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レトロな要素がデザインに活かされている3つの事例

数年前から続いていた「昭和レトロ」からトレンドは「平成レトロ」に移りつつあるといわれています。英語圏で「retro」という単語がいわゆる「レトロ」の意味で使われ始めたのは70年代からだそうです。

懐古趣味的な要素を持つデザインは、海外でも「retro style(レトロスタイル)」としてファッションや音楽のひとつのスタイルとして受け入れられています。過去の事物に影響を受けていることから「vintage inspired(ヴィンテージ・インスパイアード)」という言い方もされているようです。

 

自家製クラフトソーダの温かみのあるカートンボックスデザイン

英国のDalston’s Sodaは2012年創業のクラフトソーダ製造所です。本物の果物から精製したジュースを使ったオリジナルの炭酸ソフトドリンクを販売しています。コーラ、ジンジャービール、レモネード、チェリーエード、オレンジエード、エルダーフラワーなどさまざまなフレーバーを提供。人工甘味料は使わず、低カロリーで、ビーガンにもやさしいことをうたっています。キャッチフレーズは「Soda with soul(魂をこめたソーダ)」です。

ダルストンは、イースト・ロンドン地区にあるアートや音楽の盛んなエリアです。エリア内のあるナイトクラブでDalston’s Sodaは生まれました。素材と味にこだわっているだけではなく、地球環境にも配慮しています。

リサイクル率の高さなどから容器にはアルミ缶だけを採用しました。PETボトル不使用に加えて、シュリンクラップも使わないという脱プラスチックの徹底ぶりです。

自家製クラフトソーダのパッケージデザイン

新型コロナウイルスの影響で「ステイ・ホーム」を余儀なくされているネット購買者に向けて新しく作成したカートンボックスは、ノスタルジックな再生装置を模した愛らしいデザインです。手書き風のイラストで描かれたターンテーブル付きのステレオ装置とラジカセのバージョンがあります。同封のミニパンフレットはカセットテープ仕立てです。

このカートンボックスのデザインは、Dalston’s Sodaのこれまでのブランドの「声」と一貫していて、脱プラスチックの姿勢などとともにブランドイメージの強化に貢献しています。また、音楽との結びつきが強いルーツを持つこととコミュニティーを重視していることを印象づけます。

自家製クラフトソーダのパッケージデザイン2

ダウンロードやサブスクリプションで音楽が配信されている現在、音楽を可視化するものは、楽器を別にするとレトロなオーディオ機器しか選択肢がないのかもしれません。しかし、Dalston’s Sodaのカートンデザインのモチーフはレトロですが、コンセプトはきわめて今日的なものといえるでしょう。

 

映画を題材にした古書の表紙のようなデザイン制作例

古書の表紙のようなデザイン2

クリエイティブ専門サイト『Inspiration Grid』が5月5日の記事でイラストレーターMatt Stevens氏の作品を紹介しています。映画の名作を題材にして、古い書籍のような表紙デザインを試みるという習作シリーズです。ざっと見ていくとすべて実在したかのような仕上がりなのですが、言ってみればすべて「フェイク」なのです。

古書の表紙のようなデザイン2

たとえば「Mad Max: Fury Road」は、ミルトン・グレーザー(Milton Glaser)のボブ・ディランのポスターを彷彿とさせるイラストが描かれています。タイトルに使われている書体は、1960年代後半から70年代初頭のポップカルチャーを象徴する「Cooper Black」です。イラストとフォントの完璧なコンビネーションのおかげで60年代風の表紙デザインとなっています。しかし、邦題を『マッドマックス 怒りのデス・ロード』というこの作品が実際に公開されたのは2015年でした。

古書の表紙のようなデザイン3

また、映画『Whiplash』は『セッション』という邦題で2014年に公開され、ドラマー志望の教え子に対するスパルタ式指導が話題になりました。それを題材にした表紙は、色使いとベタ塗り、版ずれの再現などによってはるか昔に原作小説があったかのように錯覚させてくれます。

Matt Stevens氏は米国ノース・カロライナ州のデザイナー・イラストレーターです。Esquire(エスクァイヤ)誌、ESPN誌、Wired誌、Facebook、Googleなど多くのクライアントにブランド・アイデンティティやグラフィックデザイン、イラストレーションを提供しています。

 

音楽フェスのイベント・アイデンティティ制作事例

音楽フェスのイベント・アイデンティティ

クリエイティブ向けのオンラインマガジン『Mindsparkle Mag』は5月5日の記事で音楽フェスティバル「Africolor」のアイデンティティデザインを紹介しています。1989年から始まったAfricolorは、パリ郊外で開催されるアフリカとカリブ海の音楽フェスティバルです。

30周年を迎えた2019年のアイデンティティ・デザインはGod Save the Screenというクリエイティブスタジオが手がけました。アフリカを象徴する色の組み合わせのひとつ、赤・緑・黒とタイポグラフィで構成されたビジュアルは、「resonance(共鳴・共振)」を視覚化しています。

「Africolor à 30 ans(Africolor30周年)」の文字をズラしながら重ねてアフリカンビートを感じさせてくれます。その上に浮き上がる「musiques(音楽)」「creations(創造)」「rencontres(出会い)」という言葉は音楽に合わせて漂っているようです。

テキストを曲線に沿わせるという加工は、パソコンとDTPが普及し始めた90年代に盛んにおこなわれていました。Africolorの表現にノスタルジーを感じるとすれば、それは世代の違いを意味するでしょうか。

音楽フェスのイベント・アイデンティティ

また、特徴的な小文字の「a」や細いバーで表現した「i」のドットなど、きわめて個性的な「Trash」という書体も大きな役割を果たしています。この書体はスペインのデザイナーEstela Ibarz氏が2018年にリリースしました。1920年代のアール・デコやバウハウスのようでもあり、1960年代のグラフィックデザインの香りもする不思議な文字です。

「楽しみながらおこなった実験の結果がTrashだ」とEstela氏は言っています。書体デザインでやってはいけないことをあえておこない、コントラストと読みやすさを限界まで攻めたのだそうです。もしかすると、このチャレンジ精神が過去のデザイン的エポックと共通しているために、どこかレトロな感覚をいだかせるのかもしれません。

 

【参考】
Dalston’s Soda – delivery boxes on Packaging of the World – Creative Package Design Gallery – https://www.packagingoftheworld.com/2020/04/dalstons-soda-delivery-boxes.html
Good Movies As Old Books by Matt Stevens | Daily design inspiration for creatives | Inspiration Grid – https://theinspirationgrid.com/good-movies-as-old-books-by-matt-stevens/
Africolor – Mindsparkle Mag – https://mindsparklemag.com/design/africolor/

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