日本でも人気の高い熱帯魚「ベタ」をご存知でしょうか。タイを原産国とする種で、その美しい色と、優雅に揺れるエレガントなフォルムは多くの人を魅了し、世界各地で観賞魚として飼育されています。

ベタ

また、ベタはその美しさだけでなく、一風変わった生態をもっていることで、別の用途としてもタイで飼育されてきた歴史があります。その変わった生態というのは、この優美さからは想像もできない、激しい気性。とくに雄は気性が荒く、2匹を同じ水槽で飼うこともままならないほどです。そうした性質を利用し、タイでは昔からベタを闘魚として飼育し、娯楽の一つとして2匹の魚を闘わせる遊戯が根付いていました。しかし、時代が流れると共にそうした伝統は薄れ、タイ国内では若い世代を中心にベタに関心をもつ人は徐々に少なくなってきたと言います。

そんな状況を反映してか、タイにある世界で唯一のベタに関する学習施設、「Siamese Fighting Fish Gallery」は経営難に陥り、続行していくのが難しいというところまで追いつめられていました。その状況を打破するため、今回ご紹介するプロジェクト「ART OF THE SIAMESE FIGHTING FISH」は立ち上げられました。

スポンサーは、ベタの飼育用エサを製造する会社「Optimum Betta」とロイヤリティフリーの画像や動画をダウンロード提供する企業「Shutterstock」。この2社による共同作業により、息を呑むほどに美しい、ベタの画像と映像が作られました。

 

「Optimum Betta 」はベタの飼育や管理を担当、「Shutterstock」は画像や動画の作成を担当しこのプロジェクトを進めていきました。とくに、画像加工の技術は目を見張るものがあり、ベタの動きをシームレスに繋ぎ、軌跡をなぞっていくことで、今までに見たことのないしなやかさと幻想的な美しさを、ベタを使ったアートとして完成させています。

アートになった闘魚 アートになった闘魚2

同じ模様や色かたちが一つとないベタは、その個体差そのものがアートと言ってもいいほど一匹一匹の個性が異なる美しさを放っています。そのベタの動きに合わせて制作された画像や動画は、フラメンコを踊る女性の姿を思わすような激しい情熱と妖しい魅力を持つものや、中国の空に舞う龍に似た荘厳な雰囲気を感じさせるもの、空にたゆたう天女の羽衣をイメージさせるものなど、想像力を掻き立てるビジュアル作品ばかりです。画像や動画の編集技術を駆使して作られた作品たちは、ベタの新たな魅力を発見し、見事なまでに人の心を捉える圧倒的な世界観でベタの存在を再認識させます。

 

こうして制作された作品は、Shutterstockでダウンロードコンテンツとして販売され、その収益は「Siamese Fighting Fish Gallery」 の運営費として寄付されたそうです。

生き物の動きはコンピューターとは違い、予測が難しく複雑で大胆なもの。そうした生きた動きを作品づくりに取り入れることで、既知を遥かに超える、よりダイナミックなアートが生まれます。今回ご紹介した、「ART OF THE SIAMESE FIGHTING FISH」も、既成概念を超える方法でアプローチした結果、誰も見たことがなかった未知の景色を私たちの眼前に露わにしました。アートには決まったかたちなどなく、正解も不正解もありません。だからこそ、新たなアイデアを取り入れ試行錯誤する価値があるというものです。そうした自由な挑戦を続けていくことで、また新たなアートに出会えるのではないでしょうか。日々のクリエィティブワークの中でも挑戦する気持ちを忘れず、新たな作品づくりに貪欲でいたいものですね。

design : Shutterstock / Optimum Betta

 

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