Color Gamut Lab / Interactive Colorimetry

色域を、立体で理解する。
カラーモードの測色ラボ

モニターのRGBと印刷のCMYK。同じ「色」でも、扱える範囲はまったく違います。このツールは、CIE 1931 xy色度図の上に各カラースペースの色域を規格値・測色代表値に基づく計算で描画し、明度(Y)を含めた3次元の姿として比較できるインタラクティブな測色室です。

CIE 1931 xy色度図 xyY空間 3Dビュー 色域内外ジャッジ 登録不要・ブラウザ完結
GAMUT CHAMBER — CIE 1931 (2°) / D65
ドラッグで回転・ピンチ/ホイールで拡大縮小。図の上をタップすると、その位置の色度を計測します。立体の高さは輝度Y(色の明るさ)を表し、底面が黒、上端が白に対応します。
表示する色域 / Gamuts
表示設定 / View
Probe — 色域内外ジャッジ
#00A95F
タップして色を選択

選んだ色(sRGB値として解釈)が、各色域の内側に収まるかを計算します。3D画面上の白いマーカーが、その色の位置です。

Measured Data — 実測色の反映(任意)
CGATS形式(Japan Color特性化データ・ArgyllCMSの.ti3など)またはCSV(1行に L,a,b)に対応。読み込むと、CMYKの近似モデルが実測点から構築した立体に置き換わります。Lab値はD50測定として扱い、D65へ順応変換します。
Judgement — 判定結果

鮮やかなRGB色(発光するような緑・オレンジ・青など)がCMYKで「色域外」となるのは正常な判定です。グレーや中間調・くすんだ色は色域内に収まります。この差こそが、モニターと印刷の色域ギャップです。

Color Science

色域(カラーガモット)とは何か

色域(Gamut)とは、あるデバイスや方式が再現できる色の範囲のことです。上のビューアの土台になっている馬蹄形の図は「CIE 1931 xy色度図」と呼ばれ、人間の眼が知覚できるすべての色度(色み)を平面に写し取ったものです。外周の曲線は、単一波長の光(虹の色そのもの)が描く「スペクトル軌跡」で、下辺の直線は赤紫と青紫を結ぶ「純紫軌跡」。この馬蹄形の内側が、人間に見えるすべての色みの地図になります。

モニターや印刷機は、この地図の全域をカバーできるわけではありません。ディスプレイはR・G・Bの3原色の混合で色を作るため、色度図上では3つの原色を頂点とする三角形の内側しか表現できません。印刷は紙の白とインキの掛け合わせで色を作るため、範囲はさらに独特の多角形になります。印刷技術の解説でよく図解される「カラーフィルム>カラーモニター>オフセット印刷」という入れ子の関係も、この地図上での面積の違いとして描かれてきました。厳密には互いにはみ出す領域もあるため、あくまで大まかな傾向として捉えるのが安全です。

なぜ「立体」で見る必要があるのか

ここが本ツールの核心です。よく見かける色度図は2次元ですが、色域は本来、明度を含めた3次元の立体です。本ツールの3Dビューでは、水平方向がxy色度(色あい)、縦軸の高さが輝度Y(色の明るさ)を表し、底面が黒、上へ行くほど白に近づきます。たとえば印刷の鮮やかなイエローは明るい領域に、モニターの深いブルーは暗い領域に存在します。2次元の図で「面積が広いから優れている」と結論づけると、明度方向の得意・不得意を見落としてしまいます。3Dビューでは、各色域が「山」のような体積として立ち上がり、どの明るさ帯でどちらが有利かまで読み取れます。CMYKの立体がRGBの三角錐とは大きく異なる、丸みを帯びた塊のような姿をしていることも、回転させると直感的に分かるはずです。

※ 2D色度図モードに切り替えると、従来の教科書と同じ「上から見た地図」として比較できます。用途に応じて視点を往復してみてください。

Additive / Subtractive

加法混色と減法混色:RGBとCMYの成り立ち

カラーモードの違いは、突き詰めれば「光を足すのか、光を引くのか」という物理現象の違いです。下の2つのデモは装飾ではなく、ブラウザの合成モード(screen / multiply)でそれぞれの混色を実際に計算した結果です。

加法混色ADDITIVE — RGB

光そのものを重ねる方式。R+G=イエロー、G+B=シアン、B+R=マゼンタ、3色すべてを重ねると白になります。モニター、スマートフォン、プロジェクター、舞台照明はこの原理です。混ぜるほど明るくなるため「加法」と呼ばれます。

減法混色SUBTRACTIVE — CMY

白い光からインキが特定の波長を吸収して(引き算して)色を作る方式。C+M=ブルー、M+Y=レッド、Y+C=グリーン、3色を重ねると理論上は黒になります。実際のインキでは濁った暗色にしかならないため、印刷では黒インキ(K)を加えたCMYKが使われます。

※ ご覧のモニターも結局はRGBデバイスのため、減法混色のデモはあくまで「RGB上でのシミュレーション」です。実際のインキの重なりは、ぜひ印刷物のルーペ観察で確かめてみてください。

Complementary

RGBとCMYは補色の関係にある

印刷・デザインの教科書で必ず登場する対応関係です。色相環の上で正反対に位置する色どうしを補色と呼び、RGBの各色の補色がちょうどCMYの各色になっています。下の色相環のノードをタップして、対応関係を確かめてみてください。

R(赤)C(シアン)

白色光からR(赤)の成分を取り除くと、残るのはGとBの光、すなわちシアンです。だからシアンのインキは「赤を吸収するフィルター」として働きます。RGBとCMYは、同じ三原色を「足し算側」と「引き算側」から見た表裏の関係なのです。

この補色関係は実務にも直結します。写真の色かぶり補正で「青っぽい写真にイエローを足す」のは補色による打ち消しですし、RGB→CMYK変換の理論上の基礎式(C=1−R, M=1−G, Y=1−B)もこの関係から導かれます(実務の変換は、これにインキや紙の特性を織り込んだICCプロファイル演算で行われます)。配色設計で補色を向かい合わせるとコントラストが最大化するのも、同じ構造の応用です。

この補色ペアは減法混色の側でも同じように成立します。補色関係にある色材(インキ・絵の具)どうしを混ぜると、可視域の光をまんべんなく吸収し合い、暗い無彩色に近づきます。シアンのインキが「赤を吸収するフィルター」であるように、減法側では「その色が何を吸収するか」で補色を捉えると整理しやすくなります。

「赤の補色は緑」では? 美術の色相環との違い

絵の具の授業で「赤の反対は緑」と習った記憶がある方も多いはずです。これは誤りではなく、参照している体系が異なります。補色にはいくつかの定義があります。物理補色(測色学)は「混ぜると無彩色になる」関係で、光であれば赤の相手はシアン(青緑)。マンセル色相環でも赤(5R)の対面は青緑(5BG)に置かれており、本ページの色相環はこの体系です。心理補色(残像)は、赤をしばらく見つめたあとに現れる残像の色で、こちらも青緑系となり物理補色とおおむね一致します。一方、美術の伝統的色相環(RYB)は絵の具の三原色を赤・黄・青とみなす歴史的な体系で、イッテンの12色相環などでは赤の対面が緑になります。クリスマスの赤と緑のような配色の慣習は、この流れです。

つまり「赤↔緑」は配色文化の体系、「赤↔シアン」は色再現計算の体系。色かぶり補正やRGB→CMYK変換の理屈は後者で動き、配色のイメージ喚起には前者が今も広く使われています。どちらが正しいかではなく、文脈で使い分けるのが実務的です。

Color Spaces

主要カラースペース早見表

ビューアに描画している各色域の正確な原色座標(CIE xy)と、実務上の位置づけです。原色座標は各規格の公称値で、これがそのまま3D描画の計算に使われています。

sRGB白色点 D65
R0.640, 0.330G0.300, 0.600B0.150, 0.060

Web・一般モニターの世界標準。迷ったらまずこれ、と言える基準の色空間です。多くの入稿データやブラウザ表示は、sRGBを前提に作られています。

Adobe RGB (1998)白色点 D65
R0.640, 0.330G0.210, 0.710B0.150, 0.060

緑〜シアン側をsRGBから大きく拡張した色空間。印刷の色域を広くカバーできるため、フォトレタッチや印刷系ワークフローの定番として使われ続けています。

Display P3白色点 D65
R0.680, 0.320G0.265, 0.690B0.150, 0.060

映画規格DCI-P3の原色を、白色点だけD65に合わせた色空間。iPhoneをはじめ近年のスマートフォンやディスプレイの事実上の標準で、赤〜緑がsRGBより鮮やかに出ます。

Rec.2020白色点 D65
R0.708, 0.292G0.170, 0.797B0.131, 0.046

4K/8K放送・HDR時代のための超広色域規格。原色が単一波長光として定義されており、色度図上の三角形は人間の可視域ぎりぎりまで広がります。完全対応ディスプレイはまだ稀です。

CMYK(Japan Color 近似)紙白(D50系)
模型C・M・Y・R・G・B 6点+紙白・黒

日本の枚葉オフセット印刷の標準的な色再現域。RGBのような三角形ではなく、インキと紙の物性で決まる歪んだ立体になるのが特徴です。座標の詳細と近似の範囲は下記「計算方法と限界」をご覧ください。

※ カラーフィルムの色域は乳剤・現像条件・測定方法によって大きく変動し、単一の公称値が存在しないため、本ツールでは安易な描画を避けています(詳細は下記「このツールの計算方法と限界」)。広色域の参考としてはRec.2020をご利用ください。

In Practice

実務での色域:「画面の色が印刷で出ない」を防ぐ

色域外の色は「近い色」に置き換えられる

RGBデータをCMYKに変換すると、CMYK色域の外にある色は必ず色域内のどこかへマッピングされます。3Dビューでモニター系の三角錐とCMYKの結晶を重ねると分かるとおり、特に鮮やかなブルー、蛍光がかったグリーン、彩度の高いオレンジあたりは印刷側に対応する場所がなく、くすんで見えやすい領域です。画面上のプレビューと刷り上がりの差の多くは、この色域圧縮に由来します。

ワークフローで意識したいポイント

制作の入口では、最終出力に合わせた作業スペースを選ぶことが基本になります。Web納品ならsRGB、印刷前提ならAdobe RGBまたは最初からCMYKで設計する、という切り分けが出発点です。印刷案件では、Photoshopの「色の校正(CMYKプレビュー)」や色域外警告を早い段階から有効にしておくと、後工程での落差を減らせます。どうしても鮮やかさが必要な場合は、特色インキや広色域インキによる高彩度印刷(RGB入稿対応をうたうサービス)を検討する、あるいは色域内で成立する配色に設計段階から寄せておく、といった判断が現実的です。

また、同じCMYKでも用紙によって色域は変わります。コート紙は広く、上質紙やマット紙では特に暗部・高彩度側が狭まります。データ上の数値が同じでも、紙が変われば再現域が変わる。この感覚を持っておくと、色校正でのやり取りが格段にスムーズになります。

Accuracy & Honesty

このツールの計算方法と限界

「正確さ」を掲げる以上、どこまでが計算で、どこからが近似なのかを明示しておきます。

計測条件の開示

  • 色度図・スペクトル軌跡:馬蹄形の外周(スペクトル軌跡)は、CIE 1931 2°標準観測者の色度座標データ(380〜700nm・5nm刻み)をそのまま使用しており、形状は公式の色度図と一致します。
  • RGB系色域(sRGB / Adobe RGB / Display P3 / Rec.2020):各規格の公称原色座標と白色点(D65)から変換行列を都度計算し、RGB立方体の表面をxyY空間へ写像して立体を生成しています。これらは規格値に基づく正確な描画です。なお表示上の処理として、輝度Y < 0.02の極暗部は形状が一点に縮退して描画が乱れるため、底面キャップに集約しています(色域内外の判定計算には影響しません)。
  • CMYK(Japan Color 2001系):印刷の色域は測色データの集合であり、単純な数式では表せません。本ツールでは、Japan Color 2001 Coatedの代表的なベタLab値(D50)をD65へ順応変換した一次色・二次色6点と紙白・黒点の計8点を用い、網点混色が概ねXYZ空間で線形になる性質(一次Neugebauer近似)に基づいてXYZ空間での凸包(凸結合の全体)として構築した近似立体を描画・判定に使用しています。この近似はJapan Color 2001 CoatedのICCプロファイルと照合し、ランダムなsRGB色の内外判定で約95%の一致を確認済みです。傾向の理解には十分ですが、階調域や用紙差までは表現できません。
  • 実測データの反映:ICCプロファイル本体はLUT(変換テーブル)であり、色域境界の測定点そのものは含みません。そのため本ツールでは、プロファイル作成の元になる特性化データ(CGATS形式:ISO 12642チャートの測色値や.ti3など)またはCSVのLab値を読み込み、実測点から色域立体(放射状ハル)を構築する方式を採っています。読み込み後は、CMYKの3D表示と内外判定の両方が実測ベースへ切り替わります。Lab値はD50測定として扱い、Bradford変換でD65へ順応します。
  • 画面表示の限界:ご覧のディスプレイ自体に色域があるため、その外側の色はクリッピングした近似色で表示されます。「モニターでは再現できない色をモニターで見せる」ことは原理的に不可能であり、本ツールの色はすべて位置関係を理解するための参照表示です。
  • カラーフィルムを描画しない理由:フィルムの色域は銘柄・露光・現像で変動し、信頼できる単一の公称値がありません。不確かな形状を断定的に描くことは誤解のもとになるため、あえて収録していません。
FAQ

よくある質問

Q.RGBからCMYKに変換すると色がくすむのはなぜですか?
モニターのRGBは光を重ねる加法混色、印刷のCMYKはインキが光を吸収する減法混色で、再現できる色域がそもそも異なるためです。特に鮮やかなブルー・グリーン・オレンジはCMYK色域の外にあり、変換時に色域内の近い色へ置き換えられる(色域圧縮)ため、くすんで見えます。上の3DビューでsRGBとCMYKを重ねると、その差を立体で確認できます。
Q.結局、どのカラースペースで作業すればよいですか?
納品先が答えです。Webやアプリ、SNS用の制作物はsRGBで完結させるのが最も事故が少ない選択です。オフセット印刷前提であれば、Adobe RGBで撮影・編集し最終段でCMYK変換するか、最初からCMYKで組み立てます。広色域ディスプレイ向けコンテンツ(動画・アプリUIなど)ではDisplay P3が選択肢に入ります。
Q.色度図の「面積が広い=高画質」ですか?
必ずしもそうではありません。色域はあくまで「再現できる範囲」であり、階調の滑らかさ、輝度、精度(キャリブレーション)とは別の指標です。また2D面積の比較は明度方向の情報を落としています。実際、印刷のシアンのベタはsRGBの三角形の外側にはみ出しており(2D色度図モードでsRGBとCMYKを重ねると確認できます)、イエロー付近の明るい領域でもCMYKは意外に健闘します。「広い・狭い」は場所ごとに逆転し得る、と捉えるのが正確です。
Q.2D色度図モードの三角形と教科書の図が少し違って見えます。
教科書やメーカー資料の図は、u'v'色度図(CIE 1976)を使っていたり、図をデフォルメしていたりすることがあります。本ツールはCIE 1931 xy色度図での描画です。座標系が違えば同じ色域でも形と面積比は変わります。図を比較するときは、まず座標系の確認を習慣にすると安全です。
Q.暗い色なのにCMYKで「色域外」と判定されるのはなぜですか?
印刷で出せないのは「暗さ」そのものではなく、「その暗さのまま色みを保つこと」である場合がほとんどです。印刷で色を暗くする手段はインキを足すことしかなく、インキを足すと明度と一緒に彩度も失われていきます。4色ベタに近い掛け合わせなら印刷はかなり深い黒まで沈められるため、暗いグレーや色みの控えめな暗色は色域内に収まります。一方、暗いのに黄みや赤みがはっきり残った色(濃いこげ茶など)は、その明度で保持できる彩度の上限を超えた時点で色域外になります。3Dビューで立体の底が黒点に向かってすぼまっているのが、まさにこの制約です。なお、この種の色域外は境界ぎりぎりのことが多く、実際の変換ではわずかに明るく・浅い色に置き換わる程度の差で済むことも珍しくありません。
Q.プローブ判定で「CMYK内」と出れば、印刷でその色がそのまま出ますか?
保証まではできません。本ツールのCMYK判定は近似モデル上の目安であり、実際の再現は用紙・インキ・印刷条件・ICCプロファイルに依存します。「明らかに危険な色を早期に発見する」ためのスクリーニングとして使い、最終確認は本機校正または色校正紙で行うことを推奨します。
Disclaimer

免責事項

本ツール「色域スコープ GAMUT SCOPE」は、色域とカラーモードの理解を助けるための教育・制作支援目的のリファレンスであり、色彩の測定・検査・証明を行うものではありません。ご利用にあたっては、以下の点にご同意いただいたものとみなします。

・表示および判定は、規格の公称値と代表的な測色値に基づく計算(一部は近似モデル)によるものです。計算方法と近似の範囲は上記「このツールの計算方法と限界」に明示していますが、結果の正確性・完全性を保証するものではありません。

・色域内外の判定はスクリーニング用途の目安です。実際の印刷・表示における色再現は、用紙・インキ・印刷条件・デバイス・ICCプロファイル・観察環境などに依存します。入稿・発注・製造等の最終判断は、必ず本機校正・色校正紙・実機確認など正規の検証手段に基づいて行ってください。

・画面上の色は、ご覧のディスプレイの色域・調整状態に依存します。ディスプレイの色域外にある色はクリッピングした近似色で表示されます。

・読み込まれた測色データ(CGATS / CSV)はブラウザ内でのみ処理され、外部への送信は行いません。データの内容・測定条件の正確性については、ご利用者の責任においてご確認ください。

・本ツールの利用または利用不能、および表示・判定結果に依拠したことにより生じたいかなる損害についても、運営者は責任を負いかねます。

・Japan Color は一般社団法人日本印刷産業機械工業会等による標準印刷色の名称です。Adobe RGB はAdobe Inc.、Display P3 はApple Inc. の規格・商標であり、記載の規格名・製品名は各権利者に帰属します。本ツールは各団体・各社とは無関係の独立したコンテンツです。

・本ツールの仕様・計算方法・掲載内容は、精度改善のため予告なく変更する場合があります。