パンフレットや会社案内の制作が終盤に差し掛かり、印刷の発注段階になると、必ず出てくるのが「で、今回は何部刷りますか?」という問いかけです。

このとき、具体的な配布計画がないまま「前回も3,000部だったから今回も3,000部で」「印刷会社の料金表を見ると、1,000部より3,000部のほうが1部あたりの単価がぐっと安くなるから3,000部にしておこう」と決めてしまうケースは少なくありません。

確かにオフセット印刷では、部数が増えるほど1部あたりの単価が下がる傾向があります。しかし、そこには「保管スペースのコスト」と「情報の鮮度落ち(陳腐化)リスク」という、見積書には表れない隠れたコストが潜んでいます。年間300部しか使わない会社が3,000部を刷ってしまうと、10年分の在庫を抱えることになり、2年後に役員交代や拠点移転、法改正やサービス内容の変更が起きた瞬間、倉庫に眠る2,400部がそのままでは使えなくなる可能性があります。

パンフレットの適正部数は、印刷単価の安さからではなく、「これから1年〜2年の間に、誰が・どこで・どのように手渡すか」という配布計画(出口戦略)から逆算して決めるのが合理的です。ここでは、在庫余りや急な欠品を防ぐための部数算出の方法と、社内での在庫管理の仕組みについて整理します。

1. 「1部あたりの単価の罠」に陥らないための試算視点

まず確認しておきたいのは、印刷部数による総額の違いと、改訂サイクルの関係です。たとえばA4仕上がり8ページ(中綴じ)の会社案内を印刷する場合を考えてみましょう(※金額は計算方法を説明するための仮定であり、相場やASOBOADの見積価格ではありません)。

  • 1,000部印刷した場合:印刷費総額 約8万円(1部あたり80円)
  • 3,000部印刷した場合:印刷費総額 約11万円(1部あたり約37円)

1部あたりの単価だけを見れば、3,000部のほうが半額以下でお得に見えます。しかし、もし1年半後に事業内容の追加や住所変更があり、残っていた2,000部を廃棄して刷り直すことになったらどうでしょうか。「実際に使われた1,000部」のために11万円+廃棄費用を払ったことになり、小分けに増刷した場合の総額と比較する必要があります。増刷回数・版代・送料・廃棄量を含めなければ、どちらが安いかは判断できません。

つまり、印刷部数を決める際は「このパンフレットに載せている情報が、修正なしでそのまま使える寿命は何年か?」という情報の賞味期限を先に設定することが重要です。

  • 賞味期限が短い情報を含む場合(目安:半年〜1年) 価格や料金プラン、季節ごとのラインナップ、頻繁に変わる導入実績数、毎年更新される採用募集要項などが本編に直接印刷されている場合は、半年〜1年で使い切れる部数に絞ります。
  • 賞味期限が長い普遍的な情報に絞っている場合(目安:2年〜3年) 企業理念、コア技術、製造プロセス、基本的な会社概要などに絞り、変わりやすい価格表や実績一覧は「別紙の挟み込み」にしている場合は、2〜3年分の使用見込み部数をまとめて刷ることで印刷単価を抑えるメリットが活きてきます。

2. 「どこで何部使うか」を積み上げる4つの配布チャネル

「なんとなく1,000部」といった概算から抜け出すために、社内の主要な4つの消化ルート(配布チャネル)ごとに年間の使用見込み数を足し算してみます。

配布チャネル 算出の考え方(計算式の例) 見落としやすいポイント
① 日常の営業・商談・挨拶回り 営業担当者数 × 月間新規訪問・提案件数 × 12ヶ月
(例:営業5名 × 月6件 × 12ヶ月 = 年間360部)
既存顧客への新サービス案内や、銀行・仕入先への定期挨拶で渡す分も加算しておく。
② 展示会・見本市・セミナー出展 出展回数 × 1回あたりの目標配布数
(例:年2回出展 × 各300部 = 年間600部)
展示会は3日間で数百部が一気になくなる最大の消化イベント。出展予定がある年は別枠で確保する。
③ 採用活動(会社説明会・学校訪問) 合同説明会・個別説明会の参加見込み人数 + 大学キャリアセンター等への送付数
(例:学生150名 + 学校・紹介会社50部 = 年間200部)
インターンシップや内定者家族への送付分など、時期によって集中的に必要になる。
④ 資料請求・郵送DM・店頭設置 Webからの月間資料請求数 × 12ヶ月 + 店頭ラックの月間補充数 × 12ヶ月
(例:月15件 × 12ヶ月 = 年間180部)
新規開拓の郵送DMキャンペーンなどを企画している場合は、その送付リスト数をそのまま加算する。

この例の年間使用見込みは、360+600+200+180=1,340部です。たとえば1年分に予備10%を加えるなら1,340×1.1=1,474部。1年半分に同じ予備率を掛けるなら1,340×1.5×1.1=2,211部となります。イベントの前倒しや改訂予定を確認し、印刷会社の対応ロットに合わせて切り上げます。予備率10%は計算例であり、固定の正解ではありません。

カレンダーとノートに予定を書き込む手元

3. 「刷ったのに営業マンが持ち歩かない」を防ぐ社内運用の工夫

せっかく良いパンフレットを作って倉庫に納品されたのに、1年経っても段ボールがほとんど開けられていない——という場合、原因は部数計算ではなく「社内の置き場所と配布オペレーション」にあることが少なくありません。

① 倉庫の奥ではなく「営業動線のすぐ手元」に定位置を作る

納品された段ボール箱をそのまま備品倉庫の奥深くに積み上げてしまうと、営業スタッフは忙しい外出前にわざわざ箱を開けに行かなくなります。総務や営業フロアの入り口に「すぐに取り出せるパンフレット専用ラック」を設け、提案用のクリアファイルや名刺を差し込めるポケット付きフォルダとセットにして常備しておくと、商談への持参率が自然と高まります。

② 「最低在庫ライン(発注点)」の箱に赤い目印をつけておく

逆に、「来週の展示会で300部必要なのに、倉庫を見たらあと50部しかなかった!」という欠品事故も現場ではよく起こります。増刷に必要な日数は仕様・校正・印刷工程・配送先で変わります。見積もり時に、データ確定から手元に届くまでの日数を確認してください。 これを防ぐ簡単な方法が、増刷が届くまでの使用見込み数と予備を残した箱に、大きく「この箱を開けたら総務(〇〇)へ増刷連絡!」と書いた赤紙(かんばん)を貼っておくことです。デジタルな在庫管理表をつけなくても、箱を開けた瞬間に増刷のタイミングが誰でもわかるようになります。

4. まとめ:パンフレットは「倉庫に置くもの」ではなく「世の中に配り切るもの」

パンフレットは、必要な相手に渡せる状態で管理することが大切です。「配布実績を記録し、次の改訂前に必要な部数を見直そう」という目標を持って部数を決めると、日々の営業や広報活動にも前向きなリズムが生まれます。

ASOBOADのパンフレット・会社案内制作では、企業の営業スタイルや年間の展示会・採用スケジュールをお伺いしたうえで、無駄な在庫や改訂リスクを抑えるページ構成や、改訂しやすい別紙併用デザインの制作を承っています。新規制作やリニューアルをご検討の際は、部数や納品方法のご相談も含めてぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆・運営について

執筆・編集ASOBOAD編集部

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