輪音

RINNE — GENERATIVE SOUNDSCAPE

都市と自然の気配を、終わらないひとつの音楽に。
アルゴリズムが奏でつづける、一期一会の音の風景。

音の風景をひらく
SCROLL
CONCEPT

録音された音楽ではなく、
いま生まれている音楽を。

輪音(りんね)は、環境音楽=サウンドスケープをその場でアルゴリズムが作曲しつづけるブラウザツールです。再生ボタンを押した瞬間から、和音の移ろい、鐘の響き、太鼓の鼓動、風や水のテクスチャがリアルタイムに合成され、同じ音の並びが再び流れることは事実上ありません。

音源ファイルは一切使っていません。すべての音はWeb Audio APIによるリアルタイム・シンセシスで、あなたのブラウザの中で生成されています。だからループの継ぎ目がなく、何時間流しても音楽は終わりません。作業の傍らに、眠りの前に、あるいは空間演出のための持続音として、時間の長さを気にせず流しつづけられます。長く聴くものだからこそ、持続音は低めの音域に置き、声部ごとにゆっくりと満ち引きさせ、ときおり休符の「間」を挟む——聴き疲れしにくいことを音作りの軸にしています。

名前の「輪音」には、ふたつの意味を込めています。ひとつは、画面の中心で呼吸する環(リング)。音の低域に呼応してゆっくりと膨らみ、音が生まれるたびに光の粒を放ちます。もうひとつは「輪廻」。生まれては消えていく音のひとつひとつが、止まることのない大きな循環を描いていく—そんな二つのイメージを含めています。

7つのテーマはどれも同じ拍(BPM66)を共有しています。テーマを切り替えても鼓動は途切れず、風景だけが移ろっていく。異なる場所の音が、ひとつの大きな音楽としてつながるための設計です。

SEVEN THEMES

七つの音の風景

地・空・水・森・街・祭・命。それぞれのテーマは固有の音律・音色・風景の影絵を持っています。カーソルを重ねると、影たちが少しだけ近づいてきます。

EARTH

すべての音の土台になる、大地の風景。E2の重低音ドローンが地鳴りのように横たわり、その上をドリアン由来の陰影ある音階がゆっくりと旋回します。遠くの稜線がかすかに呼吸し、塵が立ちのぼり、鼓動のたびに地脈の亀裂がほのかに光ります。最も「低い」場所から世界を聴くテーマです。

音律:ドリアン系ペンタトニック / 低域ドローン・深い太鼓・鼓動で光る地脈と塵の影絵
SKY

視線を上げた先に広がる、明るく開かれた風景。浮遊感のあるリディアン・スケールが特徴で、#4の音が地上の重力からふっと解き放たれるような透明感を生みます。高域のきらめきと長い残響、淡くまたたく陽、そして羽ばたきながら旋回する鳥の群れ。

音律:リディアン / 高域のきらめき・最長クラスの残響・淡い陽と鳥の群れの影絵
WATER

水面の下から見上げる、揺らめく光の風景。マイナーペンタトニックの澄んだ鐘の音に、ピッチが沈み込む「水滴」の音が混ざります。エレクトリックピアノの柔らかな打鍵が最もよく似合うテーマ。見上げた水面から光が差し込み、泡が立ちのぼり、魚の群れが音に驚いてさっと向きを変えます。

音律:マイナーペンタトニック / 水滴音・エレピ・見上げた水面と光芒、泡、魚群の影絵
FOREST

木漏れ日と土の匂いがする、静寂の風景。メジャーペンタトニックの穏やかな響きを、広い帯域の風のテクスチャが包みます。枝のシルエットから葉が舞い落ち、夕暮れには蛍がまたたく。初期テーマとして最初に流れる、輪音の原風景です。

音律:メジャーペンタトニック / 風のテクスチャ・木漏れ日・落葉と蛍の影絵
CITY

夜のビル群を遠くから眺める、灯りの風景。リディアンの明るさに規則的なパルスが重なり、都市の鼓動を刻みます。エレピの打鍵が最も多く、窓灯りが点滅し、星がまたたき、ときおり光の列車が地平線を走り抜けていきます。深夜の作業のお供に。

音律:リディアン / パルス・エレピ・星空とビル群、窓灯り、走る光の影絵
FESTIVAL

遠くから聞こえてくる祭囃子のような、高揚の風景。琉球音階の華やかな響きに、大太鼓の「ドン」、トコトコと刻む小太鼓、締太鼓のアクセントが重なります。提灯の列が揺れる屋根の向こうで火の粉が舞い、大太鼓が鳴るたびに小さな花火がひらきます。

音律:琉球音階 / 太鼓三種(ドン・トコ・締)・提灯と花火、火の粉の影絵
LIFE

胎内のような暗がりで鼓動だけが響く、いちばん内側の風景。「ドクッ、ドクッ」という心拍のリズムを低い太鼓が刻み、温かなパッドがそれを包みます。クラゲたちは鼓動に合わせて傘をすぼめ、淡い波紋を残してふわりと浮かび上がる。眠りの前に。

音律:メジャーペンタトニック(低域) / 心拍パターン・脈動するクラゲと波紋の影絵
ALGORITHM

音はどうやって生まれているのか

輪音の音楽は、いくつかのシンプルなアルゴリズムの重なりでできています。仕組みを知ると、流れている音が少し違って聴こえてくるはずです。

生成的作曲 — 確率とランダムウォーク

和音はあらかじめ書かれた進行ではなく、各テーマの音階の上を重み付きランダムウォークで移動しながら2小節ごとに生成されます。鐘やエレピの一音一音も、拍ごとの確率判定で「鳴るか、鳴らないか」が決まります。サイコロを振りつづけるような作曲方法ですが、音階とコードトーンという制約の中で振られるため、偶然でありながら調和した響きになります。

1/fゆらぎ — 心地よさの数理

小川のせせらぎ、木漏れ日、心拍の間隔。自然界の心地よいリズムには「1/fゆらぎ」と呼ばれる、規則と不規則のあいだの揺らぎが共通して見られることが知られています。輪音ではこの揺らぎをテンポと音の強さに常時注入しており、「揺らぎ」スライダーでその深さを調整できます。機械的な正確さから、生き物の呼吸のような不正確さへ。

FM合成 — 鐘とエレクトリックピアノ

金属的な鐘の倍音や、エレクトリックピアノの柔らかな打鍵は、FM(周波数変調)合成で作っています。ひとつのサイン波で別のサイン波の周波数を揺さぶると、単純な波形からは生まれない複雑な倍音が一瞬で立ち上がります。鐘は音程の組み合わせを変えてうなりのある金属的な余韻を、エレピは打鍵の硬い響きを芯の音に重ねて、あの温かい音色をつくっています。

太鼓の合成 — 胴鳴りと皮のアタック

太鼓の音は2つの要素の合成です。ピッチが一瞬で沈み込むサイン波が「胴鳴り」を、ごく短いノイズのバーストが撥が皮を叩く「アタック」を担います。大太鼓のドン、小気味よく刻むトコトコ、張りつめた締太鼓——3種類の太鼓がテーマごとに異なるパターンで鳴り、祭では囃子を、命では心拍を刻みます。

Boidsアルゴリズム — 群れの知性

魚や鳥の群れの動きは、1987年に発表されたBoidsという古典的なアルゴリズムによるものです。「仲間に近づく」「向きを揃える」「ぶつからない」というたった3つのルールを各個体が守るだけで、誰も指揮していないのに群れ全体が生き物のようにうねりはじめます。太鼓が鳴ると群れが波立つよう、音と影絵は接続されています。

コンボリューションリバーブ — 空間の生成

残響もファイルを使わず、指数減衰するノイズからインパルス応答をその場で生成しています。テーマごとに残響の長さが異なり、祭の約4.5秒から空の約8.5秒まで、音の風景の「広さ」を決定づけています。最終段にはリミッターを備え、音が重なっても破綻しないよう音量を整えています。

HOW TO USE

使い方

中央の再生ボタンを押すと音がはじまります(ブラウザの仕様上、最初に一度タップが必要です)。下部の漢字一文字のボタンが7つのテーマで、再生中に切り替えても拍は途切れず、風景だけがクロスフェードで移ろいます。

4本のスライダーはそれぞれ、音の出来事の多さを決める「密度」、空間の広さを決める「残響」、音色の開き方を決める「明るさ」、そして人間味の深さを決める「揺らぎ」です。正解はないので、その日の気分で動かしてください。「⟳ 再生成」を押すと乱数の種が変わり、フレーズの流れが切り替わります。

右上の「時間連動」をオンにすると、現在の時刻に合わせて明るさと密度が自動で変化しつづけます。朝は澄んだ音、昼は賑やかに、夜は深く静かに。一日中流しっぱなしにする使い方のためのモードです。「録音」ボタンでは、流れている音をそのまま音声ファイルとして保存できます。「スリープ防止」は再生中に画面が自動で消灯しないようにする機能で、初期状態でオンになっています(スマートフォンの多くは画面が消えると音も止まるためです)。

iPhoneでご利用の場合、本体側面のサイレントスイッチがオンだと音が出ません。音が聞こえないときは、まずスイッチをご確認ください。

SCENES

こんな場面で

集中したいとき。歌詞のある音楽は言語野を刺激しますが、輪音の音には言葉も、覚えてしまうメロディの反復もありません。「街」や「水」を小さめの音量で流すと、思考を邪魔しない背景になります。

眠りにつくまえに。「命」の心拍や「地」の低いドローンは、密度を下げ、揺らぎを上げると、ゆっくりと沈んでいくような音になります。タイマーはありませんので、端末側のタイマー機能と組み合わせてご利用ください。

空間の演出に。展示やイベント、店舗などで持続的な環境音が必要なとき、ループ音源と違って継ぎ目がなく、何時間でも繰り返しを感じさせない音を流しつづけられます。会場の雰囲気に合わせてテーマとスライダーを設定するだけです。

FAQ

よくある質問

音が出ません

最初に画面中央の再生ボタンをタップしているかご確認ください(自動再生はブラウザの仕様で制限されています)。iPhoneの場合は本体側面のサイレントスイッチがオンになっていると音が出ません。それでも解決しない場合は、別のブラウザでお試しください。

同じ音をもう一度聴くことはできますか?

基本的にはできません。音は確率的なアルゴリズムでその場で生成されており、同じ音の並びが偶然再現される可能性は事実上ゼロです。気に入った時間があれば「録音」ボタンで音声ファイルとして保存しておくことをおすすめします。

通信量はかかりますか?

音源ファイルのダウンロードやストリーミングは行っておらず、すべての音はお使いの端末の中で計算されています。そのため再生中に音声データの通信が発生することはなく、一度ページを読み込んだあとはオフラインでも音は鳴りつづけます。なお、サイト改善のためのアクセス解析(Google アナリティクス)による軽量な通信・Cookie は利用しています。

録音した音声は商用利用できますか?

本ツールの音はサンプル音源や既存楽曲を一切使用せず、すべてその場でアルゴリズムにより合成されているため、第三者の音源に由来する権利は含まれていません。生成・録音した音声は、個人利用・商用利用を問わず自由にお使いいただけます(クレジット表記は任意です)。ただし、生成音声そのものについて独占的な権利を主張したり、第三者の利用を妨げる形で権利管理サービス等に登録したりすることはお控えください。また、生成物の利用により生じた結果について提供者は保証・責任を負いません。詳細は下記の免責事項をご確認ください。

動作環境は?

Web Audio APIに対応したモダンブラウザ(Safari、Chrome、Edge、Firefoxなど)で動作します。スマートフォン、タブレット、PCのいずれでもご利用いただけます。アプリのインストールは不要です。

ここに掲載していないご質問や、ご利用条件の詳細については、ご利用規約をご確認ください。

2025年の大阪・関西万博には、何度も足を運びました。会場でいちばん心に残ったのは大屋根リング、そしてもうひとつがサウンドスケープです。会場のどこにいても鳴っているのに、決して邪魔にならない。意識を向ければ確かにそこにあり、いつまでも聴いていられる不思議な音でした。

あの音響のクオリティに遠く及ばないことは、よく分かっています。それでも「静かにずっと聴いていられる音」と「心が落ち着く演出」を自分なりに持ち帰りたくて、このツールを作りました。画面の中央で呼吸しつづける環は、あのリングへのささやかなオマージュでもあります。

トミナガハルキ(開発者)