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ビジネス

SNSを開けば、息をのむほど素晴らしいデザインを作るクリエイターが溢れています。グラフィックの精度、魅力的な色彩、美しいタイポグラフィ。自分より上手い人なんて山ほどいると痛感させられる日々です。

駆け出しの頃や独立を意識し始めた時期ほど「もっと腕を磨けば仕事が舞い込んでくるはずだ」と考えがちです。しかし現実には、デザインのクオリティと仕事の受注量や単価は、必ずしも比例しません。

もちろん技術が無意味なわけではありません。デザインの質と仕事の成果には間違いなく相関関係があります。ただ、それは「一定のクオリティを超えていること」が大前提の話であって、腕を磨くだけでビジネスが自動的に回りはじめるわけではないのです。

では、技術磨きと同等、あるいはそれ以上に大切なものは何でしょうか。それは「どういうポジションで商売をするか」という構造の設計です。

 

なぜデザイナーのビジネスモデルはふんわりしてしまうのか

実店舗を持つビジネスを想像してみてください。カフェや服屋を開くとなれば、物件を探し、敷金や保証金を払い、内装工事をして、毎月数十万円の賃料や光熱費という固定費を支払うことになります。失敗すれば一発で生活が破綻するリスクを抱えているため、誰に何をどうやって売り、どうやって固定費を回収して利益を残すのか、オープン前に嫌というほど考え抜きます。

一方で、デザイナーの独立は非常に低コストです。パソコンとデザインソフト、インターネット環境さえあれば、明日からでも「フリーランスデザイナー」を名乗ることができます。

この手軽さは大きなメリットですが、同時に落とし穴でもあります。初期費用や固定費があまりかからない分「見通しが立っていなくてもなんとなくスタートできてしまう」のです。

綿密なビジネスモデルがないまま海に飛び出し、SNSの案件募集に飛びついたり、クラウドソーシングで買い叩かれたりしながら「もっとデザインが上手くなれば状況が変わるはず」と技術の向上だけに希望を託してしまう。これが、多くのデザイナーが低単価から抜け出せなくなる典型的な構造です。

 

「腕が良い人」の中から選ばれるためのポジショニング

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デザインの技術は、お寿司屋さんで言えば「新鮮な魚を仕入れて美味しく握れること」と同じです。美味しい寿司を握れる職人さんが溢れている街で、ただ「美味しい寿司作ります」と看板を掲げても埋もれてしまいます。

ビジネスとして成り立たせるためには、自分という存在をどこに置くかというポジショニングが必要です。

例えば同じ「Webデザインができる」というスキルでも、置き場所によって価値の決まり方は全く変わります。

  • 領域の特化:特定の業界(医療、不動産、伝統工芸など)の事情や商習慣に誰よりも詳しい
  • プロセスの拡張:デザインの前段階である「言語化やコンセプト設計」から伴走できる
  • スピードと柔軟性:小回りが利き、課題抽出から納品までのレスポンスが圧倒的に早い
  • 目的へのコミット:単に見た目を整えるだけでなく、採用獲得や集客といった数字の達成にフォーカスする

「デザインが上手いデザイナー」というある意味でありふれた言葉で戦うのではなく、「〇〇という課題を解決できる唯一無二の存在」というポジションを取ること。これができると、価格競争から一歩抜け出すことができます。

 

自分のポジションを見つけるための3つの問い

ポジション

ポジショニングと言っても、難しく考える必要はありません。これまでの経験や自身の得意なこと、価値観を棚卸しすることから始まります。

まずは以下の3つの問いを自分に投げかけてみてください。

1. これまで一番喜ばれたのは、デザインの「どの部分」だったか?

クライアントが本当に評価してくれたのは、ビジュアルの美しさそのものだったでしょうか。それとも、話しにくい悩みを丁寧に聞き出してくれたこと、複雑な情報をわかりやすく整理してくれたこと、あるいは納期をきっちり守って素早く対応したことでしょうか。自分が当たり前にやっていることの中に、他者から見た価値が潜んでいます。

2. 自分が苦にならず、他人より自然とできてしまうことは何か?

デザイン以外で、自分が苦なくできる作業や関心事を探します。文章を書くことが好き、数値の分析が得意、人の話を聞くのが得意、特定の業界に異常に詳しい。それらの要素とデザインを掛け合わせることで、固有のポジションが生まれます。

3. クライアントが抱えている本当の恐怖や面倒は何か?

クライアントは「デザインそのもの」が欲しいわけではありません。「失敗したくない」「選ぶ手間を減らしたい」「売上を伸ばしたい」という目的を持っています。相手の恐怖や面倒くささを最も解消できるポジションはどこかを考えることが、独自の価値につながります。

 

技術を磨くことと、商売を設計すること

誤解してほしくないのは、デザインの技術磨きを否定しているわけではないということです。技術は基礎体力であり、高ければ高いほど提供できる価値の幅は広がります。

しかし、技術という基礎体力だけを鍛えても、戦う土俵(ポジショニング)を間違えてしまえば、相応の対価を得ることはできません。

「腕を磨く時間」と「どう売るかを考える時間」。この2つの輪をバランスよく回していくことが大切です。

もし今、単価が上がらずに悩んでいたり、将来独立してやっていけるか不安を感じていたりするなら、一旦デザインソフトを閉じてみてください。そして、自分がどのようなポジションで商売をしていくのか、白紙のノートに書き出してみることをおすすめします。

 

デザインが上手くなれば仕事がじゃんじゃん来るだろう…と考えるのは少し楽観的だと思います。勿論相関性はあるけれど、比例ではないはず。このSNSだけでも、見回せば上手い人なんて山ほどいます。腕は腕として、どういうポジションで商売するか?のイメージは超大事ではないでしょうか。これって実店舗のあるビジネスだと自然と最初に考える所だと思うのです。賃料とか固定費ガンガン削られるから、見通しが立ってないとヤバイので。デザイナーは比較的低コストで独立できる分、ビジネスモデルがふんわりしがちというのはあると思います。

X (Twitter) – Sep 7, 2023

この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

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トミナガハルキ

グラフィックデザイナー/AMIX 代表。独学でデザインを学び、パッケージメーカー→美容系ベンチャー→家庭用品メーカーでのデザイン・広報運営を経て独立。現在は小さな事務所を拠点にASOBOAD等のサービスを運営し、ロゴ・パッケージ・広告物を中心に制作しています。著書『#ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン』は各カテゴリでベストセラーを獲得。2020年Adobe Creative Residency選出。ブログでは、10年以上の実務から学んだことや働き方のヒントを等身大の視点で発信しています。