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リソグラフ風

レトロな「版ズレ」とインクの質感を再現する無料ツール「2C PRINT MAKER」を公開しました。


リソグラフ風

普段、デザインの現場では大きなズレは許されないような緻密な作業をしています。高解像度の写真、ノイズのないクリアな画面、計算され尽くしたベクターデータ。デジタルデザインの世界は、ある意味で「完璧」を目指す世界です。しかし、デザイナーとして長く制作に携わっていると、ふと「アナログの温かみ」や「偶然が生み出す面白さ」が恋しくなる瞬間があります。

例えば、昔のチラシや海外のZINE(個人制作の冊子)、あるいは学校の印刷機で刷ったあのお便り。インクが少し滲んでいたり、2つの色が重なって別の色が生まれていたり、印刷の版が微妙にズレていたり……。そんな「不完全さ」こそが、独特の味わい深いデザインとして魅力的に映ることがあります。

Photoshopなどのソフトを使えばそういった加工も可能ですが、レイヤーを分け、ノイズを加え、描画モードを調整し……と、意外と手間がかかるものです。

「もっと直感的に、あの『インクの匂い』がしそうな画像をWebブラウザだけで作れないか?」

そんな思いから、今回新しいWebツールを開発・公開しました。その名も、「2C PRINT MAKER(2C プリントメーカー)」です。

2C PRINT MAKERを使う

 

2C PRINT MAKER(2C プリントメーカー)とは?

作例

2C PRINT MAKERは、画像をアップロードするだけで孔版印刷(スクリーン印刷の一種)のような、レトロで粗い2色印刷風の画像を一瞬で生成できる無料のブラウザツールです。いわゆるリソグラフっぽい仕上がりを目指しました。

インストールは不要。PCでもスマホでも、ブラウザさえあれば誰でもすぐに使えます。

このツールの最大の特徴は、単に画像を2色に変換するだけでなく、「印刷の工程」をシミュレートしている点にあります。

通常、フルカラーの写真はCMYKの4色で表現されますが、このツールでは画像の「明るい部分」と「暗い部分」を抽出し、それぞれを「好みの2色のインク」に置き換えて再構築します。

さらに、デジタル上であえて「版ズレ(印刷のズレ)」や「紙のザラつき」を発生させることで、まるで工場の輪転機から出てきたばかりのような、アナログ感たっぷりのグラフィックを作り出します。

リソグラフ風の2色印刷を再現するというコンセプトは、近年のデザイントレンドと見事に合致しています。

ここ数年、ZINEカルチャーやインディーズの音楽シーン、個人の創作活動において、あえて「粗さ」や「不完全さ」を取り入れたデザインが注目を集めています。高解像度でクリーンなデジタルデザインが主流になった反動で、手作り感のある表現に新鮮味を感じる層が増えているのだと思います。

デザインの現場では、この「あえての不完全さ」を意図的にコントロールすることが求められます。無秩序に粗くするのではなく、「どの程度のズレが心地よいか」「ノイズの粒度はどれくらいが最適か」を感覚的に判断する力が問われます。このツールのパラメーター調整は、まさにその感覚を養う練習にもなりそうです。

 

こだわりの機能と「エモい」画像の作り方

作例2

ただのフィルターアプリとは一味違う、デザイナー目線で実装したこだわりのパラメーターを紹介します。これらを調整することで、自分だけの「作品」を作り込むことができます。

1. 2色のインク選び(Ink Configuration)

このツールの醍醐味です。「Ink A(影になる部分)」と「Ink B(光があたる部分)」の色を自由に選べます。例えば、深いネイビーと鮮やかな蛍光ピンクを組み合わせたり、ダークグリーンとゴールド(黄色)を合わせたり。補色関係にある色を選ぶと、重なった部分が濁って深みのある黒に近づき、非常に美しいコントラストが生まれます。迷ったときは「Shuffle」ボタンを押してみてください。自分では思いつかないような偶然の配色に出会えるかもしれません。

2. 版ズレの美学(Misalignment)

私が最もこだわったのがこの機能です。X軸(横)とY軸(縦)に、あえてインクの版をずらすことができます。通常、印刷業界では「版ズレ」はミスとされますが、レトロデザインにおいてはこれが最強の武器になります。少しずらすことで被写体の輪郭に「隙間」や「重なり」ができ、絵に動きと愛嬌が生まれます。

「通常はミスとされる版ズレが、レトロデザインでは最強の武器になる」という話は、デザインの世界における「正解は一つではない」ということを端的に示しています。

商業印刷の現場では、版ズレは品質管理上の不良です。しかし、表現の手段としてあえて版ズレを取り入れることで、機械的な完璧さでは出せない「人の手が介在した温かみ」が生まれます。

このギャップを理解するには、まず「正しい印刷とは何か」を知っている必要があります。基礎ができているからこそ、ルールを崩したときの面白さが際立つ――これはデザイン全般に言えることです。

3. 紙の質感とノイズ(Grain / Noise)

ツルツルのデジタル画像に、わら半紙や再生紙のようなザラザラとした質感を加えます。数値を上げれば上げるほど、古い新聞やストリート感のあるポスターのような荒々しい雰囲気に仕上がります。

4. インクの濃度(Ink Density)

インクが紙に染み込む強さを調整します。濃度を下げれば、使い古して色あせたポスターのように。濃度を上げれば、インクがたっぷりと乗った濃厚な風合いになります。2色が重なる部分(オーバープリント)の発色もこの数値で変化します。

 

どんなシーンで使える?

作例

このツールは、以下のようなクリエイティブ制作に最適です。

ZINEやフライヤーの素材作り

写真をそのまま使うと「普通のチラシ・ポスター」になってしまう時、このツールを通すだけで一気にアートワークのような雰囲気に変わります。

SNSの投稿画像

InstagramやX(旧Twitter)で、他とは違う世界観を出したい時に。特にポートレートや風景写真は、2色化することで劇的に印象が変わります。

Webデザインのアクセント

サイトの背景画像やバナー素材として。あえて解像度を落としたようなローファイ(Lo-Fi)な質感が、Webサイトに人間味を与えます。

イベントのポスター

DIY感のあるイベントや、音楽ライブ、個展などの告知ビジュアルに。

 

デザイナーからの「使いこなし」アドバイス

作例

最後に、このツールを使ってより良い結果を出すためのちょっとしたコツをお伝えします。

  • コツ①:コントラストの強い画像を使う 元画像がぼんやりしていると、2色に分けた時に絵が潰れてしまいがちです。陰影がはっきりしている写真や、輪郭が明確なイラストを使うと、非常にきれいな「版画風」の仕上がりになります。
  • コツ②:「Clean White」を活用する 背景が白くない写真(グレーなど)を使うと、画面全体にインクが乗ってしまい、重たい印象になることがあります。そんな時は「Clean White」のスライダーを上げてみてください。背景のノイズを飛ばし、被写体だけをくっきりと浮かび上がらせることができます。これを活用すると、Tシャツのプリントデザインのような抜け感のある画像が作れます。
  • コツ③:あえて極端にずらす 「Misalignment」を少し極端なくらい大きくずらすと、写真はもはや「図形」や「グラフィックパターン」のように見えてきます。写真としての情報を伝えることよりも、雰囲気やインパクトを重視したい場合は、思い切ったズレを楽しんでみてください。

「コントラストの強い画像を使う」「Clean Whiteを活用する」といった実用的なアドバイスは、写真の選定スキルにも通じるものがあります。

デザインの現場では、素材となる写真の質が仕上がりの8割を決めると言っても過言ではありません。このツールに限らず、写真をポスターやチラシに使用する場合も、「陰影がはっきりしている」「被写体が明確である」写真を選ぶことで、デザインの完成度がぐっと上がります。

また、「あえて極端にずらす」というアドバイスは、デザインにおける「実験の大切さ」を教えてくれます。自分の中の「ここまでが正解」という枠を意図的に壊してみると、予想外に面白い表現が見つかることがあります。

ASOBOADでは普段、クライアント様の課題解決のためのデザインを提供していますが、こういった「遊び心」や「実験」から生まれるデザインの可能性も大切にしていきたいと考えています。

登録不要&完全無料で公開していますので、ぜひ一度遊んでみてください。そして、もし面白い画像ができたらSNSなどでシェアしていただけると、開発者としてとても嬉しいです。

皆さんのクリエイティビティを刺激する一助になれば幸いです。

2C PRINT MAKERを使う

 

※「RISO」「RISOGRAPH」は理想科学工業株式会社の登録商標です。

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この記事について

執筆: ASOBOAD編集部

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