時代の先端をいく表現を追求するのも面白いですが、古いグラフィックアイデアを現代によみがえらせるのも刺激的です。10年、20年、そして半世紀前のデザインを見ると、ノスタルジーを通り越して新鮮に見えるものです。今回は、クオリティの高い作品からレトロなテイストのエッセンスを探ってみましょう。

 

網点の大きな写真をフィーチャーしたポスター制作例

レトロなポスター制作例

米国にあるメキシコ美術館のための設立20周年記念ポスターです。メキシコ美術館は、コロンブスの新大陸発見以前から現代までのメキシコの文化・芸術を展示しています。印刷の網点を大きくして特別の意味を持たせるのは、リキテンスタインの作品などでよく知られています。このポスターでは、メキシコの代表的な画家フリーダ・カーロのポートレート写真をメインビジュアルにしています。青に黄、黄に赤の水玉模様と呼応して独特の空気感が生まれています。また、様々な色と大きさで描かれた文字は、メキシカンアートの特徴に通じるものがあります。

 

モノクロの切り抜き写真をちりばめたグラフィック制作例

雑誌の表紙デザイン

1980年代から1990年代まで米国で発行されていた『Spy』(スパイ)という雑誌の表紙です。同誌はセレブや政治家の裏話を風刺的におもしろおかしく取り上げました。雑誌を手がけたグラフィックデザイナーによると、コンテンツがすばらしかったので、それを台無しにしないように心がけたとのこと。有名人の全身が写っているモノクロ写真を切り抜いてちりばめ、文章の行間も大きく空けてあります。また、特集記事の見出しをカラフルな色地に入れています。モノクロ切り抜き写真や行間の広さ、色使いなどは表紙だけでなく、誌面でも特徴的です。ふざけた印象を与えながらも品の良さが保たれています。

 

ベタ塗りによる版画のようなビジュアル表現例

版画のようなビジュアル表現

米国のもっとも北東にあるメイン州は、長い海岸線を持ち、60本以上の灯台が立っているそうです。米国でもっとも美しいと言われる灯台などを見ながらクルージングする観光ツアーもあります。このパンフレットは、船を所有するひとが自力でメイン州の灯台巡りをするためのガイドブックです。浅葱色、深紅色、黒の3色をベタ塗りしたビジュアルは、切り絵のような印象を与えます。灯台のあかりが印象的で際立ちます。あえて色ズレなどを再現すれば、版画やシルク印刷のような効果も得られたでしょう。デザインの専門誌が2016年に催したデザインコンテストの受賞作品です。

 

バブリーなダンスやその時代のファッションがいま新鮮に受け止められています。アナログ技術や考え方の影響が社会にまだ色濃く残るなか、デジタル時代が幕を開けたころの文化が若い世代の関心を引いています。この時代には、意欲的に、ときには乱暴とも言えるようなチャレンジがおこなわれました。この時代の作品からも多くのインスピレーションが得られるのではないでしょうか。

「デザインインスピレーション」のコーナーでは、日々のインスピレーションに繋がる広告デザインやアートワークを紹介しています。