9月の記事では、smARTerのクリエイティブディレクターでありイラストレーターでデザイナーのシャーウィン・シュワルツロック氏のインタビューをご紹介します。ミネアポリスに拠点を置くシャーウィン氏は、数えきれないほどのクリエイティブエージェンシーのプロジェクトを手がけてきました。
この記事は海外のロゴデザインWEBマガジン”LogoLounge“の記事(by Ellen Healy)を翻訳しています。※掲載はLogoLoungeとデザイナーの許諾を得ています。
■少し自己紹介をお願いします。ご自身のバックグラウンド、仕事、smARTerについて教えてください。
アート、デザイン、広告は始めから全て1つの物に溶け合っているように見えました。
数年間にわたり、コーポレートデザイナー、プロのコミックイラストレーター、芸術家、ミネアポリスの広告エージェンシーのクリエイティブディレクターとして働きました。現在は2つの仕事をしていて、他のクリエイティブ企業にイラスト要素(ストーリーボード、ロゴ、アイコン、スポットイラストレーション)を提供するsmARTerという小さな商業アートスタジオの経営と、フルタイムでFloraFaunaという中規模クライアントのブランディングと広告を担当する企業の経営をしています。
■ご自身のスタイルをどう説明しますか?他のデザイナーとどのように違いますか?
これはいつも言っていることですが、私は世界トップのデザイナーでもイラストレーターでもありません(ここミネアポリスだけでも才能あふれる人達がたくさんいますからね!)。しかし、この2つの世界が交わる場所では、私が王様です。この世界には、本格的なデザインとイラストレーションの両方の経験を積んだデザイナーは少ないのです。私はラッキーだと思います。
「smARTer」を立ち上げたのは、それが私のバリュープロポジション(提供価値)を形づけるものだからです。私はデザイナーであり、アートディレクターであり、クリエイティブディレクターでした。ですから私がイラストを手がける時は、クライアントの要望がわかるのです。多くのイラストレーターのように女性の髪の毛をどう描くかにこだわるのではなく、私はブランドの目標にこだわります。この観点で、始めから正しい解決策を提供することを約束します。
■あなたのデザインプロセスについて教えてください。
まだ若手の頃、色々なことを探究する時間がありました。私のボスが持っていたデザインの本の山に埋もれることができました。現在では、締め切りに追われるためこのような娯楽はできませんが、経験が役に立つ時です。若い頃はサムネイルのアイデアを一つ一つ調べる必要がありました。しかし今では、直感的にどれが良いかわかります。戦略に関しては私はとても厳しいですよ。時間をかけて消費者、ポジショニングバリュー、ブランドバリューを理解することで、創造力が正しい方向にのみ向くようにしています。
■グラフィックデザイナーになりたいとずっと思っていましたか?この仕事を選んだいきさつと理由を教えてください。
私はラッキーでした。幼い頃から何をしたいかわかっていました。才能のある友達が学校にいて、彼らには将来の選択肢がいくつかありました。しかし私には選択肢はありませんでした。絵を描くことしかできず、それもあまり上手くなかったのですが、画家にでもなろうと思っていましたね。10代の頃になって、広告をやってみたいと思うようになりました。高校では小さな新聞のコミックを描いて、締め切りを守ることを学びました。大学では、昔ながらのグラフィックデザインを学びながらFargoの広告エージェンシーで働いていました。
■どんなデザイナーやアーティストに憧れて育ちましたか?
ミネソタ出身としては、Chuck AndersonやDuffyチームは大きな憧れでした。Michael Mignolaはグラフィックデザイナーのような考え方をするので、彼のコミックアートが大好きでした。60年代の広告アートとデザインには未だに驚きます。今のアートは偉大なる人々の発見によって成り立っているのです。
■あなたのウェブサイトによれば、あなたはグラフィックデザイナーであり、コミックイラストレーターであり、クリエイティブディレクターです。どのような道のりだったか、どのようにしてこれらの仕事に就いたのか教えてください。
先ほども少しお話したことですが、更に言えば新しいことを学ぶ好奇心と欲望がきっかけでした。コミックアートとストーリーテリングは独学で学びました。ポジショニングとマーケティングを学ぶために、自分のイラストレーション/デザイン事務所を広告エージェンシーの中に移動させました。
とてもお金がかかったことですが、私は賢くなり、仕事にも転機が訪れました。まだ行きたい場所はたくさんありますが、海外に住むことも「することリスト」に加えておきたいですね。自宅勤務は向いていません。他のアーティストたちと共に仕事をして、挑戦していく(私のメンターはいつも会話を「もし…」で始めていました)のが良いことだと思います。
■自身の一番気に入っているロゴデザイン(複数可)は何ですか?
気に入っているロゴがいくつかあります。ファンのお気に入りではないかもしれませんが、個人的には挑戦の末に生まれた素晴らしいロゴデザインだと思っています。
SとFの文字と孔雀を男性のライフスタイルブランドのSavoir Faireのクレストにするのは、かなり苦労しました。
Heimie’s Madeのロゴを「頑張り過ぎていない」ように時間をかけましたが、却下されてしまいました。
ポップカルチャーと政治についてのラジオ番組のロゴは上手くできていたと思います。
よく見ると、ライオンの中にC、W、T、Cの文字が見えてきます。
Mittのロゴはよくある政治のロゴに見えますが、他に類を見ないワードマークを作ることでそのブランドイメージがしっかりと支えられると思います。
最後に、ブランドマーケティング企業の3、2、1にはたくさんのメッセージが込められています。より少ないことはより多いことです。
これらのロゴデザインはどれも好きですが、私が満足したプロジェクトは一番最初から参加させていただいたものでした。役割が決まる前に呼ばれました。竹から作られたトイレットペーパーを使って日用品の市場占有率を上げるのが目標でした。アメリカの一般家庭では竹製品はあまり使われていないため、壁がたくさんありました。私たちは、標的市場を「環境に対しての意識が高く、リサイクル紙の製品を購入することに抵抗がない人達」に絞りました。
私たちはTeslaのマーケティングハンドブックからの1ページを参考にすることにしました。ほとんどのリサイクル製品は消費者を説得することができていました。私たちは、消費者達にこれらの製品について前向きな姿勢で教えることにしました。貴重なパッケージの表面に面白いアイコンなどを使いました。素材の名前と、私たちの戦略のように「楽しさ」が含まれたBim Bam Booという名前に決定しました。
ここではパッケージとブランディングが自然と協力しあって、製品のバリュープロポジションを明確にし、ブランドのアイデンティティを表しているのがわかります。
■良いデザインとデザイナーは何から生まれますか?
とにかく美しいものが芸術です。良いデザインには特定の目的があります。芸術もデザインも素晴らしいですが、それらの違いを理解することで大きな違いが生まれます。
良いデザイナーは、明確な目標を掲げることが成功につながることを知っています。私たちは誰でも始めは美しいものに惹かれてしましがちです。しかし、クライアントのお金を使う時は、良い結果を出すべきです。例えば、Super Bowlの途中のCMは誰でも好きですよね。次の日には、うんちをしている面白い鳥の広告について話して・・・でも、どんな製品の広告だったか覚えているでしょうか?莫大な費用がかかっている広告によって私たちの考えは1インチほどしか変わらないのです。
■駆け出しのデザイナー達へアドバイスはありますか?
グラフィックデザインとマスコミはたいていの場合大学などでは別々の学科に分かれています。これがいまいち理解できませんでした。デザイナーは早い時期から記者と仕事をしたほうがいいと思うからです。もしくは、デザイナーも記事を書いて、記者もデザインをしたほうがいいです。デザイナーが記事を書けないとか、記者がデザインできないといったことはないと思います。
■もし望みが叶うならどんなプロジェクトをしたいですか?またはどんなクライアントを担当したいですか?
変に聞こえるかもしれませんが、私は特定の企業を求めることはしません。メンズファッション、葉巻、スコッチが大好きですが、だからといってその分野のクライアントを求めません。満足しないからです。
私は私のクライアントの問題を解決することに満足します。ブランドの問題ではないのです。よく考えてみれば、これは多くの人に当てはまることだと思います。素晴らしい仕事やクライアントがあるのは、素晴らしい人々との協力のおかげです。私たちを尊敬し、私たちと共に笑い、挑戦してくれる人々です。素晴らしい人々のおかげで素晴らしいクライアントがいるのだと思います。
designer : Sherwin Schwartzrock
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