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2025年2月:デザイン業界の最新動向


デザインニュース2

2025年2月、デザイン業界では国内外で多彩なニュースが飛び交いました。広告キャンペーンでは社会的メッセージ性やユーモアあふれる企画が注目を集め、パッケージデザイン分野ではサステナビリティ(持続可能性)への取り組みが一段と加速。ロゴデザインのリブランディング(ブランド刷新)も相次ぎ、伝統ある企業から新興ブランドまで新しいビジュアルアイデンティティを打ち出しました。以下、広告、パッケージ、ロゴそれぞれの分野で特に話題となったトピックをご紹介します。

 

広告キャンペーン – 女性の活躍とユーモアが話題

27年ぶりにスーパーボウルへ復帰したナイキ「So Win」

今年の2月、世界の広告シーンでは多様性と創意工夫に富んだキャンペーンが次々と登場しました。まず米国では、大手スポーツブランドのナイキが実に27年ぶりにスーパーボウルのCMに復帰し、大きな話題となりました。新キャンペーン「So Win」では女子スポーツにスポットライトを当て、シャカリ・リチャードソンやケイトリン・クラークといったトップ女性アスリートたちが勢揃い。グラミー賞受賞ラッパーのDoechiiがナレーションを務め、「できないと言われても、だからこそやり遂げよう(So win)」と呼びかける力強い内容で、女性の可能性を称賛するメッセージが多くの視聴者の心をつかみました。世界最大のスポーツイベントの場で女性アスリートを主役に据えたこの試みは、単なる商品宣伝を超えて社会的なインパクトを与えたと言えるでしょう。

エルモとタッグを組んだOn(オン)のユーモア広告

一方、スイス発のスポーツブランド On(オン)は、人気キャラクターのエルモと組んだ異色のコラボCM「SOFT WINS」を2月中旬に公開しました。ランニング=ストイックという従来のイメージを覆し、「もっと肩の力を抜いて楽しもう」というメッセージをエルモがランナーたちに語りかけるユーモラスな内容です。運動の目的を「競争」ではなく「健康や楽しさ」に置き直すこの広告は、激しいトレーニングだけが全てではないと優しく訴えるもので、忙しい現代人に「ほっと一息」の価値観を提供しました。ブランドの新シューズ発売に合わせた企画でしたが、懐かしのセサミストリートのキャラクター起用も相まって幅広い世代に好評を博しています。

バレンタインに“公式ボーイフレンド”を任命したReformation

また、ファッション業界からもユニークな仕掛けが登場しました。ロサンゼルス発の人気ブランドReformation(リフォーメーション)は、バレンタインデーに合わせてピート・デイヴィッドソンを「公式ボーイフレンド」に任命する遊び心たっぷりのキャンペーンを展開。【Saturday Night Live】で知られるコメディアンのピートを起用したコマーシャル動画では、「理想の彼氏」の条件をコミカルに語りつつ、限定コレクションのスウェットシャツやボクサーパンツを披露。ピートのチャーミングなキャラクターと相まってSNS上で瞬く間に拡散され、「バカバカしいけど面白い!」と大きな反響を呼びました。ブランドの環境志向なイメージとピートのユーモアという意外な組み合わせが功を奏し、ファッションとポップカルチャーの橋渡しとして注目されています。

マラソンと恋のときめきを融合させたBumbleのコラボ

さらに、マッチングアプリのBumble(バンブル)はスペイン・バルセロナのハーフマラソン大会でGoodNews Coffeeとコラボし、ランナーに花束とコーヒーを配る異色のプロモーションを実施しました。ゴール地点で「お疲れさま」の花と温かいコーヒーを手渡し、「マラソンと恋の良いとこ取り」を演出するというユニークな試みで、参加者たちに笑顔と驚きを提供。スポーツの爽快感と恋のときめきを融合させたこの取り組みは、「走ることも出会うことも前向きに楽しもう」というメッセージとして捉えられ、現地メディアでも話題になりました。

Duolingoの“まさか”の死から復活劇

そして極めつけは、語学アプリDuolingo(デュオリンゴ)の「まさか」の仕掛けです。2月11日、同社はマスコットキャラクターである緑色のフクロウ「デュオ」の“死亡”をSNSで突然発表し、ユーザーに大きな衝撃を与えました。原因は「ユーザーがレッスンをさぼったせい」などとおどけた口調で伝えられ、ネット上では即座に「#RIPDuo」(デュオ安らかに)というハッシュタグが世界的にトレンド入り。人気ドラマ『イカゲーム』になぞらえたパロディ動画をNetflix公式アカウントが投稿したり、歌手のデュア・リパが冗談交じりに追悼コメントを寄せたりと、他社やセレブまで巻き込んだ大騒ぎに発展しました。当然ながらこれは巧妙なバイラルマーケティングで、数日後には「デュオ復活」の報せとともに一件落着。「SNS時代の広告手法」の妙を見せつけ、同キャンペーンによる関連投稿数は通常時の250倍以上に跳ね上がったとも報じられています。ユーザーを驚かせ笑わせる演出でブランドへの愛着を深めた好例として語られることでしょう。

「スマイル0円」を逆手に取った日本マクドナルドの快挙

なお、日本発のクリエイティブも国際的に高く評価されています。特に日本マクドナルドの名物フレーズ「スマイル0円」を大胆に再解釈したキャンペーン「No Smiles」が快挙を達成しました。これは店員の笑顔を封印するという逆転の発想でZ世代(若者層)に「自分らしさを大切に」と訴えた企画で、2024年のカンヌライオンズなど数々の広告賞を席巻。そして今年2月には、音楽と広告の融合を競うClio Music Awards 2025でグランプリに輝きました。日本の広告会社TBWA HAKUHODOが手掛けたこの作品の受賞は、日本発のアイデアが世界最高峰の評価を得た証しと言え、国内外のデザイン関係者の間で誇らしいニュースとなりました。

 

パッケージデザイン – 革新とサステナビリティ

EU

EUの包装廃棄物規則(PPWR)施行がもたらす影響

2月のパッケージデザイン分野では、「環境に優しいデザイン」が引き続き大きなテーマとなっています。特に欧州連合(EU)では包装廃棄物規則(PPWR)が2025年2月11日付で施行され、加盟各国で段階的に新ルールが導入され始めました。この新法は 「使い捨てプラスチックごみを減らし、再利用・リサイクルを促進する」 ことを目的としており、企業に対して梱包材の削減や再生素材の使用、分別しやすい表示などを求めるものです。2030年までに一人当たりの包装廃棄物を2018年比で5%削減するなど具体的目標も掲げられており、ヨーロッパのメーカー各社はこれに対応すべく動き出しています。環境重視の流れが法規制によって一層強化され、パッケージデザインの世界でもサーキュラーエコノミー(循環型経済)を見据えた革新が求められている状況です。

キノコの菌糸体由来パッケージが拓く新素材の可能性

素材面でも、発泡スチロールに代わる菌糸体由来の梱包材(キノコの菌糸を原料としたパッケージ)が商品化され始めており、土に埋めると短期間で生分解するエコ素材として脚光を浴びています。各社が競い合うように環境対応を打ち出すことで、「エコ=地味」というイメージを覆すカラフルで魅力的なパッケージも増えてきました。サステナビリティとデザイン性の両立が、今年の大きな潮流となっています。

フードロス削減をデザインに込めたASTRA FOOD PLANの挑戦

日本でもパッケージを通じた革新的な試みが見られました。埼玉県のフードテック企業ASTRA FOOD PLANは、看板商品のクラフト調味料「タマネギぐるりこ」のブランドリニューアルを2月下旬に発表。同社は「隠れフードロス」(見過ごされがちな食品廃棄)削減をミッションに掲げており、新フレーバー発売に合わせてロゴとパッケージデザインを一新しました。丸ごと玉ねぎを無駄なく使ったサステナブル志向の商品だけに、玉ねぎの形をモチーフに無限大(∞)を描く新ロゴや、リサイクル素材を用いたパッケージでブランドメッセージを体現しています。実際に期間限定ショップで提供したところ「かわいいデザインで環境にも良いなんて素敵!」と消費者から好評で、地方発スタートアップによる意欲的なデザイン刷新として注目されました。

 

ロゴリニューアル – ブランドの新章

テニス界を熱くするWTAの大規模ブランディング

2月はロゴデザインやブランドアイデンティティ(CI)の刷新ニュースも相次ぎました。スポーツ界では、女子プロテニス協会(WTA)が2月27日に大胆な新ブランディングを発表し話題沸騰。鮮やかな新ロゴとともにスローガン「Rally the World(世界を巻き込め)」を掲げ、選手・ファン・スポンサーの声を取り入れて「テニスを通じ世界を鼓舞する」というミッションを再定義しました。トップ選手たちが出演するグローバルキャンペーンも同時展開され、コート上だけでなく社会全体に影響力を広げる決意が感じられる内容です。長い歴史を持つWTAが新時代に向けブランドを「より大きく力強く」進化させたこの試みは、スポーツビジネスの面でも大きく報じられました。

競合激化に立ち向かうOLAPLEXのアイデンティティ変革

美容業界では、ヘアケアブランドのOLAPLEX(オラプレックス)が2月下旬にブランドアイデンティティの刷新を公表しました。世界中の美容師や顧客に支持されてきた同社ですが、近年は競合増加による業績伸び悩みも指摘されていました。そこで新CEOの下、「科学とスタイルの融合」という原点に立ち返ったビジュアル戦略を導入。鮮やかな色使いのロゴや洗練されたデジタル体験を打ち出し、「次の10年も革新的な絆(ボンド)で髪を守る」というメッセージを込めたといいます。併せて頭皮ケアの新製品も投入し、新ロゴとともに店頭やSNSで積極発信。ブランドの再活性化を図るこの動きに対し、業界メディアからは「確固たる遺産に大胆さを加えたリブランディングだ」と評価する声も上がっています。

伝統企業・友桝飲料の新ロゴに込めた未来への翼

国内企業も負けていません。老舗飲料メーカーの友桝飲料(ともますいんりょう)は創業123年を迎えた2月22日、「世界友情の日」に合わせて新コーポレートロゴとスローガンを披露しました。新ロゴマークは同社ゆかりの白い鳥をモチーフに、青空に羽ばたく姿を表現。背景の円も完全な円ではなく炭酸の気泡のような揺らぎを持たせ、長年培ってきた炭酸飲料づくりのこだわりと、常に変化を恐れず挑戦する姿勢を象徴しています。伝統ある企業が培ってきたアイコンを現代風に研ぎ澄まし、創業の地・佐賀から世界へ飛躍する意気込みが感じられるデザインとなりました。

 

おわりに

今年に入りまだ2か月ですが、デザインの世界では早くもこれだけ多彩なニュースが生まれています。ジェンダー平等や環境問題への意識の高まりを背景に、広告やパッケージ、ロゴといった各分野でクリエイターたちが工夫を凝らし、新たな価値観や体験を提案している様子がうかがえます。一般の私たちにとっても、商品やサービスを通じてそうしたメッセージやこだわりに触れる機会が増えてきました。今後もデザイン業界の動向から目が離せません。来月はどんな驚きや感動が待っているのか、楽しみに注目していきたいですね。

 

— 参考記事

 

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