Skip links

2025年2月のAI関連ニュースまとめ

2025年2月、人工知能(AI)分野では世界各地で重要な発表や出来事が相次ぎました。新たなAIモデルの登場や大企業同士の提携、政策・規制の動きなど、産業の垣根を越えて多彩なニュースが報じられています。ここではグローバルな視点から、2月に話題となった主要なAI関連トピックをわかりやすく振り返ります。

 

OpenAI、GPT-4.5を研究プレビューとして公開

OpenAIは2月末、自社として最新かつ最大規模の対話型AIモデル「GPT-4.5」を発表しました。GPT-4.5は大規模な事前学習のスケール拡大によりパターン認識や創造的な応答能力が向上し、これまでより「ハルシネーション」(誤情報の生成)を抑制できるよう改良されています。現在、ChatGPTの有料版ユーザーや開発者向けに研究プレビュー版が提供されており、OpenAIはこのモデルの長所と限界を検証しつつ活用方法の拡大を図る考えです

出典:OpenAI公式ブログ – Introducing GPT-4.5 | OpenAI

 

イーロン・マスク、OpenAI買収に970億ドルの提案

テスラCEOのイーロン・マスク氏率いる投資グループが、ChatGPT開発元のOpenAIを事実上支配する非営利団体の買収を提案したことが明らかになりました。提案額は約970億4千万ドル(約13兆円)という巨額で、OpenAIを営利企業化しようとする現経営陣に対抗する動きとされています。

これに対し、OpenAIのサム・アルトマンCEOはSNS上で「お断りする。しかしご希望なら我々がTwitterを97億4千万ドルで買収しよう」と冗談交じりに返答し、買収提案を一蹴しました。マスク氏は2015年にOpenAIを共同設立しながら途中で離脱しており、自身の創業した新AI企業xAIを通じて再びOpenAIへの影響力行使を図った形です。

出典:Reuters – Elon Musk-led group makes $97 billion bid for control of OpenAI | Reuters

 

Anthropic、ハイブリッド推論型モデル「Claude 3.7」を発表

米スタートアップAnthropicは2月24日、最先端の大規模言語モデル「Claude 3.7 Sonnet」をリリースしました。このモデルはハイブリッド推論手法を採用しており、複数の推論アプローチを組み合わせて高度な問題解決を行える点が特徴です。従来モデルより高速な応答生成か、あるいは応答前に一段階深く「自己内省」して高難度の質問に挑むかをモード選択でき、数学やプログラミングなどで高い性能を発揮します。Claude 3.7はAnthropicの無料プランを含むすべての利用者に提供され、価格設定も据え置かれました。AmazonやGoogleから出資を受けるAnthropicは、この新モデルでOpenAIなど競合他社に対抗する姿勢を鮮明にしています。

出典:Reuters –  Anthropic launches advanced AI hybrid reasoning model | Reuters

 

Google、Gemini 2.0モデルと新AIツール群を一般公開

Googleは2月、自社の次世代AIモデル「Gemini 2.0」をあらゆるユーザーが利用できる形で公開しました。Gemini 2.0はマルチモーダル対応の大規模言語モデル群で、従来より高度な「エージェンティックAI」(AI自身が段階的にタスクを実行する能力)や推論力を備えています。加えてGoogleは同月中に様々なAI搭載サービスを発表しました。

自身のスキルや経歴に基づきキャリアの可能性を提案してくれる職業探索ツール「Career Dreamer」の実験提供、開発者向けの無料AIコーディングアシスタントの公開、テキストから映像背景を生成できる動画モデル「Veo 2」のYouTube Shortsへの導入などです。さらにモバイルアプリ版Geminiには調査レポートを自動生成する「Deep Research」機能が追加され、研究者向けには創薬などで新仮説を提案するAI「共同研究者(AI Co-scientist)」も発表されました。

これら一連の発表は、検索からビジネス支援、クリエイティブ領域までGoogleがAI活用を幅広く拡大していることを示しています。

出典:Google Keywordブログ –  Google AI announcements from February

 

OpenAIとソフトバンク、日本企業向けAI合弁会社を設立

2月3日、OpenAIとソフトバンクグループは日本市場向けの合弁会社「SB OpenAI Japan」を設立すると発表しました。この新会社は、日本企業のニーズに特化したAIモデル群「クリスタル・インテリジェンス(Cristal Intelligence)」を開発し、優先的に提供する計画です。また、OpenAIの対話型エージェント「Operator」のように自動で業務をこなすエージェント型AIソリューションの創出にも取り組み、日本企業の業務効率化を支援するとしています。

ソフトバンクは今後毎年30億ドル規模を投じてOpenAIの技術を自社グループ各社(半導体大手Armを含む)へ導入し、100万件以上の業務を自動化して新たなビジネス機会創出を目指すと述べています。両社トップは「この提携によって日本から世界に先駆けAI革命を加速する」とコメントしており、日本企業へのAI実装が一段と進む転機となりそうです。

出典:Capacity Media – OpenAI, SoftBank launch joint venture to bring AI agents to Japan | Capacity Media

 

Apple、中国でのAI機能強化に向けAlibabaと提携

米Appleは中国市場向けのiPhoneにAI機能を提供するため、中国IT大手のAlibaba(アリババ)と提携することが明らかになりました。Alibabaグループの蔡崇信(ジョー・ツァイ)会長が2月中旬に提携を認めており、これは中国の競争激しいAI市場におけるAlibaba側の大きな勝利とみられます。Appleにとっても、中国で低迷するスマートフォン販売の挽回につながる動きです。

報道によれば、Appleは当初BaiduやByteDance、Tencentなど複数の中国企業と交渉していましたが、最終的にAlibabaのAI技術を採用する道を選んだとのことです。AppleのiPhoneは中国国外では独自開発のAI機能とOpenAIのChatGPTを組み合わせているとされますが、中国国内では規制順守のためAlibabaとの協業でAIサービスを提供していく考えです。

出典:Reuters  – Alibaba to partner with Apple on AI features, sending shares to 3-year high | Reuters

 

欧州連合、AI法案で感情認識AIの禁止など規制案を策定

AIと倫理

欧州連合(EU)は世界初の包括的なAI規制枠組みとなる「AI法(Artificial Intelligence Act)」の成立に向けて動いています。2月にはその一環として、人間の表情や声から感情を推定・監視するようなAI技術を禁止する方針が打ち出されました。企業が従業員の感情をウェブカメラや音声で監視するような手法は欧州では許されなくなる見通しです。また、2025年8月からはウェブサイト上でユーザーに不当に高額な支出を促すようなAIを使ったダークパターン(巧妙な誘導手法)も禁止されます。

このAI法はAIによる差別・ハラスメント・操作から人々を守ることを目的としており、違法な用途や高リスク用途の制限など幅広いガイドラインを含んでいます。EUは技術の恩恵を享受しつつ安全性と人権を守るため、他地域に先駆け厳格なAI規制整備を進めている状況です。

出典:The Independent – Europe bans emotion-tracking artificial intelligence under landmark AI rules | The Independent

 

パリAIサミットで米英がグローバルAI宣言への署名を拒否

2月上旬、フランス・パリで各国首脳が集まりAIの国際的な指針を討議する「AIアクション・サミット」が開催されました。この場で「包摂的で持続可能なAIの推進」に関するグローバル宣言案が提唱され、欧州連合や中国、インドなど70以上の国際機関・政府が賛同署名しました。

しかし、アメリカ合衆国とイギリスは最終声明への署名を見送り、国際的なAIガバナンスへの足並みの乱れが露呈しています。報道によれば、米英側は「包括的かつ持続可能なAI」といった文言に慎重姿勢を示し、各国共通の規制より自国の主導する戦略を優先したい考えが背景にあったといいます。特に米国トランプ政権の関係者は過度な規制につながる表現へ懸念を示していたとのことです。英国政府報道官も「AIにおいて常に国益を第一に考える」とコメントしており、AI倫理の国際標準づくりの難しさが浮き彫りとなりました。

出典:POLITICO – UK, US snub Paris AI summit statement  – POLITICO

 

日本、初のAI推進法案を国会に提出

日本国内では2月28日、政府が日本初のAIに特化した法律案を国会に提出しました。正式名称は「人工知能技術研究開発・活用推進法案」(いわゆるAI推進法案)で、AI開発と利活用の適正な促進を図り、国民生活の向上と経済成長の両立を目指す内容です。

この法案には、国としてAI研究開発を支援する体制整備や、AIの社会実装における倫理・信頼性確保の枠組みづくりなどが盛り込まれる見通しです。与党は政府と一体となって早期成立を目指すとされており、日本が「AI分野で世界のモデルとなる国」を掲げて先進的な国家戦略を推進する一歩となりました。

出典:自由民主党ニュースリリース – AI分野で世界のモデルとなる国へ初のAI法案を通常国会に提出 | お知らせ | ニュース | 自由民主党

 

金融業界で進むAI活用:米大手銀行と英規制当局の動き

2月は金融分野でもAI活用に関する重要な動きがありました。米大手銀行BNYメロン(ニューヨーク・メロン銀行)はOpenAIとの複数年にわたる新たな提携を結び、社内の独自AIプラットフォーム「Eliza」の高度化を進めると発表しました。Elizaは社内業務を効率化するため2024年8月に導入されたAIシステムで、既に従業員の半数以上が日常的に利用しています。

今回の提携により、OpenAIの高度な推論モデルやChatGPT Enterprise版を組み込み、社内ソリューションをさらに強化する計画です。一方イギリスでは、金融サービスにおけるAI活用について議会の財務委員会が調査を開始しました。銀行や年金などへのAI影響、消費者保護や雇用への波及、国際競争力の比較など幅広い論点で専門家や市民からの意見募集が行われま。回答期限は3月中旬で、今後の報告書を通じて金融分野におけるAI利活用の課題と指針が示される見込みです。

出典:FinTech Futures – February 2025: Top five AI stories of the month – FinTech Futures: Fintech news

 

エンタメ業界へのAI浸透:SpotifyがAIオーディオブック拡大

エンターテインメントの分野でもAI活用の広がりが見られました。音楽ストリーミング大手Spotifyは、音声合成企業ElevenLabsと提携しAIによるオーディオブック(朗読書)サービスを大幅に拡充すると発表しました。Spotifyはこれまで一部パートナー向けにAIナレーション機能を提供してきましたが、今回の提携で29言語に対応したAI音声による朗読コンテンツを一般の出版社や作家にも展開できるようになります。大量の音声生成には有料契約が必要になるものの、AI朗読により小規模な出版社やインディー作家でも低コストでオーディオブックを提供できるメリットがあります。

また、SpotifyはAIナレーションであることを明示的に表示するなど透明性にも配慮するとしています 。ただし、AI音声の品質や人間のナレーターと比べた「味」の違いについては依然議論があり、AIによるコンテンツ制作拡大に伴う文化面での影響についても関心が高まっています。

出典: The Verge – Artificial Intelligence – AI Update, February 21, 2025: AI News and Views From the Past Week

 

中国発スタートアップ「DeepSeek」、オープンソースAI戦略で存在感

中国の新興AI企業DeepSeek(ディープシーク)が、独自AIモデルのオープンソース化戦略によって国際的な注目を集めています。2月21日、同社は自社のAIモデルのコードの一部を公開し、開発者コミュニティへの開放を進めると発表しました。DeepSeekは先月、推論能力の高い対話型モデル「R1」をオープンソースで公開し、西側の最先端モデルに匹敵する性能をわずかな開発費で実現して業界を驚かせた経緯があります。

商業化よりも技術共有による影響力を重視する方針を掲げる同社は、中国国内で急速にユーザー数を伸ばしており、1月時点で日間アクティブユーザー数2,220万と中国最大のチャットボットサービスに躍り出ました。DeepSeekの台頭は、中国におけるAI企業の新たなモデルとして、オープンソースを通じた技術革新とソフトパワーの発揮が注目されていることを示しています。

出典:Reuters – DeepSeek to share some AI model code, doubling down on open source | Reuters

 

まとめ

2025年2月はAIの進展が社会、経済、政策、文化など広範囲に及ぶ影響を再確認する月となりました。技術革新だけでなく、それがもたらす社会的な変化や規制の動向、企業間の競争など、多面的な視点でAIの動きを注視する必要があることを示しています。AIが今後どのように私たちの生活を変えていくのか、引き続き目が離せない状況が続くでしょう。

 


最後までお読みいただきありがとうございます。共感する点・面白いと感じる点等がありましたら、【いいね!】【シェア】いただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介は大歓迎です!(掲載情報や画像等のコンテンツは、当サイトまたは画像制作者等の第三者が権利を所有しています。転載はご遠慮ください。)