コンピューターによるグラフィックの製作が一般的になってきたことで、かつては多重露光やガラス、セロファンなど特殊な方法や素材以外では難しかった「重なり」の表現がより簡単に再現できるようになりました。レイヤーを使い、透明度を調整したり乗算やオーバーレイなどで魅力的な絵面を作成できるようになったのです。複数のグラフィックを重ねてできるイメージは複合的な情報で新たな意味を付加します。重なりが美しいグラフィックデザインをまとめてみました。

重なりから導かれる比較の意味

展覧会のヴィジュアル

丸く可愛らしい植物がメインの展覧会のヴィジュアル。緑色の部分だけ、上から透かし刷りされたかのような風合いがあります。よくよくみて見ると、緑で表現された植物と、カラーで印刷された植物は違う写真のようです。間違い写真のように比べて見ると、緑の写真の奥に見える二本が、カラーで印刷された方には存在しません。過去と現在の比喩でしょうか?見ている側に考えるきっかけを与える、不思議なデザインです。

 

海辺と鳥の合算イメージがもたらすもの

Adobeさん(@adobe)がシェアした投稿

海辺の人々を写した風景写真に、小鳥の羽ばたきのイメージが重ねられた画像。カメラの多重露光のような光を感じます。俯瞰する背景と上昇する鳥のイメージが合わさり、鳥の視点で自由に空中を散歩する雄大で清々しい印象が伝わってきます。どちらかの写真だけでは得られない躍動感やスケール感が伝わってきますね。それぞれの写真の印象を合算してより複雑なイメージを抱かせるコラージュ的な作品です。

 

オーバープリントに感じるアナログ感

ポスターから感じる透明感

こちらのポスターから感じる透明感は、どのような技法によるものでしょうか。一つは点描による混色です。点描による混色は印刷の網点や、印象派の点描でも見ることができます。こちらの作品で興味深いのは、手で書いたようなアナログな並びの点描と、印刷に使うような規則正しい工業的な網点を組み合わせたところ。複雑な色面の重なりが作り出すモアレに似たテクスチャーに楽しさを感じます。下半分に目を移すと、透明水彩を塗り重ねたときのような混色の美しさに目が行きます。かと思うとフォントの黒も含め、工業的なプロセスカラー印刷でオーバープリントしたようにも見えます。アナログらしさ、工業らしさの間で手仕事や質感への意識が見えてくるデザインです。

 

こういった作品を見ていると、デジタルで様々な重ねの表現が可能になった現代でも、印刷におけるインクの重なりや、フィルムへの多重露光、透明の水彩やアクリル絵の具による「物質的な」表現もなくなったわけではないことを感じます。何をどのように重ね合わせるか、どのような風合いやメッセージを伝えるか、道具の扱いが簡単になった分、コンセプトがしっかり打ち出されたデザインの魅力が際立ちます。

 

「デザインインスピレーション」のコーナーでは、日々のインスピレーションに繋がる広告デザインやアートワークを紹介しています。