
はじめに ─ 色は「読む前」に情報を伝えている
パンフレットを手に取ったとき、最初に目に飛び込んでくるのは文章ではなく、全体の「色合い」です。温かみのあるオレンジ系か、知的な印象のブルー系か。その第一印象が、「読んでみよう」と思うかどうかを左右するといっても過言ではありません。
配色はデザイナーの感性だけで決まるものではなく、色彩心理学やブランディングの観点から論理的に考えることができます。この記事では、パンフレット制作における配色の基本的な考え方と、業種別のカラー選びのヒントをご紹介します。
色が人に与える心理効果 ─ 基本の7色を押さえる

色にはそれぞれ、見る人に特定の印象を与える力があります。パンフレットの目的やターゲットに応じて、メインカラーを選ぶ際の参考にしてください。
赤:情熱、活力、緊急性。セールやキャンペーンの告知に向いていますが、多用すると攻撃的な印象になるため、アクセントカラーとしての使用が効果的です。
青:信頼、誠実、冷静。金融・IT・医療など、信頼性を重視する業種との相性が抜群です。濃い青は権威を、明るい青は親しみやすさを演出します。
緑:安心、自然、健康。環境関連企業やヘルスケア、食品業界で好まれます。目に優しい色であるため、長文の読み物にも使いやすい色です。
黄色:明るさ、注目、親しみ。子ども向けのサービスやカジュアルな業態で効果を発揮します。ただし、背景色に使うと文字が読みにくくなることがあるため注意が必要です。
オレンジ:活発、温もり、行動促進。飲食業やレジャー産業など、「楽しさ」を伝えたい場面に適しています。赤ほど強くなく、黄色より温かみがある絶妙なポジションの色です。
紫:高級感、創造性、神秘。美容・ファッション・アート関連のパンフレットに上品さを添えます。彩度を落とすことで、落ち着きと品格のある印象へと変化します。
黒:洗練、高級、格式。ラグジュアリーブランドや高級サービスの訴求に最適ですが、面積が大きすぎると重苦しくなるため、白や差し色とのバランスが重要です。
色の心理効果は確かに存在しますが、現場で気をつけたいのは「色単体で効果が決まるわけではない」という点です。たとえば同じ赤でも、深みのあるワインレッドと蛍光がかったビビッドレッドでは読み手に与える印象がまるで違います。色相だけでなく、明度(明るさ)と彩度(鮮やかさ)を合わせて調整することで、パンフレット全体のトーンが整います。
クライアントとの色の打ち合わせの際に、「赤がいい」「青で」という大まかな方向だけで進めてしまうと、仕上がりのイメージにズレが生じやすくなります。カラーチップや実際の印刷サンプルを見ながら「この赤」を具体的に共有しておくと、後工程での手戻りを防げます。
配色の基本ルール ─ 3色でまとめるのがコツ
美しい配色に共通するのは、色数を絞っているという点です。パンフレット制作においても、基本的には3色以内でまとめることをおすすめします。
- メインカラー(約70%):パンフレット全体の印象を決める色。ブランドカラーや業種のイメージに合った色を選びます。
- サブカラー(約25%):メインカラーを引き立てる補助的な色。同系色でまとめるとまとまりが生まれ、補色関係の色を選ぶとメリハリが出ます。
- アクセントカラー(約5%):注目してほしい部分に使う差し色。ボタンやキャッチコピーなど、視線を集めたい箇所にピンポイントで使用します。
この比率を意識するだけで、配色の統一感は格段に上がります。色に迷ったときは、自然界に存在する色の組み合わせを参考にするのもひとつの手です。空と海、森と花、夕焼けの空。自然の配色は人の目にとって心地よいバランスが保たれています。
業種別の配色アイデア

ここからは、業種ごとのおすすめ配色パターンを紹介します。あくまで一例ですが、方向性を決めるヒントにしてみてください。
医療・クリニック
清潔感と安心感を伝えるには、白をベースに、淡いブルーやグリーンを組み合わせるのが定番です。暖色を差し色として少量取り入れると、冷たすぎない印象になります。
飲食業
食欲を刺激する暖色系(赤・オレンジ・黄)を中心にしつつ、ベージュやブラウンで落ち着きをプラス。和食であれば朱色や墨色、イタリアンなら緑・白・赤のトリコロールといった具合に、料理のジャンルで色を選ぶのも効果的です。
IT・テクノロジー
ブルー系を基調としたクールな配色が多い業界ですが、最近はグラデーションを取り入れたモダンな配色も増えています。白や薄いグレーとの組み合わせで、スマートさと清潔感を演出できます。
教育・学校
信頼感のある濃紺やグリーンをベースに、黄色やオレンジなど明るい色を差し色にすると、「真面目でありながら活気がある」という印象を表現できます。
美容・サロン
ピンク・ラベンダー・ゴールドなど、華やかで洗練された色使いが似合います。トーンをパステルに統一するとフェミニンに、ダークトーンに振ると大人っぽい仕上がりになります。
やってしまいがちな配色のNG例
良かれと思って選んだ配色が、逆効果になるケースもあります。よくある失敗例を知っておくと、同じ過ちを避けやすくなります。
色を使いすぎる:5色以上を同時に使うと、ごちゃごちゃして読みにくくなります。華やかにしたい気持ちはわかりますが、色数が多い=賑やかという考えは結果的に記憶に残りにくいデザインを生みます。
コントラストが弱すぎる:ベースカラーと文字色の明度差が小さいと、そもそも文字が読めません。特に高齢者がターゲットの場合は、はっきりとしたコントラストを意識しましょう。
競合と同じ色に寄せてしまう:同業他社のパンフレットと色味が近すぎると、差別化が図れません。ブランドカラーが似ている場合は、トーンや組み合わせで違いを出す工夫が必要です。
配色のNG例として意外と知られていないのが、「画面上で綺麗に見えた色が、印刷するとくすんで見える」という問題です。パソコンのモニターはRGBで色を表示しますが、印刷物はCMYKで再現するため、特に鮮やかなブルーやグリーン、蛍光色に近い色味は印刷時にくすみやすい傾向があります。
パンフレットの配色を決める段階で、色見本帳を使って印刷後の仕上がりを確認しておくと、「思っていた色と違う」という事態を避けられます。画面と紙の色のギャップは、デザイン初心者の方が最もつまずきやすいポイントのひとつです。
配色ツールを活用して迷いをなくす
「色の相性がわからない」「感覚だけで選ぶのは不安」という方には、無料で使える配色ツールの活用をおすすめします。Adobe ColorやCoolorsなどのWebツールでは、1つの色を指定するだけで、調和の取れた配色パターンを自動生成してくれます。
こうしたツールで候補をいくつか出しておき、デザイナーや社内メンバーと共有しながら方向性をすり合わせれば、制作のスタートがぐっとスムーズになります。
まとめ ─ 配色は「伝えたい印象」から逆算して決める
パンフレットの配色は、見た目の美しさだけでなく、読み手に何を感じてほしいかという意図に基づいて設計するものです。信頼を感じてほしいのか、親しみを覚えてほしいのか、高級感を演出したいのか。その答えに合った色を選び、バランスよく配置することで、デザインの説得力は大きく高まります。
色選びに正解はひとつではありませんが、「なぜこの色なのか」を説明できる配色は、見る人にも自然と説得力が伝わります。次のパンフレット制作では、ぜひ配色から見直してみてください。
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