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フリーランス

デザイナー&フリーランス市場の未来〜需要が高まる職種とスキルとは?


新型コロナ禍の影響やリモートワークの普及を背景に、フリーランスとして働くデザイナーの数が国内外で急増しています。オンラインによる案件受注が当たり前となり、地理的な制約を超えて多様な企業やクライアントとつながる機会が広がりました。さらに、デジタル技術の進化やAIの台頭によってデザインのあり方そのものが変わりつつあり、フリーランスであっても最新技術にアクセスしながら活躍の幅を広げることが可能になっています。

本記事では、フリーランス・デザイン市場の規模や収入データ、需要の高い職種・スキル、そして今後のトレンドまでを包括的に解説します。これからフリーランスの道を目指す方はもちろん、すでにフリーランスとして活躍中の方が次のステップを考えるうえでも役立つ情報をご紹介します。ぜひ新しい時代の働き方のヒントとしてご一読ください。

 

デザイナー・フリーランス市場の規模と成長

デザイナー

フリーランス人口の拡大がもたらすインパクト

日本では近年フリーランス人口が大きく増加しています。ランサーズの調査によれば、広義のフリーランス人口は2021年時点で約1,577万人に達し、国内労働力人口の2割超(2015年比で68%増)となりました。同年のフリーランス経済規模は約23.8兆円で、2015年から約9.2兆円拡大しています 。特に新型コロナ下の2020~21年に市場が急伸し、前年から経済規模が約10兆円増加しました。

ランサーズ株式会社 プレスリリース『新・フリーランス実態調査2021-2022年版』

一方、内閣官房の推計では主業としてのフリーランス人口は2020年時点で約462万人(就業者の約7%)とされています。

そもそもフリーランスの定義とは?各機関の調査について

グローバル規模から見たデザイン市場の成長余地

グローバルに見ると、米国では2020年に5,900万人(労働者の36%)がフリーランスとして働き、年間約1.2兆ドル(約160兆円)を経済に生み出しました。デザイン産業に限れば、世界のグラフィックデザイン市場規模は2023年で約575億ドルに達し、2030年には約782億ドルへと年率4.5%で成長が見込まれています。

Upwork (Freelance Forward 2020 調査) プレスリリース

日本国内でもWebデザインやデジタルコンテンツ分野の需要増加に伴い、デザイン業界は拡大傾向にあります。

 

国内外で人気のデザイン職種・分野

人気のデザイン職種

UI/UXデザインが牽引するデジタル需要

デザイン関連職種では、デジタル領域の需要が特に伸びています。例えばUI/UXデザイナーやウェブデザイナーなどユーザー体験設計の分野は世界的に見て成長著しく、世界経済フォーラムの報告では「UI/UXデザイン」が今後最も成長する職種の一つに挙げられました。同報告によれば、伝統的なグラフィックデザイン職種はAIの普及などにより今後減少傾向にある一方、UI/UXデザインは今後5年間で50%近い成長が見込まれる急成長分野です。

グラフィックからウェブ開発まで、広がるニーズの差

米国労働統計局(BLS)の職業見通しでもグラフィックデザイナーの雇用伸び率は2023~2033年で+2%(平均以下)と低いのに対し、ウェブ開発者・デジタルデザイナーは2021~2031年で+23%と非常に高い成長予測が出ています。

米国労働統計局(BLS)「Occupational Outlook Handbook – Graphic Designers」

日本国内でも高まる関心と学習需要

日本国内でもWebデザインUI/UXデザインへの関心が高まっており、ランサーズの調査では20~40代フリーランスが今後学びたいスキルとして「プログラミング」や「Webデザイン」が上位に挙がりました。加えて、デジタル動画編集や3DCGデザイン、ゲーム・キャラクターデザインなど新興分野も人気が高まっています。伝統的なイラストレーショングラフィックデザインも依然根強い人気がありますが、求人・案件数の面ではデジタル分野が牽引している状況です。

 

フリーランスの働き方・収入データ

フリーランスの収入

多様化するフリーランスの形態

フリーランスの働き方は多様化しており、副業型から専業プロフェッショナル型まで様々です。近年は企業に常時雇用されつつ副業で活動する人や、複数企業と契約するパラレルワーカーも増えています。コロナ禍以降、リモートワークの普及で在宅時間が増えた管理職層がフリーランスとして活動を始めるケースも見られました。フリーランス全体のうち過半数(53.2%)がオンライン完結で仕事をした経験があり、オンライン活用者は非活用者より年間報酬が約10万円高く労働時間が短い傾向が確認されています。

収入格差と高スキル人材の台頭

収入面では、フリーランスの平均年収は会社員平均と比べるとやや低めです。リクルートワークス研究所の調査(2019年)では、主業フリーランスの平均年収は約299万円で、職種別ではIT技術者が約371万円と比較的高収入でした。フリーランス協会の「フリーランス白書2024」でも、回答者の現在年収帯は「200万~400万円未満」が26.8%と最も多く、次いで「200万円未満」(17.9%)、「400万~600万円未満」(15.8%)が続いており、多くのフリーランスは年収600万円未満に収まっています。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会『フリーランス白書2024』

もっとも、高スキルのITエンジニアやコンサル系フリーランスには年収1,000万円超も少なくなく、収入格差は大きいです。

クラウドソーシングと副業解禁が広げる可能性

また、仕事の受注形態としては、人脈やクライアントからの直接契約のほか、クラウドソーシングサイト経由の案件も一般的です。国内最大級のフリーランスマッチングサイトでは利用者が年々増加し、特に20~30代や副業希望者の参入が顕著です。

雇用形態の変化として、企業側でも副業解禁や業務委託活用が進み、政府も2023年にフリーランス取引適正化法(いわゆる「フリーランス新法」)を制定するなど環境整備が進んでいます。今後もフリーランス人口の拡大とともに、契約形態の多様化や社会的な支援策の充実が進むとみられます。

フリーランスの取引に関する新しい法律がスタート!安心して働ける環境を整備

 

需要の高いスキル

デザインのインターフェース

Adobe Creative CloudからFigmaまで、主要ツールの使い分け

現在、デザイン・クリエイティブ分野で需要が高いスキルはデジタル技術に集中しています。使用ソフトウェアでは、グラフィックデザイン分野でAdobe PhotoshopやIllustratorなどAdobe Creative Cloud製品が依然標準的です。

一方、UI/UXデザインではクラウドベースのFigmaが急速にシェアを伸ばし、2021年にはデザイナーの約77%がFigmaを利用するまでになりました。またプロトタイピングやモーションデザインにはAdobe XDやSketch、Procreateなども利用されていますが、チーム協業の容易さからFigmaへの集約が進んでいます。

UX Collective 「Figma continues to skyrocket – 63% reported it was their primary UI tool」

デザイナーにも求められる?プログラミングの基礎知識

プログラミング言語や技術面では、Webサイトやアプリ開発に関わるHTML/CSSJavaScriptはデザイナーにも基礎知識として重要です。特にフロントエンド開発スキルを持つデザイナー(いわゆる「コーダー」や「フロントエンドエンジニア」)は需要が高く、JavaScriptのフレームワークなどを扱えると重宝されます。フリーランスIT案件の人気スキルを見ると、JavaPython, PHP, Rubyといった言語の名前が上位に挙がっており、バックエンド・データ分析系のニーズも根強いことがわかります。

プロジェクト管理・営業・マーケティング…複合スキルが勝敗を分ける?

デザインツール以外にも、プロジェクト管理にはGitHubTrello、在宅協働にはSlackZoomなどのツール活用スキルも重視されます。加えて、多くのフリーランスは自身の専門分野以外にマーケティングや営業スキルも求められます。総じて、デジタルデザインツールの習熟とプログラミング言語の知識、そして創造的思考力やクライアント対応力などのソフトスキルのバランスが、現在の市場で高い評価を受けるスキルセットと言えます。

 

今後の業界トレンド

今後の業界の仕事

定着したリモートワークと“脱オフィス”のゆくえ

デザイン・フリーランス業界では、今後も働き方や技術面で大きな変革が予想されます。まずリモートワークの定着です。コロナ禍を契機に在宅・遠隔勤務が一般化し、国内でも2021年秋にはテレワーク実施率が全国平均32.2%、東京23区では55.2%に達しました。

米欧では半数以上、中国では7割超がテレワーク経験者との調査もあり、場所に縛られない働き方が当たり前になりつつあります。デザイナーもオンラインコラボレーションツールを駆使して世界中のクライアントと仕事する機会が増え、地方在住でも都市部並みの案件を受注できるようになっています。(※ただし、近年は世界的に脱リモートワークの動きも盛ん)

AIと人間の協働による「創造」へのシフト

次に、新技術の影響ではAI(人工知能)や自動化ツールの台頭が最大のトレンドです。生成AIは画像制作やレイアウト自動化などデザイン工程に浸透し始めており、例えば高度な画像生成AIによりバナーやサムネイルの自動作成が可能になっています。世界経済フォーラムの「未来の職業」報告では、今後AIの進歩によりグラフィックデザイナー職が縮小傾向になる一方で、UI/UXデザイナーなどより高度なデザイン職種は拡大すると予測されています。企業側でもデザイン業務へのAI導入が進み、「AIアシスタント」を活用して反復作業を効率化する動きがあります。

AR/VRやノーコードツールが広げる新しい可能性

一方で創造性コンセプト立案といった人間ならではの能力は依然不可欠です。AIが発展しても「クリエイティブな思考」は代替が難しく、2030年に向け重要性が増すスキルの第4位に「創造的思考」が挙げられています。したがって、デザイナーはAIをツールとして使いこなしつつ、人間にしかできない高付加価値の創造部分に注力する方向にシフトしていくでしょう。

その他、メタバースAR/VRの普及により仮想空間のUIデザインや3Dデザインの需要拡大、ノーコードツールの進化による非エンジニアでもデザイン実装できる環境なども考えられます。働き方の面ではフリーランスと企業の垣根がさらに低くなり、プロジェクト単位で柔軟にチーム編成する「ギグワーク」的な潮流が強まると予想されます。総じて、リモートワークの定着、新技術の導入、そしてAIとの協働が今後のデザイン業界を形作る重要トレンドであり、これらに対応するスキル習得や働き方の適応が求められるでしょう。

 

— 参考資料(出典)