはずです。

広告デザインの外注費について

 


▶︎ デザイン制作依頼・料金を知りたい方はこちら / ▶︎ デザイン制作実績を見る / ▶︎ 海外デザインの紹介記事一覧 / ▶︎ デザイン制作のガイド・媒体の特徴
最後までお読みいただきありがとうございます。共感する点・面白いと感じる点等がありましたら、【いいね!】【シェア】いただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介は大歓迎です!(掲載情報や画像等のコンテンツは、当サイトまたは画像制作者等の第三者が権利を所有しています。転載はご遠慮ください。)

この記事について

執筆: ASOBOAD編集部

デザインの潮流や作例調査をもとに記事制作・編集を行っています。

運営: ASOBOAD(アソボアド)

デザイン事務所AMIXが運営するオンライン完結型のデザインサービスです。