
米国Google社の生成AIサービス「Gemini」が、2025年6月から8月にかけてGemini 2.5にアップデートされました。2024年末に2.0への更新がおこなわれましたが、それ以来のメジャーアップデートです。
それにともなって、Geminiのロゴとアプリアイコンのデザインも、6月下旬から7月上旬にかけて段階的にリニューアルされました。
Geminiのロゴは2024年に初めて登場しました。今回のリニューアルで2代目のデザインとなります。
Google社のGeminiは、生成AIブームを巻き起こしたOpenAIのChatGPTと激しいライバル関係にあります。今回のGeminiのロゴリニューアルには、どのような意図があるのでしょうか。
シンボルマークがGoogleカラーに

・Geminiのロゴ / prima91 – stock.adobe.com
2024年2月から使われてきた先代のロゴタイプは、ブルーからパープル系へのグラデーションでした。Google社のオリジナル書体「Product Sans」をベースとした文字で組まれています。「m」の右上に小さな星印が添えられていました。

・Geminiの旧ロゴ / prima91 – stock.adobe.com
2025年の6月から登場した新しいロゴデザインは、星のシンボルマークとロゴタイプとの組み合わせになっています。
先代のデザインでは、輝きを示す効果のような扱いだった星が、シンボルマークとして独立しました。また、ロゴタイプの書体は維持されていますが、色はグラデーションから黒の単色に変更されました。
星のカラーリングは、赤、黄、緑、青のグラデーションになりました。この4色はGoogleのブランドを象徴するカラーパレットです。
先代の星形エレメントは、正方形を円弧で切り抜いたような形状で、4つの頂点は鋭くとがっていました。新しいデザインでは、先端は丸みを帯びています。4辺のカーブもゆるやかです。
UX/UIやブランド体験についての情報発信をしている、韓国のサイト『Design Compass』では、星のデザイン変更について次のように解説しています。
「(丸みを帯びた柔らかい曲線への修正は)小さな画面でもより明確で親しみやすいデザインにするための措置です」
新しい星形シンボルマークは、アプリのアイコンとしても使われています。
強化されたGoogleブランドとのつながり

PixieMe – stock.adobe.com
企業など組織向けのクラウド型アプリケーションサービス「Google Workspace(グーグル ワークスペース)」では、GmailやDrive、Meet、CalendarなどとともにGeminiも提供されています。
Google Wordspaceの公式サイトを見ると、利用可能なアプリケーションが一覧できます。そのアプリアイコンからは、Gmail、Driveなどでおなじみの4色のデザインと、刷新されたGeminiのデザインとの一貫性が見て取れます。
2024年10月末にGoogle社はWorkspaceのアップデートをアナウンスしていました。中核となるアプリのひとつとしてGeminiがWorkspaceに組み込まれることの公表でした。
4色のブランドカラーをまとったプロダクトは、Googleの中心的アイテムです。
Workspaceで提供されているサービスに限らず、Google検索、Google Maps、Chrome、PlayといったGoogleブランドの代表的なアプリは、Googleカラー4色で構成されています。
今回のGeminiのデザインアップデートで登場した4色のシンボルマークは、GeminiがGoogleブランドを代表するアプリになったことを視覚的に示しているのです。
Geminiの公式サイトを開くと、GeminiのシンボルマークがGoogleの「G」マークに変容するアニメーションが表示されます。これはまさに、GeminiがGoogleブランドの中核であることを象徴しています。
Gemini 2.0から2.5への進化
Geminiのロゴやアプリアイコンのデザイン刷新が、2025年の6月下旬から7月上旬というタイミングだったのは、Geminiのアップデートが関係しているようです。
2025年6月から8月にかけて、Gemini 2.0から2.5へのアップデートがおこなわれました。
これは、テキスト、画像、音声、動画、コードなど、さまざまな種類の情報をシームレスに理解して、連携させる「ネイティブ・マルチモーダル」な能力の質を高めるものです。
たとえば、Gemini 2.0は動画内の情報を分析する能力を持っていましたが、Gemini 2.5では、誰が話しているのかを識別する機能が加わりました。また、音声出力がさらに表現豊かになり、微妙なニュアンスを再現できるようになりました。
また、指示に応えるだけでなく、ユーザーの意図をくみ取って、能動的にサポートする「パートナー」としての役割も強化されています。
たとえば、Gmailでのメール作成時には、過去のやり取りやGoogleドライブ内の資料を踏まえて、返信の文面を提案します。動画を制作するときには、キャラクターやシーンのスタイルを統一したり、カメラの動きを指示したりすることが可能になるなど、クリエイティブな能力も向上しました。
無料で利用できるモデルとして「Gemini 2.5 Pro」と「Gemini 2.5 Flash」のふたつのモデルが提供されています。
今回、それぞれの用途が明確に区別されました。「2.5 Pro」は複雑で高度な推論が可能で、数学、コーディングに特化したモデルです。「2.5 Flash」はレスポンスが速く、チャットボットや、大量のデータ処理、日常的な質問への応答に適しています。
Gemini 2.5のロゴリニューアルは、このようなGemini自体の大きなアップデートのタイミングでおこなわれたのです。
デザイン哲学「Material 3 Expressive」
GeminiロゴのリニューアルやGemini 2.5へのアップデートがおこなわれるなかで、スマートフォンのインターフェイスのデザインの変更も進められています。
Androidユーザーは、Geminiのアイコンが変わったことに加えて、操作に対する反応が変わったことにも驚きました。ボタンの形状と大きさ、検索ボックス、さまざまなエレメントの動きなどが新しくなり、ルック&フィールが大きく変わっています。
スマートフォンだけでなく、Androidデバイスすべてにわたってアップデートが現在も進行中です。
こういった変更は、2025年5月に発表された「Material 3 Expressive(マテリアル・スリー・エクスプレッシブ)」というGoogleのデザイン哲学にもとづいています。
この「Material 3 Express」に先立って、2022年10月には、包括的なデザイン哲学である「Material Design 3」がリリースされていました。機能的で美しいプロダクトを効率的に構築するために、デザインの共通言語を提供するのが目的でした。カラーパレット、タイポブラフィ、形状、部品、動きなど、あらゆる要素がふくまれています。
そこで提唱されていたのが、ユーザーの感情に訴えかける「エクスプレッシブデザイン」(感情豊かなデザイン)という新しいアプローチでした。
そして、この哲学を具体的に示したのが、「Material 3 Expressive」です。
Material 3の原則を守りながら、さらに大胆な色使い、感情に訴えかけるモーション、パーソナライズ可能な形状などによって「感情豊かなユーザー体験」を目指しています。
具体的な特徴は次のようなものです。
- 丸みを帯びた柔らかい形状
- 流れるようなグラデーションやアニメーション
- より豊かな色彩表現
新しいGeminiのロゴは、まさにこの「Material 3 Expressive」の哲学を体現しています。シャープで未来的な印象のデザインから、柔らかいグラデーションと丸みを帯びた形状に変わったのは、Geminiが特別な技術ではなく、人々の感情に寄り添う親しみやすい存在になったということを表現しているのでしょう。
「Bard」として誕生し「Gemini」へと進化
Google社は、生成AIの一種である大規模言語モデル(LLM)の開発を2021年から進めていましたが、経営陣は、AI関連のサービスやプロダクトのリリースについては慎重でした。
2022年11月30日に、米国のOpenAI社から「ChatGPT」がリリースされました。わずか1ヶ月ほどでユーザー数が1億人を超えるなど、世界中でセンセーションを巻き起こしました。生成AIブームの始まりです。
これを受けて、Googleの社内や投資家などステークホルダーから、ChatGPTへの対抗策を求められた結果、Googleが出した答えが「Google Bard(グーグルバード)」という対話型AIサービスでした。
吟遊詩人「Bard」の登場
「Google Bard」は、2023年3月に米国と英国で一般公開され、日本語版は2023年5月からスタートしました。
「Bard」という単語は、「吟遊詩人」または「詩人」という意味です。人間が使うような自然な文章で回答することを期待したネーミングです。人間味のあるAIチャットサービスを目指していたことがうかがえます。
テキスト形式のデータ学習に特化していましたが、テキスト以外の画像や音声、動画の学習は不得意なサービスでした。
ふたつの星とロゴタイプの組み合わせ

・Bardのロゴ / gguy – stock.adobe.com
Bardのロゴは、大小ふたつの星に似たシンボルマークとロゴタイプの組み合わせです。ロゴタイプはダークグレーで、モダンなサンセリフ書体で組まれています。
ふたつのシンボルマークは、パープルとブルーのグラデーションです。突起部は丸みがあり、全体にやわらかい印象を与えます。シンボルマークはモーション付きのアイコンとしても使われていました。
Bardのロゴは、現在のGeminiのロゴと同じ構成と雰囲気を持っています。先代Geminiの、どちらかといえばシャープなテイストとは異なり、人間的で親しみやすい印象です。
Google Geminiのコンセプトは、人間のようなマルチモーダルな情報処理、高度な推論と創造性を持つAIです。
この点では、Bardと2025年バージョンのGeminiではデザイン的方向性が共通しているといえるでしょう。
より高度にマルチモーダルな「Gemini」への進化
ChatGPTへの対抗策として急いでリリースしたことや、試験的な意味合いもあったことから、Bardへの市場の評価はかならずしも好ましいものではありませんでした。
Google社はBardの能力を向上させるために、基盤となる大規模言語モデルをより高度なものへと何度か変更しました。最終的に採用されたのは「Gemini 1.0 Pro」というモデルです。
基盤モデルGeminiは、テキスト、画像、音声、動画、コードなど、さまざまな種類の情報をシームレスに理解して連携できる、マルチモーダルな能力が強化されています。
また、Google社はAI戦略全体を見直しました。AIチャットサービスだけではなく、Google検索や広告、プロダクトにGeminiモデルを組み込んで、統一的なAI体験を提供することを目指します。
当初は、「Gemini ProによってBardが大幅にパワーアップ」というようなアナウンスがされていましたが、テキストベースのチャットボットとしての性格が強かった「Bard」に代わる新ブランドとして、AIモデル名と同じ「Gemini」をサービス名として採用したのです。
星座を連想させるGeminiの2024年版ロゴデザイン
BardからGeminiへのブランドリニューアルは、2024年2月におこなわれました。
よりインタラクティブになり、複雑なユーザーの質問にも対応できるようになった新AIサービスにふさわしいデザインのロゴも作られることになります。
「Gemini(ジェミニ)」は双子座を意味します。双子座が象徴する性格は、好奇心、知性、コミュニケーション能力などです。
2024年版のロゴタイプに、星のシンボルが添えられているのは、この星座のイメージを反映しているのでしょう。星のシンボルは、アイコンとしても活用されました。
Bardのロゴには星がふたつありましたが、Geminiでは星がひとつなのが、ちょっとおもしろいです。
【参考資料】
[Google Gemini 公式サイト]
Learn about Gemini, the everyday AI assistant from Google (https://gemini.google/about/?hl=en)
Google のエブリデイ AI アシスタント、Gemini のご紹介 (https://gemini.google/about/)
Google Workspace: Secure Online Productivity & Collaboration Tools (https://workspace.google.com/intl/en/)
Gemini in Chrome — AI assistance, right in your browser (https://gemini.google/overview/gemini-in-chrome/)
Gemini アプリ: Google I/O 2025で発表した7アップデート (https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/gemini-app-updates-io-2025/)
[Material 3 Expressive]
Start building with Material 3 Expressive – Material Design (https://m3.material.io/blog/building-with-m3-expressive)
[メディア]
Google’s new Gemini logo is pretty rounded (https://9to5google.com/2025/07/01/new-gemini-logo/)
Google Gemini New Logo Revealed – Design Compass (https://designcompass.org/en/2025/07/07/google-gemini-new-logo/)
[Apple Intelligence]
Apple Intelligence – Apple (https://www.apple.com/apple-intelligence/)
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