「LogoLounge Book 10」の10人の審査委員のうちの1人でもあり、高い評価のロゴを多数生み出しているAlex Tass 氏。今回はそんなAlex 氏へのインタビュー記事をご紹介したいと思います。Alex 氏は10年以上もグラフィックデザイナーとして成功を納め続けており、「デザインの指導者(design guru)」の称号を獲得しています。
この記事は海外のロゴデザインWEBマガジン”LogoLounge“の記事(by Ellen Healy)を翻訳しています。※掲載はLogoLoungeとデザイナーの許諾を得ています。
■あなた自身について教えてください。あなたはいったい誰なのか、またどのようにして今の地位を築いたかをお聞かせください。
こんにちは、私はAlexと言います。ロゴとアイデンティティデザインを中心としたグラフィックデザイナーです。人生のほとんどをヨーロッパで過ごし、かつヨーロッパ全土を旅しました。この経験が、私のヴィジュアルスタイルに何かしらの影響を与えていると思います。デザインは独学で習得しました。基本をマスターするだけで、2年間を費やしましたね。それは非常にゆっくりとした道のようにみえますが、12年経った今でも、初めてグラフィックデザインを経験したとき、プロとしてキャリアをスタートしてからの10年を考えても、まだ自分自身は学びの途中であると感じます。
あと電子音楽をやっていて、今もメジャーで演奏していてスキルを磨いています。私はグラフィックデザインに興味があったのですが、当初はWEBデザインの方により興味を抱きました。DJをしている友達をサポートしようと、彼のためにWEBサイトを作成したからです。
友達をサポートして2年後、私はパーティーやイベントのためのポスターやフライヤーを作成する機会を頂きました。また、フェスティバルやDJ、クラブなどのロゴを作ることを通して、自分はロゴデザインが好きであることを発見しました。8年以上音楽産業のデザインアートの仕事をしましたが、その途中でロゴデザインに深く関わるようになり、より強い好奇心と情熱を持つようになりました。そしてロゴデザインを始めて数年後に、クラブ関連のデザインワークから得たグラフィックデザインの技術を利用し、アイデンティティとブランディングプロジェクトを発展させるため、ロゴデザインに注力することを決意しました。
■他のデザイナーと比べて、あなたのデザインを際立たせるものは何だと思いますか?どのような美学があなたのロゴをユニークにしているのですか?
それについては、特定の「これ」ということを言うのは難しいですね。いつも私の友人やほかのデザイナー・クライアントが私のスタイルについて語るとき、彼らは「君のロゴデザインはそのコンテクストを見ただけでわかる」と言います。私には、それは不思議に感じるんです。私が自分のロゴを見たときに彼らが言うようなことはわかりません。私はデザインを幾何学的に制作するのが好きで、対称性、バランスと整列のように基本的なルールに従うことをしていますし、かなり細部に注意を払うようにしており、最後の結果が出るまで私自身の考えが自分自身でもわからない事もあります。私は細部がすべてを変えると信じています。カラフルなヴィジュアルも好きですね。私のポートフォリオを見れば分かりますが、カラフルで、明るく、ビビットなロゴデザインばかりです。
■「良い・悪い・醜い」をどのように判断しますか?また、この仕事の好きな所、好きでは無い所を教えてください。
さっき言ったように、自分のロゴはたくさんの幾何学とロジックを含んでいます。私はこのことは良いことだと思いますし、他のデザイナーのロゴを見るときにもそう言った点を注視しています。もちろんカリグラフィーを基礎とした素晴らしいロゴや、幾何学やロジックよりオーガニックで流体的なアプローチのロゴはたくさんあります。私はこれらすべてのロゴデザインを「すばらしい」と考えます。逆に「悪い」と 「醜い」 は何かしらつながっていて、そう言ったロゴには統一感を失わせる多くの要素を持つロゴも含めるべきと考えます。例えば、不思議な色の組み合わせや、違うスタイルのエレメント同士の奇妙な組み合わせなどです。
質問の後半部分に答えると、私の仕事の好きなところは、ユニークで何か新しいものを作り上げたときに感じるプライドだと思います。好きじゃないところは私がクライアントの意図や意思決定への理解が及ばないとき、私が何かすばらしいことや方向性が見えたにも関わらず、クライアントは違うビジョンを持っていたときなどは本当にがっかりしますね。
■あなたにとって、デザイナーというキャリアが自分の道だと感じた瞬間はどのような時だったか教えてください。
最初にこの仕事に出会った瞬間から魅了されていました。多分、自分にとって正しい道だとわかる前にそれを感じていたと思います。私は、デザイナーを生涯の仕事にするように望んでいましたが、このようなデザインのキャリアを持つ事になるとは夢にも思いませんでした。時間が過ぎていく中で自然と気づきましたが、プロジェクトが私のポートフォリオに集まってくるようになっていました。私の気づかないところでそのような出来事が起こっただけです。
■今までで一番ハードだったけど、最もやりがいがあったと思う仕事は何でしたか?どんな仕事や作品がいちばん誇りに思えますか?
大変うれしいことにグーグルといくつかのプロジェクトをする機会がありました。私にとって、本当に誇らしい結果とプロセスになりましたね。それは難しくもやり甲斐のあるマテリアルデザインに関する仕事で、グーグルそのもののヴィジュアルアイデンティティ言語、ガイドラインに関わるものでした。最終結果への満足度に大きく貢献しましたし、新しいビジョン・方向性を学んでいるように感じましたね。
最も大変で、最もやりがいがある?そうですね….私は8年間クラブ産業のクライアントと仕事をしました。それは、ハードで、とても困難な共同作業であり、高いレベルの仕事を要求されていたので大変でした。しかし、それは私の好きな電子音楽に大変近くつながっていたので、やりがいは大きかったですね。それはシーンの一部になれる夢のような仕事です。ただ、誇りに思える仕事はたくさんあるので、どれか1つを選ぶことはかなり難しいですね。個人的には、ロゴデザインが大好きなので、今後もどんどん関わっていきたいと思っています。自分の喜びの為に。
■“デザイナーズブロック(デザイナーの壁=ある種のスランプ)”を抜け出すためにあなたはどのようにしていますか?
私は、ただひたすら冒険をし続けています。パブロ・ピカソが「インスピレーションは存在する。ただ、そのためには自分が働かなければならない。」と言ったように。
■何が、そして誰があなたにインスピレーションを与えますか?
私は、以前そして今でも完全に、M.C.Escher の仕事に魅了されています。高校の時に初めて彼の作品を発見し、今でも私はその瞬間の感激と彼の作品に言葉を失ったことを思い出します。たくさんの現代デザイナーやエージェンシー・スタジオアートなど、私を鼓舞するものがたくさんあります。私は、彼らがオンラインに出したものや、彼らの作った作品すべてをデータで保管するようにしています。Deividas Bielskis は私の親友の一人で、デザイン業界で働いている時に出会いました。Bielskis と Dalius Stuoka、この2人は私が友人と呼べるデザイナーで、私の同僚や以前のデザインパートナー以外では、私を鼓舞してくれる源になっています。
その他、私の周りの全てが私を鼓舞します。旅行・映画・読書、そしてさまざまな経験が私を鼓舞し、私のデザインの美学を形作ります。音楽も大きな役割を果たしていて、例え大きい影響じゃなくとも、何かしらの影響を私に与えていると思います。
■何が、そして誰があなたにとってドリームプロジェクト、もしくはクライアントになりますか?
レゴですね。私は、レゴの大ファンでありコレクターです。私が将来的に一緒に仕事をしたい産業がたくさんあって、例えば、航空産業や自動車産業などです。現時点で、私が言いたいのは、私の趣味に関連しているクライアントは全てドリームクライアントであり、ドリームプロジェクトであると言えます。しかし、人生は驚きの連続で、予想しないことやイメージ出来ないことがいろいろ起こります。だから私は、これらのクライアントやプロジェクトと関わる可能性はあり、まだそれに出会っていないだけだと思います。
■これからデザインの世界で頑張ろうとしている人や、すでにその世界で頑張っている人たちへアドバイスはありますか?
これからデザインを始めようとしている人たちへは、出来る限り研究するようにとアドバイスしたいです。本やブログ・チュートリアルなどを読んで理解し、それをアーカイブ、または印刷し、可能な限りのアイデアを得るようにするといいと思います。そして、デザインコミュニティに接して、色々なつながりを持っておくことです。それらの努力が合わさる事で成功に近づき、デザイナーとしての個人的な成長につながると信じています。
すでにこの世界でキャリアを積んでいる人へのアドバイスは、ん~、なんといっていいか分からないですね、様々なものに携わるようにしようということですかね。
■最近、「LogoLounge Book 10」という本の為に審査したロゴについてお聞かせください。そのプロセスを楽しめましたか?またそれはシリーズでベストの本になりそうですか?
審査員という仕事は私にとっては初めてのことで、新鮮で興味深い経験になりました。たくさんの素晴らしいロゴデザインに会いましたし、間違いなく「LogoLounge Book 10」は読む人を鼓舞するような本になるでしょう。このような特別なプロモーション、多くのエントリーと幅広い審査員を含め考えると、これは絶対にベストな本ですよ。
designer : Alex Tass
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