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窓口で対応をするスタッフ

自治体・公共施設のパンフレット制作|住民に届く情報デザインの考え方


窓口で対応をするスタッフ

はじめに ─ 行政の情報こそ「わかりやすさ」が問われる

自治体の窓口や公共施設には、さまざまなパンフレットが置かれています。子育て支援の案内、ごみの分別ルール、防災ガイド、施設利用案内——。住民生活に直結する大切な情報ばかりですが、「手に取ったものの、内容が頭に入ってこなかった」という経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。

行政のパンフレットが読まれにくい原因は、情報の重要度が高すぎるがゆえに、正確さを優先するあまり、表現が硬くなりがちな点にあります。しかし、どれだけ正確な情報でも、届かなければ意味がありません。

この記事では、自治体や公共施設のパンフレットをより多くの住民に届けるために、情報デザインの観点から制作のポイントを考えてみます。

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「行政文書」から「住民向けガイド」への意識転換

書類を持った女性の手元

自治体のパンフレットにありがちな問題は、内部の文書作成ルールがそのまま住民向けの印刷物に適用されてしまう点です。正式名称の使用義務、箇条書きの禁止、根拠法令の記載など、正確性の担保に必要なルールが、読みやすさとは矛盾する場面があります。

もちろん法的な要件を無視するわけにはいきませんが、パンフレットは条例の告示文ではなく、住民に情報を「届ける」ためのツールです。たとえば、正式名称はサブタイトルや注釈に回し、本文では住民に馴染みのある通称を使うといった工夫だけでも、読みやすさは格段に向上します。

「行政が伝えたいこと」と「住民が知りたいこと」のギャップを認識し、住民の目線で情報を再構成するという意識が出発点になります。

自治体案件でデザインに取り組むと、「掲載必須の情報」がリストアップされた段階ですでに紙面が埋まってしまう、ということがよくあります。この状況で読みやすいパンフレットを作るポイントは、「情報を減らす」のではなく「情報の見せ方の階層を変える」ことです。

具体的には、「一番伝えたいこと」を大きな文字とビジュアルで紙面の前面に出し、「正式名称や根拠法令」は注釈エリアに小さく配置する。情報はすべて残しつつ、読み手の視線が自然と重要な情報から順に辿れるよう、フォントサイズと配置で「優先度の濃淡」をつけるのです。正確性と読みやすさの両立は、紙面上の「声の大きさ」のコントロールにかかっています。

 

ターゲットを明確にして情報を絞る

自治体のパンフレットで多い課題が、「一冊にあれもこれも入れようとしてしまう」というものです。対象を広く取りすぎると、結局は誰にも刺さらない内容になってしまいます。

効果的なアプローチは、パンフレットごとにターゲットと目的を明確に絞ることです。

  • 子育て世帯向け:保育園・幼稚園の制度、子育て支援センター、児童手当の案内
  • 高齢者向け:介護保険制度、シニア向け健康教室、移動手段の案内
  • 転入者向け:各種届出の流れ、ごみ出しルール、地域コミュニティの紹介
  • 防災関連:避難場所マップ、非常持ち出し品リスト、連絡先一覧

こうした切り口で分けることで、各パンフレットの情報密度が適切になり、読み手にとって「自分に関係のある情報が載っている」と感じやすくなります。

 

ユニバーサルデザインを前提として設計する

自治体のパンフレットは、年齢・国籍・障がいの有無を問わず、あらゆる住民が読む可能性があります。だからこそ、ユニバーサルデザインの考え方を制作の前提に据えることが特に重要です。

フォントサイズと書体

高齢者の方にも読みやすいよう、本文のフォントサイズは12pt以上を基本とし、ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)の使用を検討しましょう。UDフォントは文字の判別性が高く、「は」と「ほ」、「シ」と「ツ」のような紛らわしい文字の読み間違いを減らすことができます。

色覚多様性への配慮

日本では男性の約5%、女性の約0.2%が色覚に特性を持っているとされています。赤と緑の区別がつきにくい方のために、色だけで情報を区別しないデザインを心がけましょう。色分けをする場合は、パターンや記号を併用することで、色覚に依存しない情報伝達が可能になります。

やさしい日本語への対応

外国籍の住民が増加する中、「やさしい日本語」でのパンフレット制作も注目されています。難しい漢字にはルビを振り、一文を短くし、外来語はなるべく避ける。多言語翻訳が難しい場合でも、やさしい日本語なら比較的少ないコストで実現できます。

ユニバーサルデザインの実装は「配慮すべき項目が多くて大変」という印象を持たれがちですが、実は一つひとつは小さな作業の積み重ねです。たとえば色覚シミュレーションは、Adobe IllustratorやPhotoshopの「校正設定」機能で簡易的に確認できます。デザインデータを完成させた後で「色覚チェックしてみたら赤と緑の区別がつかないグラフがあった」と気づくのは手戻りが大きいので、配色を決める初期段階でシミュレーションをかけておくのが効率的です。

また、UDフォントについては、ウェイト(太さ)の選び方にも注意が必要です。読みやすさを優先してRegular(標準)を基本にし、強調箇所にBold(太字)を使う、というメリハリをつけると、情報の階層が明確になります。

 

「困ったときに探しやすい」構成を重視する

自治体のパンフレットは、手に取った瞬間に読まれるとは限りません。必要になったときに引っ張り出して、必要な情報を素早く見つけられることが重要です。

  • 目次を必ず設ける:ページ数が少ない場合でも、内容の一覧があると格段に使いやすくなります
  • インデックス(ツメ見出し)の活用:冊子形式の場合、ページの端に色分けしたインデックスを付けると検索性が上がります
  • Q&A形式の活用:「ごみの収集日を知りたい」「転出届はどこで出せる?」のように、住民の疑問をそのまま見出しにした構成は直感的にわかりやすく好評です
  • 連絡先は各セクションに配置:裏表紙にまとめるだけでなく、該当する内容のすぐ近くにも担当課の連絡先を記載しておくと、行動につながりやすくなります

 

写真とイラストで「堅さ」を和らげる

イラスト

行政のパンフレットが敬遠される理由のひとつに、「見た目が堅い」という印象があります。文字中心のレイアウトに公式感のある写真、無機質なアイコン。こうしたビジュアルは正確さの表れではありますが、手に取って読みたいという気持ちにさせるには力不足です。

改善策としては、以下のような方法が考えられます。

  • 地域の風景写真を表紙に使う:見慣れた風景が表紙にあるだけで、身近さを感じてもらえます
  • 柔らかいタッチのイラストを活用:人物イラストは、写真よりも親しみやすく、肖像権の問題もクリアできます
  • インフォグラフィックでデータを可視化:統計データや手続きの流れは、図解にすることで直感的に理解できるようになります

 

デジタル連携で紙面の限界を超える

紙のパンフレットに載せられる情報量には限りがあります。「詳しくはホームページをご覧ください」で済ませるのではなく、パンフレットの各セクションにQRコードを配置し、該当する行政サービスの詳細ページへ直接アクセスできる設計にすると、紙面とデジタルの連携がスムーズになります。

最近では、QRコードから電子申請フォームに直接飛べる仕組みを取り入れる自治体も増えています。パンフレットを「入口」とし、オンライン手続きという「出口」に導くことで、住民サービスの利便性を高めることができます。

 

まとめ ─ 住民の暮らしに寄り添うパンフレットを

自治体・公共施設のパンフレットは、住民の暮らしを支える「情報インフラ」の一部です。正確であることはもちろん大切ですが、それと同じくらい「読みやすく、わかりやすく、見つけやすい」ことが重要です。

住民の目線で情報を再編集し、ユニバーサルデザインの原則に基づいて設計し、必要なときにすぐ役立てられる構成にする。そうした一つひとつの配慮が積み重なって、住民と行政をつなぐ有効なコミュニケーションツールになります。

次の広報物の制作や改訂の際に、今回ご紹介したポイントを参考にしていただければ幸いです。

パンフレットの外注費について

 

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この記事について

執筆: ASOBOAD編集部

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