会社案内や採用パンフレットでは、各部署から原稿・写真・数値データを集める工程で進行が止まることがあります。制作担当者が完成原稿を待ち続けるのではなく、誰が何を確認するかを先に決めると、準備を進めやすくなります。
社内に専任の広報・編集チームがある企業であれば、各部門の担当者から完成された原稿を提出してもらう進め方も機能します。しかし、日々の営業や製造、開発などの現場業務を抱える社員に対して「〇〇事業の紹介文を400字で来週までに書いてください」と白紙の状態で依頼すると、何から手をつければよいか迷って後回しにされやすく、結果として制作全体の進行が数週間から数ヶ月遅れてしまうケースが少なくありません。
ここでは、パンフレット制作の推進担当者が一人で抱え込まず、社内からスムーズに原稿や素材を集めるための実践的な段取りを整理します。
1. なぜ社内の原稿回収は遅れやすいのか?
現場の社員や部門長が期限通りに原稿を出せない背景には、怠慢ではなく以下の3つの心理的・実務的なハードルが考えられます。
- 「パンフレットらしい格好いい文章を書かなければ」というプレッシャー 印刷物として残るため、普段のメールのように書けず、最初の一文目で手が止まってしまう。
- どこまで詳しく書くべきか(粒度や専門用語の基準)がわからない 顧客向けに噛み砕くべきか、専門的な技術仕様を書くべきかの判断基準が見えない。
- 通常業務の合間に「ゼロから構成を考える時間」が取れない 白紙の状態から400字の文章を組み立てるにはまとまった集中時間が必要になり、日々の優先業務に押されて先送りになってしまう。
つまり、原稿をスムーズに集めるための最大のコツは、現場の社員に「白紙から文章を作らせる」のをやめ、「既存のたたき台を確認・修正するだけ」または「短い質問に箇条書きで答えるだけ」の状態に分解して依頼することにあります。
2. 社内から無理なく原稿・素材を集める4つの実践ステップ
① 既存の社内資料を棚卸しし、推進側で「6割のたたき台」を先に作る
各部署へ原稿執筆を依頼する前に、まずは社内にある既存の素材(公式Webサイトの文章、旧版のパンフレット、営業部門が使っているPowerPoint提案書、求人票、プレスリリースなど)を集め、推進担当者や制作会社側でページ構成に当てはめた「6割完成のたたき台」を作ります。
人は「白紙から400字書いてください」と言われると手が止まりますが、「営業スライドをもとに仮でこうまとめたので、情報が古い箇所やニュアンスが違う箇所だけ赤字で直してください」と渡されると、確認する対象が絞られ、返答しやすくなります。
② 書いてもらう場合は「3つの質問の穴埋めシート」にする
新しい事業や社員紹介など、どうしても現場の担当者に書いてもらう必要がある箇所は、「自由に書いてください」ではなく、箇条書きで答えられる具体的な質問シート(アンケート形式)にして配ります。
| 対象ページ | 手が止まりやすい丸投げ依頼(Before) | 答えやすい「穴埋め質問シート」の依頼例(After) |
|---|---|---|
| 事業・サービス紹介 | 「〇〇事業部の強みと紹介文を400字程度でまとめてください」 | ①主な顧客はどんな業種・どんな悩みを持つ企業ですか? ②他社ではなく自部門が選ばれる一番の理由は何ですか? ③代表的な導入実績や対応可能な数値(納期・ロット等)を3つ教えてください。 |
| 製品・技術ページ | 「新製品〇〇の特徴とアピールポイントを書いてください」 | ①従来品と比べて、現場のどんな手間やコストが減りますか? ②技術的に一番工夫した部分(特許・素材・構造など)はどこですか? ③必ず載せておくべき規格・型番・寸法データを添付してください。 |
| 社員・スタッフ紹介 | 「パンフレット用の自己紹介と仕事のやりがいを300字で書いてください」 | ①現在の主な担当業務を1行で教えてください。 ②お客様や取引先と接するうえで、一番心がけていることは何ですか? ③これまでで一番嬉しかったお客様からの言葉やエピソードを教えてください。 |
このように質問を具体化し、「綺麗な文章にしなくて大丈夫です。箇条書きのメモで返してください」と一言添えるだけで、回収のハードルが大きく下がります。
③ 多忙な担当者には「15分の口頭ヒアリング」に切り替える
経営陣(代表挨拶)や、文章を書くこと自体に不慣れな製造現場の職人・エンジニアなどからは、テキスト提出を待つのをやめて「15分だけお時間をいただき、こちらから3つ質問させてください」と口頭ヒアリングのアポイントを取る方法が有効です。
スマートフォンのボイスレコーダーやオンライン会議の録画機能で会話を記録し、推進担当者や制作会社のライターが後から文章にまとめて本人に確認してもらうほうが、書き言葉では出てこない熱量や現場ならではの具体的なエピソードを短期間で引き出すことができます。
④ 写真やロゴ・数値データの「収集ルール」を最初に共有する
文章と同時に集める写真やロゴデータについては、後から「画質が粗くて印刷に使えない」「掲載許可が取れていなかった」という手戻りを防ぐため、依頼時に以下の3点を伝えておきます。
- 画像はWordやExcelに貼り付けず「元の画像ファイル(JPEG/PNG)」のまま共有する(設定や保存方法によって圧縮されることがあるため、原寸の画像も別に共有します)
- スマートフォンで現場を撮る場合は「明るい時間帯に、横位置で、周囲の背景まで少し広めに」撮影する(後からパンフレットの枠に合わせてトリミングしやすくするため)
- 取引先の社名・ロゴや納入先写真を載せる場合は、先方の広報・担当者へ掲載可否を確認しておく
口頭で聞く場合も、発言者に原稿を確認してもらいます。録音する場合は目的・保管方法を説明して同意を得ておきましょう。

3. スケジュールを遅らせない「2段階の社内期限」設定
制作会社へ原稿を引き渡す日が「5月20日」だった場合、社内への提出期限もそのまま「5月20日」と伝えてしまうと、1部署でも遅れた瞬間に全体のスケジュールが後ろ倒しになります。
社内向けの期限は、制作会社への提出日よりも最低3〜5営業日前倒しした日付を設定し、さらに以下のように2段階に分けて声をかけると進行が安定します。
- 第1ステップ(構成・箇条書き回収):「〇月〇日までに、穴埋めシートの箇条書きメモだけお戻しください(数字など未確定の箇所は『確認中』のままで構いません)」
- 第2ステップ(初校デザイン後の事実確認):「デザイナーが紙面にレイアウトした初校PDFをお送りします。〇月〇日までに、数値や専門用語に誤りがないか最終確認をお願いします」
未確定の数字が1つあるために原稿全体の提出が止まってしまうのを防ぎ、「わかるところから先に回収してレイアウトを進める」段取りが実務では有効です。
まとめ:素材の確認担当と期限を先に決める
パンフレットの原稿作成は、推進担当者や社内のメンバーだけで完璧な文章に仕上げる必要はありません。箇条書きのメモや既存の営業資料、あるいは短いインタビューの機会さえあれば、そこから読み手に伝わる構成や文章へ整える工程を計画できます。編集・取材・執筆まで外部へ依頼する場合は、デザイン制作と分けて対応範囲と費用を確認しましょう。
ASOBOADのパンフレット・会社案内制作では、ご提供いただく原稿や写真をもとに、内容を伝える紙面のデザインを行います。原稿の準備状況や必要なページ数を共有し、依頼できる作業範囲とスケジュールを事前にご相談ください。
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