
前回の記事「JANコード・バーコード表示の基本とデザインへの影響」では、商品そのものに表示する「JANコード」について解説しました。
「なるほど、お店のレジで使うバーコードのことはよく分かった!でも…商品を工場からお店に送るとき、段ボール箱にもバーコードが付いているよね?あれはJANコードと同じもの?」
素晴らしい着眼点です!
実は、その段ボールに印刷されているバーコードは、JANコードとは役割が異なる、もう一つの重要なバーコードなんです。それが、今回ご紹介する「ITFコード」です。
商品の顔となる個包装のデザインはもちろん、それを安全に、そして効率的に届けるための外箱(段ボール)のデザインも、商品開発において非常に重要な要素です。
この記事を読めば、
- お店で使う「JANコード」と、物流で使う「ITFコード」の決定的な違い
- なぜITFコードが必要なのか、その役割
- ITFコードの作り方と、段ボールに表示する際の重要な注意点
が、わかります。
この記事を通じて、「物流」という視点を持つことが、いかに商品全体の価値を高めるかに気づいていただけるはずです。それでは、さっそく2つのコードの謎を解き明かしていきましょう!
まずはおさらい:JANコードは「お店のレジ」で活躍する単品用コード

本題に入る前に、JANコードの役割を簡単におさらいしましょう。
JANコードは、コンビニやスーパーのレジで「ピッ!」とスキャンされる、私たちにとって最も身近なバーコードです。
- 目的・場所: 小売店のPOSレジでの販売管理、単品単位での在庫管理
- 対象: 消費者が直接購入する、商品そのもの(個包装)
一言でいうなら、「消費者のためのバーコード」です。この商品が「いくらで」「いつ売れたか」を記録し、お店の売上管理や品出しの効率化を支えています。
ITFコードとは?「物流現場」を支える集合包装用コード

一方、ITFコードは、主に段ボール箱などの「集合包装」に表示されるバーコードです。
ITFは「Interleaved Two of Five」の略で、“バーコードの表現方式名”です。集合包装(段ボール箱など)の識別に使う“コード体系”自体は GTIN-14 で、実務ではこのGTIN-14をITFシンボルで印刷した 「ITF-14」 が広く使われます(本記事では便宜上「ITFコード」と呼びます)。
- 目的・場所: 工場、倉庫、物流センターでの入出荷検品、仕分け、在庫管理
- 対象: 商品を複数個(例: 6個、12個、24個など)まとめた段ボール箱
こちらは、いわば「物流プロのためのバーコード」。トラックから荷下ろしされた段ボールの山を、スキャナーで瞬時に読み取り、「どの商品が、何箱入荷したか」を正確に把握するために使われます。ITFコードのおかげで、膨大な数の商品をスピーディーかつ正確にさばくことができるのです。
【表で比較】JANコードとITFコード、6つの決定的な違い

ここまでで、2つのコードの主な活躍場所が違うことはお分かりいただけたかと思います。ここでは、さらに詳しく、両者の違いを表で比較してみましょう。
| 比較項目 | JANコード(標準タイプ) | ITFコード(標準タイプ) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 小売店での販売管理(POS) | 物流センターでの入出荷・在庫管理 |
| 使われる場所 | お店のレジ | 工場、倉庫、物流センター |
| 対象 | 単品商品(個包装) | 集合包装(段ボール箱など) |
| コード体系 | GTIN-13 / GTIN-8 | GTIN-14 |
| 桁数 | 13桁 / 8桁 | 14桁 |
| 見た目の特徴 | バーのみ | バーの上下左右を太い線で囲む「ベアラーバー」があるのが一般的 |
一番のポイントは、「対象」と「桁数」、そして「見た目」です。
ITFコードは、JANコード(13桁)の先頭に、荷姿(どんな梱包か)を示す1桁の数字を加えた14桁で構成されます。そして、印刷精度が低い段ボールでも正確に読み取れるよう、バーコードの上下左右を「ベアラーバー」と呼ばれる太枠で囲っているのが大きな特徴です。
ITFコードの構造と作り方を理解しよう

「ITFコードも自分で作る必要があるの?」
もちろんです。これもJANコードと同じく、自社で設定・管理します。構造さえ分かれば、決して難しくありません。
標準的な14桁のITFコードは、以下の3つのパーツで構成されています。
[物流識別コード(1桁)] + [中身の商品のJANコード(12桁)] + [チェックデジット(1桁)]
1. 物流識別コード(PI)
先頭の1桁は「物流識別コード(Packaging Indicator)」と呼ばれ、「どんな荷姿か」「何個入りか」を示す、ITFコードの心臓部です。
- 使用値は 1〜8(梱包形態や入数の識別)と、9(可変量などの特殊用途)。
- 0はPIとしては使用しません。ただし、GTIN-13 を14桁フィールドに合わせる目的で先頭に 0 を付与する表現があり、これは「ケース識別用のGTIN-14」とは別概念です(“桁埋め”であり、PI=0という意味ではない点に注意)。
- 同一商品でも 6 入り/12 入りなど梱包ごとに PI を変えることで、別の GTIN-14 として管理できます。
- 「9」は特殊用途(数量が変動する場合など)のため、通常は使いません。
同じ商品でも、6個入りの箱と12個入りの箱では、この物流識別コードを変えることで、別のITFコードとして管理できるわけです。
2. 中身の商品のJANコード(12桁)
物流識別コードに続く12桁は、その段ボールに入っている商品単体のJANコードから、最後のチェックデジットを除いた12桁をそのまま使用します。
3. チェックデジット
最後の1桁は、JANコード同様、読み取りエラーを防ぐためのチェックデジットです。ただし、計算方法がJANコードとは異なるので注意が必要です。こちらも、GS1 Japan(流通システム開発センター)の公式サイトなどで提供されている計算ツールを利用して、正確な数値を算出しましょう。
【デザイナー必見】段ボールへのITFコード表示、3つの重要注意点

作成したITFコードを段ボールに印刷する際には、個包装のパッケージデザインとは全く異なる、特有の注意点があります。これを無視してデータを作成すると、物流の現場で「読み取れない!」という致命的なトラブルに繋がりかねません。
1. 印刷方式の違いを理解する「フレキソ印刷」
まず大前提として、段ボールへの印刷は、商品のパッケージのような高精細なオフセット印刷ではなく、「フレキソ印刷」という方式が主流です。
フレキソ印刷は、インクがにじみやすく、線の太さも安定しにくいという特性があります。そのため、バーコードのバーが意図せず太ってしまったり、逆に細くかすれてしまったりするリスクが常に伴います。この「にじみ」や「かすれ」を考慮したデータ作成が不可欠です。
2. ITFコードの「サイズ」と「ベアラーバー」の役割
フレキソ印刷の特性上、ITFコードはJANコードよりも大きく印刷するのが基本です。基本サイズ(100%)は横142.75mmとかなり大きいですが、これを基準に、縮小する場合でも最低50%(約71mm)、できれば62.5%以上を保つことが推奨されています。
そして、最も重要なのが、ITFコード特有の「ベアラーバー」です。
この上下左右の太い枠線は、単なる飾りではありません。
- 印刷圧の均一化: 印刷時にかかる圧力をバーコード全体に均等に分散させ、バー部分が歪んだり、中央だけ濃くなったりするのを防ぎます。
- 読み取り補助: スキャナーを斜めに当てた場合でも、バーの始まりと終わりを正確に認識させる補助線の役割を果たします。
このベアラーバーがないITFコードは、読み取り精度が著しく低下します。グラフィックデザイナーは、必ずベアラーバーを含んだ正しい規格のバーコードデータを作成しなければなりません。
ベアラーバーの形状は印刷方法で異なります。段ボールへ 直接印刷(フレキソ等) する場合は、印刷圧を均一化して欠けを防ぐため、四辺で囲う形式が推奨(実質必須)。一方、ラベル貼付 の場合に限り、上下バーのみ等でも実務的に運用されます。
3. 理想的な「配置場所」と「色」
倉庫では、段ボールがどの向きで積まれているかわかりません。作業員がいちいち箱の向きを変えなくてもスキャンできるよう、ITFコードは最低でも隣接する2つの側面(長側面と短側面など)に表示するのが親切であり、物流業界の標準的な慣習となっています。
色については、JANコードと考え方は同じです。段ボールのクラフト地(茶色)は背景色として問題ありませんが、その上に印刷するバーは「黒」が鉄則です。コントラストが最も高く、安定して読み取ることができます。(濃い青や緑などのカラーも比較的見られます)ただし、スキャナーは読み取りに赤い光(赤色レーザー)を使っているため、コントラスト比に関わらず赤系の色味は避けましょう。
まとめ – JANとITFの使い分けが、スムーズな流通の鍵

今回は、JANコードとITFコードの違いについて紹介してきました。最後に、2つのコードの関係をシンプルにまとめてみましょう。
- JANコード: 単品商品に付き、お店のレジで使われる「販売の番人」。
- ITFコード: 段ボール箱に付き、倉庫で使われる「物流の番人」。
この2つのバーコードを正しく設定し、それぞれの用途に適した形で表示すること。それが、あなたの商品を工場からお客様の手元まで、スムーズかつ正確に届けるための重要な鍵となります。
外箱(段ボール)のデザインは、中の商品を保護するだけでなく、物流という重要な機能を担っています。ASOBOADでは、商品の個包装パッケージが持つ世界観を大切にしながら、物流現場での機能性も両立させた外箱の印刷データ作成も得意としています。
「商品パッケージと合わせて、段ボールのデザインも相談したい」
そんなご要望がありましたら、ぜひお気軽に私たちASOBOADにお気軽にご相談ください。
参考:LOGI FLAG | 冷凍・冷蔵・3温度帯の次世代型物流施設
参考:在庫管理システムについて徹底解説 – OPENLOGI オープンロジ
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