多くの人達に支持されるファッションブランドは、品質の良さはもちろんのこと、そのブランド力も大きな要素を含んでいます。支持されている有名ブランドの商品では、そのブランドロゴが入っていることで、需要は大きく伸びます。それだけロゴというものは企業にとって重要なものなのです。そんな有名ファッションブランドのロゴは、ブランドのイメージ・商品のイメージにマッチしたものでならないのはもちろん、見た目のカッコ良さなどの重要な要素でもあります。「このロゴが付いた商品を着たい!」という気持ちにさせるモノでなくては、売り上げにはつながりません。
多くの有名ファッションブランドには古い歴史があり、同時に長きにわたってそのロゴも愛されてきたことになります。このような歴史あるファッションブランドのロゴデザインには、見た目のカッコ良さやインパクトの強さなどの他に、創始者達の思いや隠された意味が存在するのをご存知でしょうか。その隠れた意味を知ることで、より一層そのファッションブランドを好きになることでしょう。
きっかけは偶然? CHANEL(シャネル)のロゴマーク
高級ブランドとして多くの女性の憧れでもあるブランドが「CHANEL(シャネル)」です。
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シャネルのロゴは、「C」の文字が左右対称に重なり合ったデザインをしています。このロゴのCは、創始者であるココ・シャネルの名前の頭文字をとって付けられています。ちなみに、ココとは本名ではありません。本当の名前は「ガブリエル・ボヌール・シャネル」と言うそうです。
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フランス生まれの有名ブランド『シャネル』のロゴは、サンセリフ系フォントの二つの「C」字をシンプルに左右対称にクロスさせて出来たもの。背景の白地に黒色の「CC 」で構成されるスタイリッシュなモノクロームのロゴが基本バージョンですが、白黒反転させたものや、シルバーやゴールドカラーを採用しゴージャス感をプラスさせたものなど、それぞれのアイテムに合致した各種のカラーリングが展開されています。特筆すべきなのは、どのカラーバージョンにも上質で安定した高級感が見出され、一目見ただけで「シャネル」と認識されること。
このシャネルのロゴを模倣した、英字アルファベットを左右対称に重ね合わせたロゴのデザインが世の中に数多く存在しているのも、シャネルロゴの放つラグジュアリーさやプレミアム性を取り入れたい、という希望からきているのかもしれません。 今や世界中の女性を虜にするこのロゴは、ブランドの価値を的確に表現・向上させる強い威力を持ち、時代を経ても揺るがないシャネルのスタイルをまさに象徴するデザインです。
主人を待つ HERMES(エルメス)のロゴマーク
同じフランスの高級ブランドであり、特にバッグが多くの女性の心を魅了しているのが「HERMES(エルメス)」です。
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「エルメス」と言うと、オレンジ色のパッケージや馬車のイラストレーションを使ったロゴを思い浮かべる方も多いかと思います。 乗馬がスポーツとして現在でも盛んなフランスでは、いつの時代でも人間に身近な動物なのが「馬」。
革製品を扱う馬具工房からスタートし、世界中に多くのファンを持つエルメスですが、その歴史背景を表現した馬をモチーフにしたエルメスロゴは、常にフランス国民に高く支持されてきたロゴのひとつです。
シンボルデザインを構成するのは馬車・馬・従者の三要素。その美しく繊細に描かれているイラストレーションから、ブランド自体の伝統や品位、ものづくりに対する真摯な姿勢や高いプロフェッショナル性を彷彿させられます。
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また、エルメスのイメージを構築するもう一つの要素はそのシンボルカラーです。ルイヴィトンならブラウン、また前述のシャネルならブラックなど、各ブランドにはそれぞれのブランドカラーがあり、エルメスを象徴するのはオレンジ色。「エルメスカラー」と称される鮮やかなオレンジ色がロゴにも使われています。
一般的に暖色系のカラーを代表するオレンジ色は、喜びや幸福感、エネルギーや開放感を感じさせ、ポジティブな印象を与えるカラーです。寒い秋冬には体温を上げてくれる色味であり、春夏にはより一層明るい気持ちを引き立ててくれるオレンジ色のエルメスロゴは、一年を通して顧客に親近感を促し、他のブランドとの差別化を図ることに成功した事例と言えるでしょう。
日本の「家紋」に影響を受けた?ルイ・ヴィトンのロゴ
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言わずと知れたバッグの高級有名ブランド、ルイ・ヴィトン ( LOUIS VUITTON )。その歴史のはじまりは、160年ほど前に遡ります。フランスのパリに、スーツケース職人であった創始者ルイ・ヴィトンが旅行用鞄店を世界ではじめて創業しました。後に開かれた万国博覧会で銅メダルを受賞し、世界的な評価を得ることとなります。王侯貴族にも愛されるようになったルイ・ヴィトンは人気を博しますが、これを追いかけるようにして模倣品が出回りルイを悩ませます。
1880年代に入り息子のジョルジュの代に移った頃、ベージュと茶褐色のチェス盤柄にブランド名が入った「ダミエ・ライン」が誕生します。
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ダミエ・ラインは万国博覧会で金賞を受賞しますが、またも模倣品が出回ります。それら模倣品を払拭するため、1896年、ジョルジュは新たなトレードマークとなる布地「モノグラム・ライン」を世に送り出しました。
そうして生まれた「ダミエ・ライン」や「モノグラム・ライン」は現在でも世界中で愛され、近年は日本人アーティスト村上 隆氏とのコラボレーションも話題になりました。現行のルイ・ヴィトンのロゴは、「LV」のモノグラムとロゴタイプで構成されています。前述したように家紋に多大な影響を受けた※と言われていますが、「LV」のモノグラムには、家紋の影響だけではない計算された幾何学的な美しさもあります。正体で書かれた「V」に対し、「V」の角度に合わせ微妙に斜体がかった「L」。おおよそ2:1の割合で線分を重ねる2つの文字は、美しくバランスがとられており安定した重心を保っています。斜体をかけることでセリフ体の飾り部分が実に優美なカーブを描き、その品質にふさわしい高級感を漂わせています。※諸説あります
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ロゴタイプはFuturaを採用しています。モノグラムとは対照的に、機能性と信頼を約束するシンプルでモダンな印象を与えています。
イニシャルをはじめてデザインに取り入れたブランド、グッチ
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1921年、グッチ( GUCCI )は皮革製品ブランドとしてイタリアに誕生しました。創業者のグッチオ・グッチは好奇心旺盛で革新的な経営者であったと語り継がれています。第二次大戦中、皮革が統制品となったことから、バッグの持ち手を竹で代用したバンブーシリーズ、馬具からインスピレーションを受け作られたシェリーライン、そして60年代に世界ではじめて製品デザインにイニシャルを採用したGGマーク。それらの斬新なアイデアと上質な製品づくりが評判を呼び、当時のシネマスターらをも魅了するラグジュアリーブランドとなりました。
そんなグッチのロゴデザインとして知られているのが「GG」のシンボルマーク。「GG」はバッグや財布などの生地の柄、またそれらのバックルなどに用いられ個性的なデザインのワンポイントとしても活躍してきました。ほぼ真円のフォルムを成す「G」を2つ内向きに重ねたデザインは、シンプルでありながら力強さや繋がりを感じるダイナミックなシンボルマークです。そのシンボルと並んでブランドをあらわしているのが「GUCCI」のロゴタイプ。
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線の太さに強弱をつけ過ぎず、しなやかなラインが美しいOptimaという書体を使用しています。女性向けの雑誌や化粧品等で使用されることが多く、モダンでありながら上品さを併せ持つファッショナブルな書体です。
セレブリティに愛される権威あるファッションブランド、アルマーニ
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モード界の帝王とも呼ばれるジョルジオ・アルマーニ氏。そのものづくりに懸けるスタンスは完璧と称され、多くのセレブリティたちに愛される「本物」を語るに値するブランドと言われています。彼は大変映画が好きで、度々撮影衣装を担当したことから、ハリウッドにも多くのファンや顧客を有していることも他のブランドと一線を画す理由の一つとなっています。
そんなアルマーニのハイラインは彼の名をそのまま冠した「ジョルジオ・アルマーニ」(GIORGIO ARMANI )。ロゴタイプのみで構成されるロゴデザインは、Didotというフォントを基にアレンジされた書体でできています。
Didot自体、線の太さがはっきりしていて、極細と極太が同居する非常にグラマラスな書体です。故に、ファッション界、特にモードの舞台で活躍しており、代表的なところではファッション誌「VOGUE」が有名です。アルマーニのロゴは、Didotのメリハリを少々抑え目にし、女性らしさにセーブをかけたような印象で、その代わりにトラディショナルでジェントルなイメージが強くなっています。
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そして「イーグル」のシンボルデザインで知られているセカンドラインに「エンポリオ・アルマーニ」(EMPORIO ARMANI ) があります。なぜイーグルなのか正式な由来については発表されていませんが、アルマーニの中でも若い世代に向けられたブランドであることから、未来への飛躍やアグレッシブに挑戦していく姿勢などが理由に考えられるのではないでしょうか。イーグルの表現方法に極太のラインを使っていることも、スポーティーな印象を与え「若さ」と「エネルギー」を体現しているといえるでしょう。
伝説のクチュリエ、クリスチャン・ディオールのロゴデザイン
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1950年代、「ニュールック」というワードでモード界を席巻したクリスチャン・ディオール (Christian Dior )。世の女性たちに新たなフォルムを与え、現代のファッションへ多大な影響を及ぼしたブランドです。現在では、レディスファッションのほか、メンズファッションや服飾品、化粧品。香水、食器など幅広く展開し、クチュリエの中ではじめてライセンス事業に乗り出したブランドでもあります。
クリスチャン・ディオールのロゴデザインは、当初「Christian Dior」と表記されていましたが、90年代に入りジョン・ガリアーノ指揮の下、「Dior」のみの表記になりました。
Nicolas Cochin(ニコラ・コシャン)というセリフフォントをベースにデザインされており、頭文字「D」を数ポイント大きめに設定し、カーニングを調整したまとまりのある美しいロゴタイプに仕上げています。ファッションにおいても「ライン」の美しさにこだわったブランドらしく、無駄なく洗練された文字のプロポーションが際立つ気品溢れるロゴデザインです。
近年ロゴデザインを刷新した、ロイヤルブランド「ロエベ」
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スペインの王室御用達ブランド「ロエベ」( LOEWE )は、1846年マドリードにある皮革製品の工房からはじまりました。卓越した技術と上質な素材でスペインの人々を魅了し、皇室に認められるまでになります。それからも世界的に有名な建築家がブティックの建築を手がけるなどし、モダンで先鋭的なポジションで世界的に注目を集めていきました。
そして、1970年、4つの「L」を組み合わせたロエベのアイデンティティとなるロゴデザインが登場します。「L」の文字を万華鏡で覗いたように反転を繰り返すような独自の模様はブランドのアイコンとして長年に渡り愛されてきました。
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そのアイコンが2014年、45年という時を経て、新体制のもと生まれ変わりました。( 新ロゴはこちら ) モチーフはそのままに、よりシンプルにモダンにリファインされた新デザインは、時間の経過によってラグジュアリーから華美に移り変わっていた部分をそぎ落とし、これから先も末永く愛されていくようなより普遍的なデザインへと変化を遂げました。華奢で繊細さを感じさせた伝統的とも言えるセリフ体のロゴタイプは、ハンドメイド感を残したぬくもりを感じるタイニーセリフ体へと変わり、時代が求める形へとやさしくシフトしました。
このような老舗ブランドの大胆なイメージチェンジは大変珍しく、簡単にできることではありません。そうした常識に縛られない未来を見据えた柔軟な対応力が、この先生き残っていくブランドの条件の一つなのかもしれません。
美しい白鳥が印象的なスワロフスキーのロゴマーク
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ブリリアントなクリスタルカットで知られるスワロフスキー( Swarovski )は、「誰もが手にすることが出来るダイアモンド」をビジョンに、ガラス職人の息子であったダニエル・スワロフスキーが開発したクリスタルカット技術からはじまりました。これまで手仕事で行われてきたジュエリーカットをマシーンで行えるよう開発したことで、以前に比べ約1万倍の速さで製造することが可能になったといいます。そして、1895年にスワロフスキー社が設立され、その精彩な輝き、多種多様なサイズ・カラーなどがファッション界のニーズと合致し、瞬く間に世界へと広がっていきました。
スワロフスキーといえば、優雅な白鳥のシンボルマークが有名です。白鳥のもつ透明感のある美しさと、「swan」「swarovski」とフレーズが似ていることもあり、シンボルとしてしっくりくるという印象です。白鳥の羽の部分が徐々に背景に溶け込んでいくようなあしらいが、より一層透き通るようなイメージを掻き立て、クリスタルのもつ目映い輝きとそのイメージを繋げていきます。
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ロゴタイプはNovareseというセリフフォントをベースに作られています。女性的で繊細なフォルムを持つこのフォントはシンボルマークとも相性が良く、白鳥の首のラインと「S」を描くカーブが調和を一層強めています。スワロフスキーのようなジュエリーブランドは、特に女性へ向けたアイデンティティの発信が重要になってきます。しなやかでありながらどことなく凛とした印象を感じさせるスワロフスキーのロゴデザインは、現代の女性にぴったりのビジュアル・アイデンティティと言えるのではないでしょうか。
私達の身の回りは多くのロゴデザインで溢れています。特にファッションブランドのロゴにおいては、偽物が出回るほどユーザーにとっては魅力あるものです。
自分の支持するファッションブランドを知る上で、その歴史と共にロゴの持つ意味も調べてみると、今まで全く知らなかったことが分かるかもしれません。そうした意味を知ることで、より一層そのブランドを愛することができるのではないでしょうか。
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