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ドリンクラベルのデザイン

心を掴む「一杯」の秘密〜ドリンクラベルに隠されたデザインのポイント


ドリンクラベルのデザイン

普段の買い物で、まだ試したことがないものを買うとき、結局はパッケージが素敵なデザインのものにしたという経験はないでしょうか。

スーパーマーケットやコンビニの棚にずらりと並ぶ、無数のドリンク。その中から、私たちは何を基準に「これだ!」と一つを選び取るのでしょう。味や価格はもちろんですが、実はその最終的な購入の決め手となっているのが、ボトルの顔とも言える「パッケージデザイン」なのです。

パッケージデザインは、単なる商品の包装ではありません。それは「物言わぬセールスマン」であり、ブランドの物語を伝え、消費者の心を動かす強力なコミュニケーションツールです。実際、ある調査によれば、消費者の約3分の2が店舗内で購入する商品を決定しており[1]その多くが計画外の購買であると言われています[2]。この「衝動買い」を後押しする最後のひと押しこそ、優れたパッケージデザインが持つ力なのです。

パッケージ市場

世界のパッケージング市場は2024年に1兆1,400億米ドルに達し、今後も成長が見込まれる巨大な市場です[3]。この競争の激しい市場で勝ち抜くために、各ブランドはデザインに多大な投資を行っています。なぜなら、優れたデザインは商品の魅力を最大限に引き出し、消費者の購買意欲を刺激するだけでなく、ブランドへの信頼と愛着を育むからです。

この記事では、海外の優れたドリンクラベルデザインを例に、その裏に隠されたデザインの意図や心理的な効果を、専門的な視点から深く掘り下げていきます。デザインがどのように消費者の感情に訴えかけ、購買行動に影響を与えるのか。その秘密を一緒に解き明かしていきましょう。(※紹介するパッケージデザインは当サイトの制作事例ではありません)

パッケージデザイン制作料金について

 

大胆なタッチのイラストによる個性的で上質なパッケージデザイン

パッケージデザイン作例を見る (via Behance)

まず最初にご紹介するのは、ウクライナのデザイナー、Katalina Maievska氏が手がけたロンドンのクラフト製品店「Stokey’s」のカクテルラベルです。このデザインの最大の特徴は、一度見たら忘れられない、個性的で大胆なイラストレーションにあります。

描かれているのは、奇妙とも言えるユニークなポーズをとるキャラクターたち。彼らは、美味しいカクテルを味わった時の、言葉にならない心の動きや高揚感を象徴的に表現しています。これは、製品の機能的な価値(味や品質)だけでなく、それによってもたらされる感情的な価値(楽しさ、解放感)を伝える「エモ消費」[4] を巧みに刺激するアプローチと言えるでしょう。

専門的視点からの分析

このデザインの秀逸さは、単にイラストがユニークである点に留まりません。色彩心理学の観点から見ると、モノクロームの配色は重要な役割を果たしています。色情報を削ぎ落とすことで、イラストの持つ線の力強さやキャラクターの表情が際立ち、よりアーティスティックで洗練された印象を与えます。これにより、商品の「上質さ」や「こだわり」といった価値を視覚的に伝えているのです。黒は高級感や洗練さを、白は純粋さやシンプルさを象徴する色であり[5]、この組み合わせがクラフトカクテルという製品のポジショニングと見事に合致しています。

また、手書き風の勢いのあるタッチは、機械的な大量生産品とは一線を画す「クラフト感」や「手作り感」を演出し、消費者との心理的な距離を縮める効果があります。消費者は、作り手の情熱やこだわりを直感的に感じ取り、製品に対して特別な親近感を抱くのです。

レイアウトに目を向けると、商品名やロゴタイプはイラストを引き立てるように控えめに配置されています。これは、まず感情に訴えかけるイラストで消費者の注意を惹きつけ、その後に詳細な情報を読ませるという、計算された視線誘導の設計です。このように、Stokey’sのラベルデザインは、単なる飾りではなく、ブランドの物語を伝え、消費者の感情を揺さぶり、そして購買へと導くための、緻密に設計された戦略的なデザインなのです。

 

意外なモチーフによるお洒落なアプローチが特徴のパッケージデザイン

パッケージデザイン作例を見る (via Behance)

続いては、ルーマニアのデザイナー、Miruna Cojocaru氏による牛乳ブランド「GOODMILK」のパッケージデザインです。このデザインは、私たちの「牛乳パッケージ」に対する固定観念を鮮やかに裏切ってくれます。

通常、牛乳のパッケージと言えば、牧場、牛、緑の草原、ミルククラウンといった、製品と直接的に関連するモチーフが使われるのが一般的です。しかし、GOODMILKのデザインは、宇宙服、惑星、スペースシャトルといった、牛乳とは全く結びつかないSF的なモチーフを大胆に採用しています。この予期せぬ組み合わせこそが、消費者に強烈なインパクトを与え、棚に並ぶ数多の競合製品の中から際立たせるための鍵となっています。

専門的視点からの分析

このデザインは、宇宙開発が持つ「最先端」「高潔さ」「未知への挑戦」といったポジティブなイメージを、SFモチーフを介してGOODMILKというブランドに転移させています。これにより、消費者は無意識のうちに「この牛乳は何か新しい、特別な価値を持っているのではないか」と感じるようになります。

色彩計画もまた、このコンセプトを支える重要な要素です。ベースカラーである真っ白は、牛乳そのものの色であり、清潔感や純粋さを象徴します。そこにアクセントとして加えられた青色は、宇宙のイメージを喚起すると同時に、色彩心理学的には信頼感や冷静さ、そして清涼感を与える色です[5]。この「白と青」の組み合わせは、乳製品のフレッシュなイメージを損なうことなく、未来的で洗練された世界観を構築することに成功しています。

さらに、ボトル全体の丸みを帯びた曲線的なシルエットは、硬質で冷たい印象になりがちなSFモチーフに、親しみやすさや優しさを加えています。このように、GOODMILKのパッケージは、直接的な表現を避けながらも、色、形、そしてモチーフの持つ象徴性を巧みに組み合わせることで、製品の「新鮮さ」と「高品質」という本質的な価値を、より魅力的で記憶に残る形で消費者に伝えているのです。これは、消費者の知的好奇心を刺激し、ブランドとの間に深いエンゲージメントを築く、非常に洗練されたアプローチと言えるでしょう。

 

細かい工夫と演出が魅力のシンプルなパッケージデザイン

パッケージデザイン作例を見る (via Behance)

最後にご紹介するのは、アゼルバイジャンのデザイナー、Saida Amrahova氏が手がけた赤ワイン「KINGLIFE」のパッケージデザインです。その名の通り、トランプのキングをラベルの中央に堂々と配置した、非常にストレートで分かりやすいデザインが特徴です。

一見するとシンプルですが、このデザインには、製品の価値を高めるための細やかな工夫と演出が随所に施されています。こうしたディテールへのこだわりこそが、ありきたりなデザインと、人の心に残る優れたデザインとを分ける境界線となります。

専門的視点からの分析

このデザインの核心は、「シンプルさ」と「高級感」の絶妙なバランスにあります。まず、キングのモチーフは、ブランド名「KINGLIFE」と直接的にリンクしており、消費者にブランド名を瞬時に記憶させる効果があります。しかし、その表現方法は決して安直ではありません。

色彩に注目すると、トランプで一般的に使われる鮮やかな赤色ではなく、深みのある「ワインレッド」を採用しています。これにより、製品そのものである赤ワインとの視覚的な連続性を生み出し、デザインに一体感と説得力をもたらしています。さらに、ラベルの地色には、穏やかで洗練された印象を与えるクリーム色を使用。この配色は、ワインが持つ「上質さ」や「豊かな味わい」を暗示し、消費者の期待感を高めます。

レイアウトも秀逸です。キングの絵柄を、一般的な正面向きではなく「真横向き」にすることで、ワインボトルの持つ縦長のスマートなシルエットと調和させています。この一体感が、デザインに安定感と品格を与えているのです。また、タイポグラフィ(文字デザイン)は、クラシックで権威のあるセリフ体を選びながらも、過度な装飾を排したモダンな処理を施すことで、伝統と現代性の融合を表現しています。

このように、KINGLIFEのパッケージデザインは、誰もが知っている「キング」という強力なシンボルを用いながらも、色彩、レイアウト、タイポグラフィといったデザイン要素を緻密にコントロールすることで、ありふれたイメージを「王者の品格」へと昇華させています。これは、消費者に安心感と信頼感を与えつつ、製品のプレミアムな価値を雄弁に物語る、計算され尽くしたデザイン戦略と言えるでしょう。

 

2024年、消費者の心を掴むパッケージデザインの最新トレンド

テクスチャ

これまで見てきたように、優れたパッケージデザインは、単に美しいだけでなく、明確な戦略に基づいています。では、現在の市場では、どのようなデザインが消費者の心を掴んでいるのでしょうか。ここでは、2024年のパッケージデザインにおける主要なトレンドをいくつかご紹介します。

トレンド1:サステナビリティと高級感の両立

環境問題への関心の高まりは、パッケージデザインにも大きな影響を与えています。リサイクル可能な素材や植物由来のインクを使用するなど、環境に配慮した「サステナブル」なパッケージは、今やブランドの社会的責任を示す上で不可欠な要素です。しかし、単にエコであるだけでは消費者の心は動きません。2024年のトレンドは、環境配慮と「高級感」や「デザイン性」を両立させることにあります[6]。例えば、再生紙を使いながらも、特殊なエンボス加工や箔押しを施すことで、独特の風合いと上質感を演出する。こうした工夫が、環境意識の高い消費者の支持を集めています。

トレンド2:感情に訴えかける「エモ消費」と「推し活」

モノが溢れる現代において、消費者は単なる機能的価値だけでなく、製品やブランドとの感情的なつながりを求めるようになっています。これを「エモ消費」と呼びます[4]。パッケージデザインにおいても、懐かしさを感じさせるレトロなデザインや、心温まるストーリーを感じさせるイラストなど、消費者の感情に直接訴えかけるアプローチが重要になっています。

また、特定のブランドやキャラクターを熱狂的に応援する「推し活」文化の広がりも無視できません。限定版のコラボレーションパッケージや、集めたくなるようなシリーズデザインは、ファンの所有欲を刺激し、ブランドへの忠誠心を高める強力な武器となります。

トレンド3:ミニマリズムと大胆なタイポグラフィ

情報過多の時代だからこそ、シンプルで分かりやすいデザインが際立ちます。不要な装飾を削ぎ落とし、製品の本質的な魅力を伝える「ミニマリズム」は、引き続き重要なデザイントレンドです。特に、美しいタイポグラフィ(文字デザイン)を主役にしたデザインは、洗練された印象を与え、力強いメッセージを伝えることができます。フォントの種類、サイズ、配置、色などを巧みに操ることで、ブランドの個性や世界観を雄弁に物語ることができるのです。

これらのトレンドは、消費者の価値観やライフスタイルの変化を反映しています。優れたデザイナーは、こうした時代の空気感を敏感に察知し、それをデザインに落とし込むことで、消費者の共感を呼ぶパッケージを生み出しているのです。

 

まとめ – デザインの力を信じ、次なる一手へ

パッケージ

一見すると単なるお洒落なラベルも、その裏側には、消費者の心理を深く洞察し、ブランドの価値を最大化するための緻密な戦略が隠されています。

大胆なイラストで感情を揺さぶるデザイン、常識を覆すモチーフで新たなブランド体験を創造するデザイン、そして、シンプルさの中に品格を宿すデザイン。これらの事例はすべて、パッケージデザインが単なる「包装」ではなく、ブランドと消費者を繋ぐ「コミュニケーション」であることを示しています。

今日の消費者は、製品の機能や品質だけでなく、その背景にあるストーリーや世界観、そしてブランドが示す価値観に共感して購買を決定します。パッケージデザインは、その共感を生み出すための最も強力なツールの一つです。

もしあなたが、自社商品の売上やブランドイメージに課題を感じているのであれば、一度パッケージデザインを見直してみてはいかがでしょうか。デザインの力を信じ、専門家と共に戦略を練ることで、これまで届かなかった顧客層にアプローチし、ブランドを新たなステージへと導くことができるかもしれません。

この記事が、あなたのビジネスにおける次なる一手を考えるきっかけとなれば幸いです。

パッケージデザイン制作はこちら

 


【参考文献】
[1] Weinberg, P., & Gottwald, W. (1982). Impulsive consumer buying as a result of emotions. Journal of Business Research, 10(1), 43-57.
[2] 石井裕明. (2009). パッケージ・デザインと消費者反応: 制御焦点理論によるシンメトリー性に関する考察. 早稲田大学大学院商学研究科紀要, 69, 1-21.
[3] 株式会社グローバルインフォメーション. (2024). パッケージング – 市場規模 分析 動向 – グローバルインフォメーション. https://www.gii.co.jp/report/moi1549768-packaging-market-share-analysis-industry-trends.html
[4] 株式会社ザ・パック. (2024). 【消費の多様化】2024年パッケージトレンドまとめ その2. https://www.thepack.co.jp/blog/products/a189
[5] Bulan. (2022). 売れるパッケージデザインの色の法則とは?4大販売色やタブー色も. https://bulan.co/swings/4major-sales-colors
[6] 株式会社ザ・パック. (2024). 【2024年問題対策・環境対応】2024年パッケージトレンドまとめ. https://www.thepack.co.jp/blog/products/a188

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この記事について

執筆: ASOBOAD編集部

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