「デザインの仕事」とは何か - 課題解決とコミュニケーション設計の専門職
「デザインの仕事」と聞くと、多くの人は「絵を描くこと」「センス良く装飾すること」といった、感性的な作業をイメージするかもしれません。もちろん、美的感覚や創造性は不可欠な要素です。しかし、プロフェッショナルの現場における「デザインの仕事」の本質は、そこにありません。デザインの仕事の本質とは、「課題解決」であり、「コミュニケーションの設計」です。
クライアント(企業や個人)が抱える「売上を上げたい」「ブランドイメージを向上させたい」「新商品の魅力を伝えたい」「情報を分かりやすく整理したい」といったビジネス上の具体的な「課題」や「目的」に対し、「視覚(ビジュアル)」という専門的な手段を用いて、最も効果的な「解決策」を提示し、形にすること。それがデザインの仕事です。
そのため、デザイナーは「なぜ、この形なのか」「なぜ、この色なのか」「なぜ、この配置なのか」というすべての表現に対して、目的から逆算した明確な「論理(ロジック)」を持っています。デザインとは、論理的な思考と、それを最適な形で表現する創造性(クリエイティビティ)の両輪によって駆動する、高度な専門職なのです。
デザインの「領域」による専門分野の違い
「デザイン」と一口に言っても、その活躍する「領域(フィールド)」によって、求められる専門知識やスキルは大きく異なります。
2D / グラフィック領域(主に静止画、印刷物、平面)
情報を平面(紙やWeb上の静止画)に落とし込み、コミュニケーションを設計する分野です。
■ グラフィックデザイナー
既存の紹介文にある通り、ポスター、チラシ、雑誌広告、ロゴ、商品パッケージなど、主に印刷物や平面のビジュアルコミュニケーション全般を担います。タイポグラフィ(文字組み)、色彩理論、レイアウト(情報配置)の専門家であり、DTP(印刷入稿)に関する技術知識も不可欠です。情報の「整理整頓能力」と「魅力を引き出す表現力」が求められます。
■ エディトリアルデザイナー
グラフィックデザイナーの中でも、特に「ページ物」――すなわち雑誌、書籍、パンフレット、社内報、カタログなど、複数のページで構成される媒体のデザインを専門とします。 「読みやすさ(可読性)」を担保する高度な文字組み技術や、読み手を飽きさせずに最後まで導く「情報の流れ(編集設計)」を構築する能力が求められます。グリッドシステム(レイアウトの骨格)を駆使し、一貫性のあるデザインを構築します。
■ パッケージデザイナー
商品の「顔」であるパッケージ(箱、袋、ラベル、ボトルなど)を専門にデザインします。 無数の競合商品が並ぶ店頭の棚で、瞬時に消費者の「視線」を捉える力、その商品の「ブランド世界観」や「中身の魅力(シズル感など)」を伝える表現力が必要です。さらに、紙やプラスチックといった「素材」の知識、輸送時の「保護機能」、法的な「表示義務(成分表示など)」、そして「立体(3D)」としての構造設計まで、非常に多岐にわたる知識が求められる分野です。
■ イラストレーター
デザイナーとは似て非なる専門職ですが、密接に関連します。デザイナーが「全体の設計」を行うのに対し、イラストレーターは「特定の絵(イラストレーション)」を描く専門家です。広告や雑誌、Webサイト上で、写真では表現できない世界観や、親しみやすさ、特定のトーン(例:写実的、マンガ的、抽象的)を表現するために、アートディレクターやデザイナーの依頼(オリエンテーション)に基づき、ビジュアルを制作します。
デジタル / Web領域(主に画面、インタラクション)
PCやスマートフォンの「画面(スクリーン)」上で展開されるデザインを担い、ユーザーの「操作(インタラクション)」を前提とする分野です。
■ Webデザイナー
企業のコーポレートサイト、ブランドサイト、ランディングページ(LP)など、Webサイトの視覚的なデザイン全般を担当します。見た目の美しさ(トーン&マナー)を整えるだけでなく、ユーザーが「迷わず」「使いやすい」と感じる情報設計(IA)や画面レイアウト(UI)を考慮します。多くの場合、HTML/CSSといったコーディングの基礎知識も求められ、PC、スマートフォン、タブレットなど異なる画面サイズに対応する「レスポンシブデザイン」のスキルも必須です。
■ UIデザイナー
Webサイトやスマートフォンアプリの「操作画面(インターフェース)」の設計に特化した専門職です。ユーザーがサービスを「直感的に」「ストレスなく」操作できるように、ボタンの配置、アイコンの形状、フィードバック(例:クリックした時の反応)などを論理的に設計します。ビジュアルの美しさと「機能性(使いやすさ)」を高度に両立させる役割です。
■ UXデザイナー
UIデザイナーよりもさらに「上流工程」や「全体像」を担います。UIが「どう見えるか(How)」をデザインするのに対し、UXは「なぜそれが必要か(Why)」から考え、「ユーザー体験全体(Experience)」を設計します。 ユーザーへのリサーチ、インタビューを通じて「本質的な課題」を発見し、その解決策として製品やサービスが「どうあるべきか」の骨格(ペルソナ、ジャーニーマップ、ワイヤーフレームなど)を作ります。デザインの対象は、ビジュアルだけでなく、サービスの「流れ」や「仕組み」そのものに及びます。
ディレクション / 統括領域
個別のデザイン作業(手を動かすこと)よりも、「コンセプト策定」や「チームの統率」といった上流工程を担う管理職・監督職です。
■ アートディレクター
既存の紹介文にある通り、広告キャンペーンやブランド全体の「ビジュアル表現における総責任者」です。 まず、プロジェクトの「ビジュアルコンセプト(どのような世界観で、どのようなトーンで伝えるか)」を策定します。そして、そのコンセプトを実現するために、グラフィックデザイナー、カメラマン、イラストレーター、Webデザイナーといった個々の専門スタッフを「チーム」として率い、具体的な指示を出し、最終的なアウトプットの「品質(クオリティ)」に全責任を持ちます。多くは、経験を積んだグラフィックデザイナーがキャリアアップして就く役職です。
■ クリエイティブディレクター
アートディレクターよりもさらに上流、プロジェクトの「総監督」です。 アートディレクターが「ビジュアル(どう見せるか)」の責任者であるのに対し、クリエイティブディレクターは、そのビジュアルも含めた「アイデア全体(何を伝えるか)」の責任者です。 広告キャンペーンであれば、キャッチコピー(コピーライター担当)、CM(CMプランナー担当)、そしてビジュアル(アートディレクター担当)のすべてを統括し、「核となる一つのアイデア(コアアイデア)」で貫かれた、一貫性のあるクリエイティブ戦略を立案・実行します。
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